第24話 gun
その日、俺はまた佐藤栞先輩に呼ばれ...近所の喫茶店にやって来た。
ここの店主は佐藤栞先輩の知り合いだという。
俺はその喫茶店の中年男性マスターを見ながら目線を前に向ける。
佐藤栞先輩がコーヒーを飲んでいた。
目線を背ける。
「...で、だ」
「...はい」
「君の所に...彼女が来たんだろう?里島めぐるの妹さんが」
「よくご存知ですね」
「...まあね。...無駄な情報も入るから」
そう言いながら佐藤栞先輩は目線を窓の外に向ける。
俺はその姿を見つつ聞く。
「今日は何の用事ですか」
「言った通りだけど俺達は休戦協定を結んだよね」
「そうっすね」
「...それで、だ。俺は君に情報を提供する。代わりに協力し合う。それで良いかな」
「...はい」
そして俺は静かに佐藤栞先輩を見る。
というかこの場所を選んだのはまさかと思うが情報を聞かれない様にする為か。
そう思いながら俺は目線を佐藤栞先輩に固定する。
「...俺の情報だけど。...当時の社員にも話を聞いているよ」
「当時の社員ですか」
「そうだね。負傷した男性。赤丸将吾(あかまるしょうご)っていう男性だ。...同期だったそうだ」
「...」
「...君に頼みたいのは1つ。...用場和彦に接してくれないか」
「無茶言わないで下さい。それだけ情報が入っているなら知っているでしょう」
俺は静かに佐藤栞先輩を見据える。
佐藤栞先輩は肩をすくめた。
それから頷く。
コップに付いている水滴を拭う様にしながら。
「...確かにね。...だけどこれも...捜査の一環だから」
「知ってます。だけど佐藤栞先輩。無理ですよ。奴は。口を割りませんし先ず何処に居るかも分からない」
「俺は知っている」
「...なんですって?」
衝撃を受けながら俺は佐藤栞先輩を見る。
何でそんな事を知っているんだ。
そう思いながら。
すると佐藤栞先輩は目を細めた。
「...赤丸将吾が喋ったんだ。住所をね。だけどそれが正しいかどうかは分からない。彼は何度も引っ越しているらしいから。用場和彦は」
「そうです。...だから辿っても意味無いですよ」
「...そうか」
「...」
「...用場和彦はね。俺が疑っている1人だ」
「鉛事件の、ですか」
「そうだね。性格が最低と聞くしね」
それから俺達は見合っているとドアが開いた。
そして...その男は顔を見せた。
それは用場和彦だった。
何故コイツが居る?
「...あ?何だお前ら」
「...何でお前が居る...?」
「...それはこっちの台詞だ。何だよ。美人が居るって噂で来たってのによ」
「...佐藤栞先輩。何をしたんですか」
「撒き餌を撒いた。出会い系サイトとかにね。...案の定引っ掛かったんだよ。用場和彦さん」
「お前の顔どっかで見たな」
「...俺は貴方の同期の社員の弟です。名前を佐藤忍って言います」
俺は静かに佐藤栞先輩を見る。
佐藤栞先輩はニコッとしながら和彦を見ていた。
冷や汗が出る。
それから和彦を見る。
「つまり俺を騙したのか。お前は。...何様だよ」
「そうですね。先ずは話をしませんか」
「あ?」
「店内でそんな会話を...」
「実はね。徹くん。ここは貸し切りだよ。今日は」
「じゃあ何か...」
「この3人で話をする為に貸し切った」
そして佐藤栞先輩は冷ややかな目線で和彦を見る。
すると和彦は鼻を鳴らした。
それから踵を返したが。
いきなり店のシャッターが降りた。
それはマスターが何らかの方法でシャッターを落とした様だった。
「...おい。何の真似だ」
「話がしたい。だから逃げないでほしい」
「...」
「...佐藤栞先輩」
ゆっくり立ち上がってから和彦を見る佐藤栞先輩。
俺はその顔を見ながらマスターを見る。
マスターは何かを持ってきた。
それは...猟銃だった。
散弾銃ともいうかもしれないが。
は?
「...!!!!?」
「もう一度言うけど。話をしたい。ただそれだけだ。大人しく従ってほしい。君も死にたくはないだろう?」
「...テメェ何の真似だ」
「...佐藤栞先輩。アンタ何者なんだ」
「ここのマスターは俺の知り合い。ただそれだけだ。狙って撃ち殺しても君の命が燃え尽きるだけだ」
「テメェな。警察に通報するぞ」
「その前に君は死ぬ。それも内臓を派手にぶちかましてね。君のやった悪事よりかはマシだろう。...それにマスターも覚悟の上。日本じゃ1人殺したぐらいで死刑にはならない。甘いんだこの国は。入っても20〜30年ぐらいだ」
「で、でも俺が...」
「協力し合うって言ったよね」
「...」
確かにそうは言った。
だけどこれ色々と違うだろ。
最悪の場合、人が死ぬ。
そう思いながら俺は...静かに腰掛ける。
「...それで話ってのは何だ」
睨む和彦。
少し離れた先では...マスターが散弾銃の弾を装填していた。
俺は汗が噴き出る。
すると佐藤栞先輩はニコッとした。
「...結論から言って君が犯人だろう。赤丸さんと...俺の兄を痛めつけたのは」
「...は?」
「...な」
「言い逃れはしなくて良い。君をここに呼んだのはあくまでそういう話をしたいだけだ。俺も捕まりたくないし殺す気は無いんだ」
「...オイ。和彦。お前...」
「何の話だ。...わからねぇな」
「...そうか。じゃあ仕方が無い。華々しく散るかい?」
「...仮にもそれでも良いがお前が指示してやってんならお前も捕まるぞ」
「俺はこれは指示してない。マスターがやりたいって言ったんだけどね。...まあ何れにせよ捕まるだろうけど」
「さ、佐藤栞先輩。...あれは本物の銃ですか」
「あれは鹿を駆除するものだ。本物の日本の散弾銃だよ」
何てこった。
そう思いながら俺達は3人で腰掛ける。
それから対面で銃口を用場和彦に向けられながら冷や汗を流す。
何だこの状況は...。
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