(28)7月15日 月曜日

 着信アラート音。画面上の『応答』表示をスワイプする。



***



「おはようございます。7月15日月曜日、午前7時くらいをお知らせします」


犬童いんどうです。あ、先に言っておきますけど、今日が祝日で学校が休みなのは分かっていますよ」


「────。金曜日、あなたが変なこと言ったせいですぐに電話を切ってしまったから、言いたいことが言えてなかったんです」


「まあ、明日でも良かったですし、いつでも良かったんですけど。でもなんとなく、電話してしまいました」


「それで、言っておきたかったことですけど」


「もうすぐ夏休みですよね。わたしは夏期講習があるので忙しいのですけど、なにもない日もあります」


「夏休みの宿題。どうせあなたは最終日近くまで手を付けないでしょう。だから、その」


「アルバイトとかで忙しくないなら、週一回くらい、ファミレスとかで一緒にやるのも──」


「まあ、その。夏休み明けの初日に、いきなり夏休みの宿題を手伝う羽目になるのも嫌ですし」


「悪くないと思うのですけど。どうですか?」


「────。はぁ、『それはさておき休日なのにつむぎさんの声が聞けるなんて嬉しい』って」


「あのですね。面白がって言ってますよね?」


「わたしが動揺するの分かってて──」


「とにかく夏休みの宿題のこと、考えておいてくださいね」


「────。はぁ?」


「どうせなら、今日、ファミレスで勉強しないかって、あの」


「まだ夏休みの宿題は出ていませんし、今週提出の宿題もありません。無意味ですよね?」


「────。はぁ、『期末テストの復習、一緒にやらないか』って」


「いや、やりません。あなたもそんなことする気、ないでしょう?」


「でも──そうですね。うん、勉強するのは悪くない」


「期末テストとは関係なく、たとえば英単語を覚える会とか、そういうことなら悪くない」


「それなら絶対に無駄にはなりませんし」


「休みの日にまであなたの顔を見るのは嫌ですけど、でも勉強のためですし、仕方ないですよね」


「うん、仕方ないし、悪くない……」


「ふふ、そう考えると、この時間にあなたを起こしておいて良かった。午前中から始められますよね」


「────。はぁ、『OKされると思ってなくて心の準備ができてないから午後にしないか』って。いや、あの、あなたが誘ってきたんですよね?」


「わたしだって、汗やばいんですからね? だってこれ、まるでデート……」


「…………」


「ふぅ……落ち着きましょう。これはデートではありません」


「うん、勉強会、勉強会だから問題なし……」


「そろそろ切ります。水分補給しないと謎の汗のせいで脱水で死にそう」


「待ち合わせは10時。駅の交番前に集合でどうでしょうか」


「言うまでもないことですけど、勉強道具を忘れないように。あと二度寝はしないでくださいね」


「では」

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