氏神様と摩天楼ちゃん

@KATIDOKIMASAYUME

第0話 選ばれた者に捧げる最後の希望

「……え……?」

 __この街の人々は深い眠りについてただろう。時計は午前3時を指し部屋には一定のリズムでなり続ける秒針の音だけがひたすら鳴り響いてた。

 何もない静かな夜。人々も私も朝日が昇るのをただ待っていた。


 __…だが,その夜は「明けることはなかった」。

 黒一色に染め上げられてた空は太陽が登っていないにも関わらず青く、次第に青をも通り越し白く染まっていった。色が変わっていく様は私の心に妙な好奇心と微かな恐怖感を覚えさせ、目の方はゆっくりと空に吸い込まれていくような感覚が走った。


 __変わりゆく空を見つめていた私はベットから離れ部屋の窓をゆっくりと開けてベランダに出た。冬の冷たい夜に空気に一瞬目を細めるが私は再び空を見上げる。

 

 __睡魔と、高揚感、それと恐怖。私は感情がぐちゃぐちゃになり呆然と空を見上げる。そして完全に空が白く染まったその時、私から見て正面の空に大きな人影のような影……いや、あれは姿……といった方が正確かもしれない。


 __その姿は空の大半を埋め尽くすほど巨大で長い髪をふわふわと揺らした女の姿をしていた。その姿の後ろにはこの姿より巨大な円がゆっくりと回転している。


 __そういえば、これを見た時から冬の寒さは感じなくなっていた。むしろ空気は温かく私を包みこむようなどこか心が安堵するような暖かさだったのを今でも覚えている。


 __そして私は悟った。



「神……?」




 悟り、口から言葉が漏れていた。


 その後のことは、あまりよく覚えていない。


 激しい光がゆっくりとこの街を……世界を包み込んだ所までは記憶に刻まれていたけれど、それ以外は何も。


 ただ、心のどこかでこの世界は終わったのだと、そう解釈して、納得していた。





 

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