人形の国A地区[ニ章]ドールハウス

《友情と言う名の糸の切れ味》

 どうしてこんな事に。なんて僕は何故だか言の葉も発せない状態で思う。

 僕はあのニュースの内容を何故だかすっぽ抜けた状態で、DollHouseというお店?にひかれ、入ってしまった事から異変が始まり、急に意識を失い、今は何故だか祭壇のある部屋に閉じ込められてしまったのだ。

 この祭壇のある部屋に閉じ込められてから、何故だかどこの誰だか分からない記憶が頭の中に流れ込んできている。

 この記憶はなんだろう?子供みたいな背丈のB氏もいるし、この記憶の持ち主?があの神社に行ってから記憶が飛んで僕と同じ様に洋館に閉じ込められている様な記憶があるので、多分この子もここの被害者かな?と感じるのと同時に、ここに来る前のB氏の発言が少し引っかかる様な気はしたが、とりあえず、この場所を調べてから脱出するのが先決だろうと考え、今探せる範囲の祭壇のある部屋を、徹底的に調べ上げる事にした。

 祭壇の前まで移動して見ると、床を踏んだ時に出る鈍い音とは打って変わって開放感のある様な音になり、この下に何か空間があるのでは無いか?と感じた。

 僕は力一杯に床を踏みつけた。

 すると、メリメリっと音が鳴り響き、そこからさらに踏みつける事で、ドゴーン!と音が響き渡ると同時に床はバキバキに割れ、巨大な穴ができた。

 僕は、さっそく穴の中を覗き込むと、やはり、思った通り空間があった様でその空間には、小さめの机、そしてその上にはお祭りでつける様な狐のお面が置いてあった。

 下に空間が続いていて、飛び降りても安全な範囲であるとわかると僕は、その場所へと降り、この謎の仮面がなんなのか?なんて考えつつも、とりあえず触ってみて、問題なさそうならつけて見るか。なんて思い、手に取って、顔に付けてみた。

 すると、また、新たな記憶?が脳内に刷り込まれていってしまった。

 その記憶によると、この仮面は頭の中で思い描いた人物をこの洋館に誘き寄せ、入れ替わる事ができる。その際にあいての記憶も引き継ぐ事が出来るみたいだ。

 僕はこんな場所から早くおさらばしたいので、この仮面の力を使わせてもらう事にした。

 すると、また意識が遠のいていってしまった。

 目を覚ますと、僕は何故かB氏の背後にいた。

 何故こんな事になって居るんだろう?

 なんて疑問もあったが、とりあえずあの仮面の力のおかげか?なんて考える事で納得した。

 朝、B氏が登校すると、ぼくが座っていた席に手を付き、まさかお前まで…‥。

 なんて発言を聞き、僕は少し胸がキュッと痛んでしまった。

 その後B氏は、自分の席へと着き、誰とも話す事なく時は過ぎ、放課後になってしまった。

 それからB氏は、荷物を足早にバッグに詰め、学校を出て、とぼとぼと歩いて帰路に着こうとした。

 そして、いつも僕たちが別れる道まで来ると、「いつもあいつと楽しく笑いながらここまで一緒に帰ってるのにな。寂しくなっちゃったな。今日は、あいつがいつも通って居る道で、あいつの家まで行って見るか。」

 なんて独り言を呟きながら、いつもの道からそれ、僕の住んでいた家まで向かうみたいだった。

 向かう道中B氏は、ある建物が目に入ってしまった。

「なんだ?この洋館。ここって昨日までは普通に廃墟じゃなかったっけ?まぁいっか。とりあえず、この洋館の隣にある神社でも久しく寄って見ようかな。」

 なんて言うと、階段を一段、また一段と登り、境内へと向かった。

 境内に着くと、地面に狐の仮面が落ちていた。

 普通ならば拾わないのであろうが、B氏はそれを拾うと顔に付け始め、賽銭箱へとお参りに向かう。

 そんな時、なぜだかは知らないが急に頭がくらっと来て、僕はまた意識を失ってしまった。

 また目を覚ますと、今度は学校?の中にいる事に気がついた。もしやと思い、授業もまだ始まっていなかったので、トイレに駆け込み姿見で身体を見て見ると、前にCちゃんの記憶の中に出て来たB氏の小さい頃と見た目が寸分違わず同じだと言う事に気が付いた。

