第4話 魔法使いとの契約
「いいから食べなさい。話はそれからだ」
言われ、セイラは戸惑いながらもクッキーを食べる。胡桃が入ってるようで、美味しい。紅茶も温かくて、ホッとする味だった。
目の前の男を見る。北の森に、なんでも願いを叶えてくれる魔法使いがいるとは、風の噂で聞いた事があった。ただし、彼が言うものを願いの代わりに差し出さないといけなかったはずだ。自分はまだ、何も差し出していない。
「君たちは、魔族の森には住んでなかったようだね」
トキの言葉にハッとして、慌てて言葉を紡ぐ。
「……私が混血だから、魔族は人間の血を嫌うから……」
「なるほど。だから2人で人間のフリをして暮らしていた。しかしそれが国にバレて、捕らえられたと」
その通りだ。この国に、魔族が住む事は許されていない。
私と姉さんは、今までも幾多の国を旅してきた。そうして少しでも怪しまれそうになったら、逃げてきたのだ。
「あの、私は、何を渡せばよいでしょうか」
尋ねると、トキは真っ直ぐにこちらを見てきた。綺麗な瞳だ。青く、どこまでも透き通るような。
「ああ。悪いが君の願いを叶える時に、交換条件は既に組み込んでる」
「構いません。私が差し出せるものなら、なんでも差し出します」
私が意識を失ってるうちに姉を助けてくれていなかったら、今頃死んでいたかもしれない。
「姉を助ける交換条件は、君だ」
「はい、私ですね。……はい?」
勢いよく返事したあとで、思わず聞き返す。
今、なんと言ったか?
「セイラ。君は私に仕えるんだ」
恐ろしくも優しい貴方に、願い事を 紺青くじら @kugiran
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。恐ろしくも優しい貴方に、願い事をの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます