第23話 3つの複雑な絆
彼女に悪気は無い。
そして聖良ちゃんは被害者だ。
だからこそ俺は...そう接さなくてはならないのだが。
だけど俺は何だろうか。
「気持ちは分かるよ。...とうちゃん」
「...ああ。...それにしても俺は何なんだろうな。マジに。最低最悪だ」
「いや。それは最低最悪じゃないと思う。当たり前の反応だと思う」
聖良ちゃんは横になって俺達の用意した布団で眠っている。
どうもここ数日寝てない感じで爆睡している。
俺はその姿を見てから華凛を見る。
華凛は俺と同じ様に聖良ちゃんを見ていた。
「...私...は。...彼女は別だと思っている」
「...」
「自分勝手だとは思うけど。...彼女には何の落ち度も無いから」
「...だな」
「私、傲慢かな」
「いや。正しいと思う」
それから俺は聖良ちゃんをまた見た。
すると華凛は俺を見てきた。
俺は?を浮かべて華凛を見る。
「それにしても話が変わるけど。こうしてみるとまるで夫婦だね」
「...そ、そうだな。確かに」
「...うん。わ、私達に実際に子供が出来たらこうなるのかな」
「華凛。話が飛躍し過ぎだ」
「いや。これは本当にそう思う」
そして華凛は俺を見上げてくる。
俺はドキッとしながら華凛を見た。
すると華凛は何を思ったか俺の頬を優しく両側から包み込む。
それからそのまま唇でキスをしてきた。
「!!!!?」
「...ゴメン。つい...その。我慢が出来なかった」
「お、俺達は付き合っている訳じゃないんだぞ」
「うん。...だけど...私、本気でとうちゃんが好き」
「...」
俺はその言葉に静かになる。
それから華凛を見た。
華凛は俺を見ながら頬を朱に染めている。
その様子に俺は唇を撫でる。
「...ったくお前は」
「...えへへ」
「...とにかく今は聖良ちゃんを...どうにかしないと」
「何か預け先があれば良いけどね」
「...そうだな」
そして俺はまた聖良ちゃんを見る。
聖良ちゃんはグッスリ眠っている様に見える。
俺はその姿を見てから目線をスマホに移す。
それから検索をかけた。
「...行政以外で...か」
「あれば良いけどね。...多分無理だよ」
「...そうだな」
「私も苦労したしね」
「...そうか」
検索結果は...結局は児相だった。
児童相談所。
つまり...里島一家が嫌っている場所しか無い。
そりゃそうだろうな。
そう思いつつ俺はスマホを閉じた。
「...今は俺達が預かって。そして...どうにかしよう」
「預かるっていうか放課後に来させるみたいな?」
「そうだな。防犯上それが良いと思う。俺だけだったらマジに厳しいけど」
「そうだね...世の中には変態さんが居るもんね」
「そうだ。...お前にも迷惑がかかるけど」
「良いよ。だってとうちゃんだし」
「...そうか」
そして俺達はまた聖良ちゃんを見てからそのまま寝た。
それから翌日になる。
聖良ちゃんは先に起きていた。
☆
「お兄さん。お姉さん。おはよう御座います」
「ああ。おはようさん」
「昨日は有難う御座いました。今日帰ります」
「...その件だけどさ」
「はい?」
「暫く学校終わったらこっちに帰って来ないか。...俺たちが協力するから」
「...え?良いんですか?」
「ああ。君だけだとどう考えても...何かあった時がな」
「だから私達を頼って良いよ」
すると聖良ちゃんはモジモジしながら俺と華凛を交互に見比べる。
それから俺に抱きついて来た。
俺はその姿を見ながら「...」となっていると。
聖良ちゃんは離れて頭を下げた。
「宜しくお願いします」
「こちらこそ」
「そうだな」
聖良ちゃんはまた俺を見てから華凛を見る。
そして涙を浮かべてから拭った。
「御免なさい。私みたいな迷惑な...」
「俺達も散々考えた。...だけど聖良ちゃん。君はあくまで被害者だ。...だから俺達は君を預かる事にしたんだ。まあ未成年だから...あまり派手には出来ないけど」
「そう。私も協力するからね」
「...頼りになります」
そうして呟いてから聖良ちゃんは腕まくりをした。
それから俺と華凛に向いてからニコッとする。
「こうしちゃいられません。私、家事をします」
「それなんだけど」
「はい?」
「それも役割分担しないか」
「...え?でも...お世話になるのは私ですし...」
「しかし君ばかりに任せる訳にはいかないだろう」
「...お兄さんは優しいですね。お姉さんも」
「とうちゃんが考えた結果だよ。聖良ちゃんが倒れちゃうからね」
聖良ちゃんはまたモジモジする。
それから頭を勢い良く下げた。
そして笑みを浮かべる。
「宜しくお願いします」
「...じゃあ早速だけど」
そして俺は人生◯ームを取り出す。
それから笑みを浮かべた。
聖良ちゃんは?!という感じの顔をする。
「遊んで楽しく、だよ。こういうの決めるのは」
「え...で、でも。双六の方が決めるの早くないですか?」
「少し息抜きも兼ねて。...な?」
「...お、お兄さんとお姉さんが良いなら」
俺はその言葉にニコッとしながら箱を開ける。
それから駒、お金、カードを用意していく。
当然だが約束手形も、だ。
そして聖良ちゃんを見ると。
「...楽しいなぁ」
そんな事を嬉しそうに呟いていた。
こういう楽しい事をする機会も無かったろう。
そう思いながら俺は視線をボードに移した。
それから華凛を見る。
華凛も柔和な顔をしていた。
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