水平線の向こう側
水平線の向こう側
作者 色葉みと
https://kakuyomu.jp/works/16818093083613438822
友達のいないアリスが出会ったリリは水平線の向こう側へ行くと言い残して未来へ帰った。未来でも記憶されるような学者になることを決意。後世、親友のリリ宛ての手紙が発見されたニュースがリリに届く話。
SF。
時を超えた二人の結びつきが素敵。
主人公はアリストテレス。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。恋愛ものなので、出会い→深め合い→不安→トラブル→ライバル→別れ→結末の順に書かれている。
男性神話の中心軌道に沿って書かれている。
主人公のアリスは、ある日リリという少女と出会う。リリはアリスに友達がいないことを指摘し、謝罪するが、二人はすぐに仲良くなる。リリはしばしばトラブルを起こし、アリスが助けていく。
ある日、リリはアリスに「もうここには来れない」と告げる。リリは「水平線の向こう側」に行くと言い、アリスと別れる。アリスはリリに会うために水平線の向こう側に行く方法を探し始める。
数年後、アリスは月食を見て、この世界が球体であることに気づく。リリの言葉が嘘だったことを理解し、リリがいなくなった理由を考える。
さらに数年後、アリスの元にリリからの手紙が届く。リリは未来から来たことを告白し、もう二度と会えないことを伝える。アリスはリリに感謝し、未来でも記憶されるような学者になることを決意する。
✕✕✕✕年後、アリストテレスが書いた手紙が発見され、親友のリリオン・テレスという人物に宛てられていた。そのニュースを見た黒髪の少女は涙を流し、「届いてるよ、アリス」と呟く。
三つの構造で書かれている。
序盤はアリスとリリの出会いと友情の始まり。
中盤はリリの突然の別れとアリスの探求。
終盤はリリの手紙とアリスの決意、そして未来での再会。
きれいな人の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が、どう関わり、どのような結末に至るのか気になる。
主人公がみた相手の印象からの書き出し。
遠景で綺麗な人、近景で、どのような容姿かを説明し、心情で見惚れていたと語る。
主人公は見惚れて、一目惚れのような感じ。
そんな人間味ある様子に共感するも、「まあそれは彼女の放った一言によって灰燼かいじんと化すが」と続く。
「君、友達いないの……?」
「も、文句あるかっ!」
友達はいないらしい。一人なのだろう。可哀想に思えて共感を抱く。二人の出会いが書かれている。
彼女の容姿はわかるが、状況がまったくわからない。
心情描写が多いけど、情景描写が少ない。
ツボの中になにかが入っていると持って、覗き込んで落ちてしまい、抜けられなくなっているリリ。なかなかユニーク。
この辺りは、非常に良く描かれている。
長い文ではなく、数行で改行。句読点を用いて一文も長くなく、短文と長文を組み合わせてテンポ良く、感情を揺さぶってくる。ときに口語的。シンプルで読みやすい。登場人物の性格がわかるような会話が多く、キャラクターの感情が伝わりやすい。
キャラクターの内面描写が豊富なのが特徴で、動きを示しつつ、会話を通じてキャラクターの関係性が深まっていく。アリスとリリの関係が温かく、読者に感情移入させるところがいい。
時間の経過が自然に描かれていて、友情と時間を超えた絆が感動的。リリが未来から来たという設定が新鮮で興味深い。
五感の描写として、視覚ではリリの美しい黒髪や瞳の描写が印象的。
触覚はリリを抱きかかえた時の柔らかさや体温の描写がリアル。
聴覚は会話のテンポが良く、キャラクターの声が聞こえてくるようで楽しい。
主人公のアリスの弱みは、友達がいないこと。
そこにリリと出会いがあり、成長する。
そもそも、どうしてリリは未来からアリスに会いに来たのかしらん。世界は平らではなく球体だと伝えたかったわけでもなさそう。
どうやって手紙を届けたのか。
未来から来ていたので、それくらいはできるのかもしれない。
タイムトラベルの目的はなにか。アリスと出会ったのは偶然なのか。アリスの内面の葛藤や成長がもう少し詳しく描かれていると、深みが増すかもしれない。
未来からきたことが書かれたリリから手紙をもらったから、手紙を残そうとしたのだろう。このやりとりがよかった。
読後。
タイトルを読みながら、二人の関係をうまく表していると思った。
時間の水平線の向こう側からきたリリに届くよう、手紙を残す。アリスとリリの友情に感動し、時間を超えた絆が素敵。
手紙にはなんと書いてあったのだろう。
ちなみに、アリストテレスとは、紀元前に生きたギリシャの大哲学者のことかしらん。リリはどうして彼に会いにタイムトラベルをしたのだろう。
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