第25話 負と真実

どういう状況なのだろうか。

そう思いながら俺は...用場和彦、俺、佐藤栞先輩。

その3人で散弾銃の銃口を時折向けられながら話をする。

だけど用場和彦はそれでも踏ん反りかえっている。

この状況でよくこんな真似が出来るものだ。


「それで話って何だ」

「君は少しだけふざけすぎたね。里島めぐるさんもそうだけど。周りを悲しませている。...君は自ら自首する気はないのかな」

「...俺は何もしてねぇ」

「そんな事を言ってもね。君は色々しているから。...見過ごせないよ」

「...」


和彦は出された水を飲む。

それから目の前の佐藤栞先輩を見る。

俺はその姿を見ながら溜息を吐いて考えていると。

佐藤栞先輩は俺を見た。


「...君はどう思う」

「佐藤栞先輩。...もう止めましょう。今なら引き返せる可能性が」

「ネタバラシはしたつもりだ。もう引き返せない」

「...長住さんは。そして部活は。貴方の人生はそれで良いんですか」


その言葉に佐藤栞先輩の手が止まる。

それから俺を見てきた。

俺はその姿に言葉を続ける。


「今...暴走次第で殺したらその人達にもう2度と会えません」

「...知っているよ。もう引き返せないからね」

「しかし」

「しかし、という言葉に反論するけど君はこれ以上の方法を思いつくかい?」

「...」


俺はまた静かに佐藤栞先輩の目を見る。

すると電話がかかってきた。

その相手は...。

俺はハッとしてからそのまま話す。


「...やっと繋がった。...そこに栞の馬鹿は居るかな」

「...はい」

「今、喫茶店の外だけど。...ひょっとしてと思って来たんだけど。...何か起こってないかい。そこで」

「...」


佐藤栞先輩がスピーカーに話しかけた。

「やあ。兄さん」と言いながら、だ。

すると直ぐに反応があった。


「お前何をしているんだ。栞」

「...よく分かったね」

「お前の部屋から果物ナイフとかが出て来てな。ひょっとしたらって思ったんだ。もう止めろ。何をしているかは分からないけど」

「...俺はもう引き返せない地点に居るから。兄さんだけでも幸せになって」

「馬鹿かお前は。本当に何をしているんだ」

「銃口を突きつけているんだ。用場和彦にね」

「...は?」

「言ったろ。引き返せないって」


数秒間の沈黙。

すると忍さんはこう話した。


「お前の恨みはよく分かる。殺したい気持ちも。だけど俺達が手を出したら終わりだぞ。そいつらと同じだ。結局は」

「...まあそうだね。だけど殺せば終わるから」

「馬鹿な真似はよせ。...俺は...」

「兄さん。そんな身体にされて悔しくないの。用場和彦に」

「...やはりそういう事か」


そして忍さんは「用場和彦。聞いているか」と問いかける。

和彦は何の反応も示さなかったが忍さんは続けて話した。


「お前がした事は断じて許さない。だけど恨むべきが世界じゃないって思っている」

「...」

「だからお前も反省してくれ」

「...」


和彦は視線を見下ろす様に反応する。

それから目線を逸らした。

俺はその姿を見ながら「忍さんは今何をしているんですか」と聞く。

すると忍さんはこう返事をした。


「杉山さんっていう人に頼んだ。...通報した」

「...」

「GPSを辿ったらその場所に行き着いた。...もう直ぐ警察が来る」

「...そうですか」


そして俺は佐藤栞先輩を見る。

次に和彦を見た。

すると和彦は肩をすくめて「馬鹿らしい」と呟く。

それからこう話す。


「反省もクソもあるか。...俺は金の為なら何でもするぜ。それにお前の様な殺人をするクズと違ってな」

「...」

「良い加減にしろって言ってもな。...お」


そこまで言っていた和彦をあまりの事に殴り飛ばした。

それから地面に仰向けに倒れる和彦。

このクズ野郎。


「...お前多少は反省しろよ。マジに」

「多少の反省って何でだよ。分からない事を言うな。いきなり何すんだクソボケが」

「金に目が眩んだ?...クズが。お前の様な奴は死んでくれ」

「そもそも金以外に目がねぇしな。...死ねっつって死ぬわけねぇだろ」

「このクソ野郎」


俺は静かに拳を振るわせる。

それから和彦を見る。

すると和彦は鼻血を拭ってから俺を見てくる。

嘲笑うかの様に、だ。


「...お前ら何も知らない様だから教えてやるよ。鉛を用意したのは俺じゃねぇよ」

「何...」

「全て...アイツだ。あの女だよ」

「...」


その言葉に俺は和彦を見る。

和彦は俺を見てからほくそ笑む。


「あの女が盛れっつったまでだ。...俺はあの女が好きだったからな。金も手に入るしウィンウィンと思ったんだが。まさかこんな事態になるとはな」

「...」

「お前らが勘違いしているみたいだから言っておいてやるが。俺は殺しちゃいねぇ。盛ったまでだ」

「その時点でお前も殺人鬼だ。何も変わらない。反省しろ」

「...」


用場和彦は睨む。

すると窓の外に真っ赤なサイレンが聞こえて見えた。

俺は無言で和彦を見る。

そして結論から言って...全員、警察署に行った。


それから和彦と俺と佐藤栞先輩だが。

家にそのまま帰された。

十分な証拠が得られなかったのもあるが。

警察の...何か思惑がありそうな気がするが...。

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俺の彼女を寝取ったのは俺の兄だった...だから俺はお前らに復讐してから新しい彼女と幸せになるんだ アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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