第7話 私はイエスキリストと共に人生チェンジ
中島氏は答えた。
「キリストとは、救い主という意味。イエスは肯定、誰でも肯定するという意味だよ。だから、どんな罪を犯した人でも、イエスと共に人生をやり直すことができるんだ。反社から有名牧師になった人もいるだろう」
私はうなづいた。中島氏はそれに答えるように
「今度、理沙ちゃんの書いた小説をぜひ、見せてほしいな」
もしかして、中島氏は私が女性受刑者だった過去を知っているんだろうか?
「それでは、お言葉に甘えて私の過去の体験を書いた壮絶小説を執筆してみますね」
私は、十冊くらい本を読んで文章を勉強した後、自らの刑務所体験を執筆した。
もしかしてこれを機に、中島氏は私から去っていくかもしれない。
たとえそうだとしても、私の刑務所体験が何かの、そして誰かの役にたつときが訪れる筈だ。私は半分、人助けをしているような気分だった。
一週間後、中島氏から思いがけないサプライズを頂いた。
なんと、私の書いた私小説をフィクション仕立てで出版することになったのだ。
「理沙ちゃんの体験を読んで、勇気づけられた人も、また反対に、いくら恋人もどきに誘われても、悪事だけには手を染めないでおこうと決心する人もいるだろう。
理沙ちゃんは調理師として立派に活躍しているし、僕の出版社HONZUKIにも、理沙ちゃんの若いポップな文体が、現代風だと言ってくれる人もいるくらいなんだ。
もちろん、理沙ちゃんの本名や個人情報は出さないよ」
しかし、私は聖書の御言葉通り
「隠していたものは暴露するときが訪れ、覆いをかけられたものは、取り外されるときが訪れる」(聖書)
確かに自分は秘密を埋めたつもりでも、ここ掘れワンワンとばかり、必ず掘り返されるときが訪れる。
中島氏の力を借り、私は電子書籍で発売されることになった。
著者名 更紗「リピート人生、これからが人生勝負レディー」のタイトルであるが、早速購入してくれる人もいるようである。
中島氏の話によると、なんと私が調理師学校で恐喝まがいのことをした昌子姉さんが、コメント第一号だったという。
「神は愛です。これからは神と共に生きて下さい」
クリスチャン昌子姉さんは、私のことを陰ながらずっと祈っていてくれたという。
これで私はようやく、枕を高くして安眠できそうである。
私はあの日と同じ 夜の砂浜に私は座っていた。
波は私を、漆黒の海へと招いている。
このまま、波のまにまに沈んでいくことができたらどんなにかラクだろう。
しかし 今の私は違う。
地平線から太陽が昇るまで 私はこれからの人生を生きなければならない
神と共に生きる限り、朝焼けに包まれた日が訪れるはず
もう私は一人じゃない。神に向かって生きる私は幸せ者だ
ハレルヤ
完結
獄中だからこそ夢をかなえるチャンス すどう零 @kisamatuma
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