(29)7月16日 火曜日
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***
「おはようございます。7月16日火曜日、午前7時くらいをお知らせします」
「
「結局こうなるなら、さっさと友達登録しておけば良かったですね。気軽にメッセージを送れた方がいろいろと便利でした」
「さて、昨日はお疲れ様でした。たくさん英単語、覚えられましたね」
「────。はぁ、『なんで制服で来たの?』、ですか」
「まあ、それは、その。別に服装なんてなんでも良かったんですけど」
「ただ──何故か、なにを着ようか迷ってしまって。決められなくて」
「なんででしょうね。着飾ったところで大して可愛くもならないのに。あなたに見られるだけなのだから、ヨレヨレのシャツと色気のないパンツでも良かったはずなのに」
「でも何故か、小綺麗な服を並べて悩んでしまって」
「それで結局、勉強するんだし、制服で良いかなって思って」
「────。はぁ、まぁ、『私服が見られなくて残念』って」
「うーん、夏休みにも会えますし、そのときは普段着で行きますから」
「たぶんですけどね」
「ところで、あの、これだけは再確認しておきたいんですけど」
「こうやって、お話したり、勉強したりするくらいなら構わないのですけど」
「受験勉強があるので、その……恋人付き合いとかは期待しないで欲しいというか」
「────。はひ?」
「…………」
「いやあの、いやあのいや、あのですね」
「話、聞いていましたか? 『正式に告白しても良い?』、と言われましても困るんですよ」
「まあ、その、好きだというお気持ちは──」
「恋愛免疫のないわたしには──枕を抱きしめながらベッドの上を転がってしまう程度には、嬉しいものなのですけど」
「でも受験勉強もありますし、だから、その」
「一緒に映画とか見たり、遊園地に行ったりとか、そういう憧れはありますけど」
「でも、だから……」
「あの、その……」
「告白されると、断れる自信がなくて」
「本当に困ってしまうので、だから……」
「……………」
「……………」
「うん、ダメ、ダメですよ……ね? 告白してはいけません。だって両想いになってしまったら、『見ていてなんとなく不安になる出席番号8番の片想いを見守る会』が解散してしまって、あなたを毎朝起こしても缶コーヒーが貰えなくなっちゃうじゃないですか」
「あ、でも、そうなると、『見ていてなんとなく不安になる出席番号8番の両想いを見守る会』となって存続するのでしょうか。その場合って缶コーヒーは貰えるのでしょうか?」
「ふふ、わたし、なにを言っているのでしょうか。あなたが変なこと言うせいで、わたしまで変なこと言っていますよね」
「とにかく告白はダメです。たとえば今日の放課後、わたしが無意味に教室に残っていたとしても、そういうことをしたらいけません」
「これ以上、わたしを困らせないでくださいね?」
「では、そろそろ切ります。学校でお会いしましょう」
【おわり】
片想いしているクラスメイトの女の子が毎朝電話をかけてくるようになった。 猫とホウキ @tsu9neko
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