 遂にこの祭壇から脱出できる可能性が出て来たと喜びに浸りつつ教室へと戻り、さっきまで座っていた席に座ると、ある事に気が付いた、あれ?隣に座っているのはCちゃんじゃない?なんて。まぁ、とりあえず今は関係ないか。なんて思いつつ授業の始まりを待つ。

 待つ事10分。先生がガラガラ。と扉を開け、まずはホームルームが始まった。

「明後日から夏休みに入るので、今日は半日授業、明日は終業式をやって終わりとなります。」

 なんてひと言を残し、クラスメイト皆んな、喜びの渦に巻き込まれた。

 それから授業が始まり、半日というのもあってか、体感すぐに帰宅する時間となった。

 そして、今日は何も起こらずに幕を閉じた。

 次の日、今日は終業式か。なんて少し嬉しそうな表情で起き、学校へと向かった。

 途中で、Cちゃんとばったりあったので、

「おはよう」なんて声をかけ、続け様に「今日さ、終業式終わったら時間ある?あったら遊ばない?」

 なんて声をかけると、「うん。良いよ。どこに行くの?」

 なんて言われたため、「まずは、駄菓子屋に行って、その後公園にも寄ろうか」なんて言われたCちゃんは、「分かった。いいよ。」

 なんて返事をした。

 それから終業式が終わり、Cちゃんに、じゃあ今日この後、「2時頃学校前集合な」なんて言い残し、学校を後にした。

 2時頃、待ち合わせ場所に向かうと、Cちゃんが既に待って居てくれたので、「お待たせ。」

 なんて言って合流をして、駄菓子屋へと向かう。

 そして、その後も公園で少し身体を動かすなどをして遊んでいると、時刻はいつの間にか6時頃を迎えて居た。そこで僕は、「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」

 なんて言って、帰路へと着こうとした。

 帰る際僕は、今でも何故この道を選んだのかは分からないが、廃墟が目の前にある通りを通って、帰るルートを選んでしまった。

 そして、その道へと着くと僕は、

「Cちゃん。この廃墟の隣にある神社に行かない?せっかくの夏だからさ、肝試ししようぜ。」

 なんてCちゃんに声をかけた。

「えー。私、怖いの苦手なんだけどなぁ。」

 と。それを聞いた僕は、

「良いじゃん。どうせ何も出ねぇし、良いから行こうぜ!」

 なんて手を引っ張り、小走り気味に階段を登って鳥居をくぐり、境内まで向かった。

 境内に着くと、僕は手に違和感を覚え、その違和感の正体はなんだろう?と考えると、はっ。とした顔になり、辺りを見渡すも、Cちゃんが居ない。僕は全身だらだらに汗をかき、焦り始め、階段を急いで駆け降りCちゃんの家へと向かった。

 向かっている道中、なんで僕はこの道に進んだんだ!

 何故肝試しに行こうだなんて行って手を引っ張って行っちゃったんだ!

 なんてこんな言葉が脳裏で駆け巡り後悔と罪悪感で苛まれた。

 Cちゃんの家に着くと僕は、インターホンを鳴らした。

 すると、はーい。なんて声と共にCちゃんのお母さんが出て来たので僕は初めにごめんなさい!

 と謝ると、向こうは困惑して居たが、それを無視して話を続けた。

「僕と遊んでいる時に、僕は肝試しに行こうだなんて行って神社に引っ張って行ってしまったんです。それで、気づいた時にはCちゃんが居なくなってしまったのです。」

 なんて話をするとCちゃんのお母さんは、表情を変え、「馬鹿かよ!なんでこんな危ない時間に肝試しがしたいだなんて言って引っ張って行ったんだ!とりあえず報告は分かったからもう帰れ。そしてもう来るな。」

 なんて言って怒られ、もう近づけなくなってしまった僕は、とぼとぼと家へと帰り、さらに後悔と罪悪感に苛まれ、家へと着くとすぐに部屋へ引きこもってしまった。

 次の日の朝、ドンドンドン!とドアを叩く音がすると僕は目覚めた。

 するとこんな声が聞こえて来た。「ねぇ。朝ニュースで昨日の夕方にCちゃんが行方不明になったなんてやっていたけどどういう事?昨日Cちゃんと遊びに行ってたよね?」

 なんて内容で僕は、胸がキュッと苦しくなりながらも昨日Cちゃんのお母さんに話した内容を話した。すると、「昨日、そんな事があったのか。とりあえずCちゃんのお母さんに謝りに行くよ。だから出てこい。」

