勇者パーティーから外されたが、どうしようか

サイレント

第1話 【全てが始まった戦い】

 それは一つの戦いだった……


「行くぞ、みんな!」


 青い鎧を身に纏った青年が仲間に指示をする。

 ドラゴンの咆哮が響く。そのドラゴンは二階建ての家程の大きさであり、周囲の人を皆殺しにするという殺気を隠す気は無かった。ドラゴンのいる洞窟も飛翔するための穴が開いており、そして広かった。


「ケン!」

「うむ! 【アイス・ボンバー】!」


 ゴリマッチョのローブを着た男が氷の魔法の玉を思い切り殴り飛ばした。


「むっ……コイツ頑丈だな!」


 ケンと呼ばれた男が使った氷魔法、その威力に自信があったのだろうが、ドラゴンは受けてなお痛がる様子を一切見せない。驚いている間に竜は長い尻尾を大きく振り回した。


「うわっ!」

「パン! 大丈夫か!?」

「ああ! あんなの当たる訳ねえ! けど、まいったな……俺の動きにも付いて来れるとは!」


 ケンとは別にパンと呼ばれた男は細マッチョで身軽な服を着ておりその手にはダガーが二本握っていた。


「サラ! 支援を頼む!」

「ええ! 【パワード】!」


 青年が走り出すと同時にサラと呼ばれた勝ち気そうな少女の身体能力を上げる魔法を受けた。


「【ドラゴン・スラッシュ】!」


 青年が持つ青と金を基調としたまるで芸術作品のような綺麗な剣が輝く。その剣がドラゴンの強靭な鱗を簡単に切り裂く。ドラゴンに対して効果が発揮するスキルの効果もあるだろうが、剣の強さがあっての一撃だ。


「くっ!」


 ドラゴンは痛がりながらもさらに尻尾を振り回す。その一撃が青年の肩を少しだけ掠る。それでもドラゴンなのか一撃の威力は高く青年の肩に少しだけ血が流れる。好機と見たドラゴンは青年に噛み付こうとする。


「【ビック・シールド】!」


 青年とドラゴンの間に巨大な盾が出現した。それによりドラゴンは盾に噛み付く結果となるが、それでも盾に罅が入る。


「すまない!」

「サラ! 我にも力を上げる魔法を!」

「でも、あいつ飛ぶわよ!」

「心配無用!」

「ぱ、【パワード】!」

「うむ! 頼むぞ、パン!」

「ああ! 飛ばす訳ねえだろ! 目ぇ瞑ってろ!」


 パンが小さな玉を放る。その瞬間にその玉が破裂し閃光を発した。


「頼んだぜ、ケンの旦那!」

「見事だ! 我が拳受けるがいい! 【パワー・フィスト】! うおおお!」


 閃光に驚きバランスを崩し落ちるドラゴンの腹をケンが思い切り殴る。その威力にドラゴンは吹っ飛んだ。


「むっ!」


 怒ったドラゴンはさっきよりも大きく咆哮し素早く飛翔した。その口には炎が噴き出していた。


「あのドラゴン、奥の手を使うようだ!」

「すげえ熱だ! こっちまで熱くなるぜ!」

「ルド! 【ビック・ツイン・シールド】で―――」

「【アルティメット・シールド】!」

「!?」


 ルドと呼ばれたユウと同じ年齢で傷だらけの青年は先程の盾よりも大きくて神々しい盾を出現させた。


「っ! ケン! あのドラゴンの下に!」

「む……いいだろう!」


 ドラゴンは自身の自慢の火炎を吐き出す。しかし、ルドの出した盾には傷一つ付かず押される事も無かった。


「ケン! 頼む!」

「うむ! 行くぞ! 【パワー・リフト】! うおりやああ!」


 その間にユウはケンの腕に乗りケンはユウをドラゴンがいる上空にぶん投げた。


「ドラゴン! これで最後だ!」


 ユウの聖剣が先程よりも強く光り輝く。


「【ムーンライト・スラッシュ】!」


 聖剣から黄金の三日月型の斬撃が飛び、ドラゴンを切り裂いて倒した。


「やった!」

「流石ユウのアニキだぜ! 伝説の聖剣の威力もすげえよな!」

「ルドも流石ね!」


 ドラゴンを倒した事にユウの仲間達は喜んだ。


「っと!」

「ありがとう、ケン」

「大したことじゃないさ」


 落ちるユウをケンが受け止める。


「それにしても……うむ、素晴らしい活躍だった」

「ケンのお陰でもあるよ」

「ふっ、キミらしいな」


 ルドは表情を変えなかったが、ユウの勝利を喜んでいただろう。


「……さあ、みんな……帰ろう」 


 ただ、たった一人だけ、ユウの表情は誰にも見えなかったが……

 ユウは確かに苦虫を噛み潰したような嫌な顔になっていた。

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