1.薬草採取

 僕たちは初依頼、薬草採取のため森に来ていた。


「どうだ? 薬草あった?」

「ぜんぜんな~い。 てか草多すぎてどれかわかんない」

「これとか薬草ではないですか」

「さすが聖女~!」


 薬草自体は見つけることが出来ていたが、時間のわりには全然集まっていない。


「みんな、そろそろ休憩にしようか」

「賛成~! お腹空いた~」


 僕たちは一旦休憩をとることにした。みんなお腹が空いてるみたいだったので、僕は自ら提案をした。


「あの、僕が料理作ってもいいですか?」

「シュン 君、料理出来るのかい?」

「え、ええ まあ少しくらいなら……」


 僕は家に一人でいることが多かったので、それなりに自炊していた。まさかこんなところで役に立つなんて。


「他に料理したい人いる? ちなみに俺は出来ない」

「私もできな~い」

「シュンさんに任せてもいいですか?」

「も、もちろん!」

「では頼んだ シュン」


 何を作ろう、色々買ったからなあ……僕はマジックバッグを調べる。すぐ作れてお腹にたまるほうがいいよな……よし、あれを作ろう!

 

「マイカさんすみません、火つけてもらってもいいですか」

「おっけ~」

「ありがとうございます」

 

 この世界には火がつく魔法のコンロというものがあるんだけど、高くて手が出せなかった。


 玉ねぎをスライスして、フライパンにバターを――。


「皆さんお待たせしました」

「オニオングラタンスープです。 熱いので気を付けてお召し上がりください」

「おお! シュン、凄いな!」

「私も手伝ったけどね! 美味しそう!」

「素晴らしい……それでは」


「いただきます」


「あつ! 玉ねぎうま!」

「うん~! 最高だよ!」

「温まりますね」


 みんな美味しそうに用意した分全てを平らげてくれた。


「ごちそうさまでした」


「シュン、こんな美味しいものをありがとう 正直異世界に来て食べたものの中で一番美味しかったよ」

「お粗末様です」


 使った容器には汚れ耐性付与を施してあるので、水洗いすればよさそうだ。僕は少しでも役に立てたかと思うと嬉しくなった。

 図々しいかもしれないけど僕はもう一つある提案をした。


「みなさん 僕の付与魔術受けてみませんか?」

「ん? もちろんいいけど、どんなやつ?」

「視力強化です。 僕が考えていることが薬草にも働くなら多分皆さんのお役に立てるかと思います!」


 皆の了承を得られ、僕は付与魔術をかけた。


役職ジョブスキル"視力強化"付与」

「おお! 凄い! 目が良くなったというかなんかこれ……オーラまで視える!」

「なにこれ! すごいじゃん!」


 野菜の新鮮さを調べる時に使った付与魔術だったんだけど、もしかしたら薬草探しにも応用出来るかなと考えた。

 僕の考えていたことが的中したようで……。


「薬草の周りにオーラが出てきて分かりやすくなってる!」

「おお! こんなん取り放題じゃん!」

「素晴らしいですね」


 そうして僕たちは薬草を大量に手に入れた――。


「さて、帰りますか!」

「うん!」

「やっとだ~」

「流石に疲れました」


 帰ろうとしたその時だった。


「ガサッ」

「なんだ!?」


「ガルルルルル」


「狼型魔物 一匹だ 全員戦闘準備」

「了解」


 僕たちは戦闘態勢に入った。


「シュン、付与頼めるかい」

「了解! コウタさんへ切れ味強化、魔物へ軟化付与!」


 付与を施した瞬間、コウタさんは魔物に切りかかった。


「はあああああ」

「ズバッ」


「キャウンッ」


 流石コウタさん一太刀で魔物を真っ二つに! って、地面まで切れてる! コウタさんすごすぎる!


「よし、魔物を回収して帰るぞ」

「了解」


 ――僕たちは街に戻った。

 そのまま冒険者ギルドへ行き、依頼の達成報告をする。


「これが薬草でこっちが狼型魔物です」

「お疲れさまでした。 薬草凄い量ですね、全て確認してまいります」


 そうして薬草と魔物は運ばれていった。

 待機していると……。


「確認終わりました。 薬草に関してですが、ほとんど品質の高いものばかりでした。 魔物も切断面がとても綺麗でかなりのいい状態になりますので、報酬は上乗せしてこちらになります。」

「え、こんなにですか?」

「はい どれも素晴らしいものばかりでした」

「では、有難く頂きますね。 ありがとうございます」

「こちらこそありがとうございました」


 凄いや、僕のしたことといえば……だけど上手くいったならよかった。

 付与魔術も少しは役に立てたかな――。


「ギルドマスター、いらしていたんですか」

「ああ、彼らは?」

「先日冒険者登録したばかりのEランクパーティーの方たちです」

「ほう、彼らならあれいいんじゃないか」

「あれ?」

「"迷宮ダンジョン"だよ」

迷宮ダンジョンですか!? ですが、まだ彼らたちはEランク、迷宮ダンジョンといえばレベルの低いところでも最低Cランクは必要ですよ!」

「高品質を大量に見つける観察眼、それに魔物をあんなに綺麗に真っ二つにする戦力。 迷宮ダンジョンにふさわしいと思わないかね?」

「はあ、ギルドマスターはいつもそんな感じですね。 わかりました、後日彼らに伝えてみようと思います」


 ――僕たちは冒険者ギルドを出た足で酒場へと来ていた。


「カンパーイ!」


「シュン、やっぱり俺の眼に狂いはなかった」

「な!? シュン、私の方がすごいと思ってるんだからね!」

「シュンさん大活躍でしたよ」

「みなさん……ありがとうございます!」


 僕なりに勇者パーティーの役に立てたんだろうか、これからも少しでも力になれるといいな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る