 なんて言われたので、「昨日謝りに行って説明もしたら怒られてもう来るなって言われたからいけないよ。」

 なんて言うと。「昨日言いに行ったのか。だったら今は刺激しないほうがいいな。」

 なんて言って去って行ってしまった。

 こんな話をしているとさらに感情が昂り、昨日の僕の行動に苛つき、さらに部屋から出たくない気持ちになってしまった。

 引きこもり始めて最初の2週間はお母さんがご飯を置きに来るたびに声を掛けてくれたが、ぼくが返事も何もしないでいると、次第に声を掛けてこなくなり、僕はさらに無気力にずっとベッドの上で寝続ける日々になり変わってしまった。

 そこから3年が経過した。

 年齢的にはもう中学生に上がるくらいにはなるが、いまだに立ち直れてはいない。

 だが、少しずつ心の整理がついて来て、ずっとここで立ち止まっていても仕方がない。一歩だけでも足を踏み出して見よう。

 なんて考えても見るが、どうしても尻込みしてしまう。

 しかし僕はこうも考えた。確かに僕は過ちを犯したのかもしれない。だが、こうして引きこもっていて、何になるんだ?さらに悲しむ人、そして罪が増えるのではないか?

 なんて自分に言い聞かせ、奮い立たせる事で部屋のドアを開け、一歩足を踏み出した。

 すると、お母さんが朝ごはんを持って来ている最中で、「Bちゃん?」なんて言葉を発し、

 始めは呆然と突っ立っていて思考が止まっている様な感じを見せたが、次第に少しずつ涙目に顔が移り変わって行き、「あの事件があってから3年、心の整理をつける事ができたんだね。お母さん、どうしたらいいのか分からなくて声もかけず、ごめんなさい。これからはいつも通り一緒にご飯を食べよう。そして、少しずつでも良いからいつも通りの日々に戻れるようにして行こうね。」

 なんて言って、抱きしめられた事で僕は、あんな事があったからって3年も何をしていたんだ?ここまで人を悲しませて。なんて気持ちを持ち、またも自分に苛立ちを覚えたが、グッと噛み締め、「うん。これからは自分に蓋をしないでちゃんと現実に向き合って生きていくよ。」と一言言うと、

 僕も今までの事やこの状況に気圧され感情に任せわんわん泣いてしまった。

 そこからは少しずつ家族との接触も増えてゆき、外に出るための準備も重ねに重ね、一年後、ようやく自分の足で外へと赴く事ができるようになった。

 そして、僕はあの時のけじめをつけたいと考え、愚策であると考えはしたが、もう一度Cちゃんが消えてしまった神社へと向かった。

 だが、向かっている途中、心臓の音がうるさくなり、目的地に近づくにつれ、さらに大きさを増して行った。そして、目の前までつくと、ふらふらな状態となり、少しずつ、目の前の景色が黒く塗りつぶされていく様子を見た僕は、やっぱりまだ、整理がつけられていなかったんだな。弱いな。僕は。なんて思いながら意識が遠のいて行って、その場に倒れ込んでしまった。

 目を覚ますと僕は、無機質な洋館の中の、初めに入った部屋に戻って来ていた。

 とりあえず祭壇からは脱出出来たし、B氏の中に入る事で外には出られるようにはなったけど、この現象の原理がいまだに分からないし、なんでB氏と入れ替われているのか?そして、何故入れ替わってから外に出ているのに現実世界ではCちゃんを含め行方不明扱いを受けているのだろうか?

 なんて疑問は湧いてくるが、まぁとりあえず脱出しよう。と考え部屋のドアを開けると目の前には11体ほどの人型の人形が並べられていた。

 来た時こんなのあったっけ?それにこの人形の内3体くらい見た事のある顔がある。その内1体目がCちゃんで、2体目がぼく。3体目はB氏じゃないか?怖。なんでこんなところにこんなものが。もしかしてここに連れてこられた人は型を取られてここに並べられるのか?

 なんて考えが頭をよぎり、とても不気味に思い早く出ようと考え、一階へと降りて、玄関まで向かい外へと脱出した。

 外へと出ると、大きく手を広げ息を吸い上げて、久しぶりに吸える外の空気の喜びを噛み締めてから、一応身体はB氏なのでB氏の家へと向かった。

《エピローグ》

 僕はこの世界の被害者となってしまい、真相もまだはっきりとは掴めてはいないが、この疑問だけはずっと胸に残り続けている。


この世界は本物なのか?それとも夢を見せられているのか。

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人形と化した国の物語 ナイト @24685

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