第27話 広場で開催されていた、ケンカ自慢のイベントにコッソリ参加してみた。

観客がザワザワとして声を掛けてきた。


 

「おいおい・・・あんた正気か?もう、あんたで挑戦者は5人目だぞ?未だにアイツに攻撃を当てられた者は居ないし、あんたよりゴツイ人がボコボコにされて病院に運ばれてるぞ」


 

ほぉ~マジか楽しみじゃん!


 

「なんだ。次はガキか・・・死んでも文句は言うなよ!あはは・・・死んだら文句も言えねぇな!」


「金は払ったんだから、ちゃんと相手をしてくれよ」


「分かった。分かった。ちゃんと死なない程度にボコボコにしてやるよ」


 

いや~話が早くて助かるわ。うるさいヤツも居ないしな。でもコイツは一般人より強いかもしれないけど・・・格闘家じゃ無いんだよな。そこが不満だな。


 

「さ。早く相手してくれよ」


「何だかお前は金目当てじゃ無さそうだな?何が目的だ?」


「あ~自分の強さを確かめたいだけだ」


「バカか?そんな体格で俺を倒す気かと思ったぞ。力試しか?付き合ってやるぞ?攻撃の方か?防御の方か?」


「あ、気にせずに普通にボコボコにしてくれ」


「・・・知らんぞ?」


 

そう言うと足を踏み出して豪快に拳を打ち込んで来るが、軽く避けるのを何度も繰り返した。


 

「はぁ・・・はぁ・・・避けてばかりだと勝負にならないぞ」


「そうだな・・・避けるのも飽きたしな」


 

コイツと話してみると良い奴っぽいし・・・ボコボコにするのは可哀想だな。

 

再び豪快な拳を打って来たので屈んで避けると、バランスを崩し、打ち込んできた腕を右手で掴み引き寄せて、軽く左の拳で脇腹に打ち込んだ。

 

うわ。何となく動いたけど、これって肝臓を確実に当たってるよなぁ・・・痛そ・・・。これが格闘家のレベルマックスか。手加減して、これか。


 

ゴツイ男が激痛で気絶して倒れると大歓声が起こり、観客に囲まれて絶賛され司会をしていた人から賞金を渡された。賞金目当てじゃないので、そこまで嬉しくないけど貰える物は貰っておこう。


 

それよりゴツイ男の腹部に手を翳して治癒魔法で治癒させると目を覚まし・・・気不味そうに起き上がりお礼を言ってくると更に大歓声が上がった。


 

「おおぉ!兄ちゃん治癒魔法も使えるのかい!すげぇな!」


 

興奮した観客が押し寄せてくるとゴツイ男が両手を横に広げてそれを制してくれた。


 

「それ以上近づくな!」


「負けた奴は黙ってろ!邪魔だぞ!」


「俺は負けたが、お前らよりは遥かに強いぞ?試してみるか?」


 

ゴツイ男がそう言うと観客が黙り従った。そりゃ観客よりゴツイ男がボコボコにされたのを目の前で見ていたんだろうから従うだろうな。

 

それに比べて俺は、ボコボコにしていないし・・・あっさりと一撃で倒したから実感が無いのと、なにより体格が一般人の兄ちゃんと同じだから話し掛けやすいんだろうな。


 

「あ、助かったわ。ありがとな」


「お礼を言うのは、俺の方だ・・・お前、強いな。何者だ?攻撃を躱すのもスゴイし・・・的確な急所を打ってきたな」


「あ、まぐれだって!」


「・・・まあ・・・そういう事にしておくか。俺も修行のし直しだな」


「ああ。頑張れよ」


 

無言で頷くと、司会者と一緒に人混みに紛れていなくなった。


さ~て用事も済んだし帰るか。体を動かしてスッキリした~


 

王城の城壁を飛び越えて、敷地内で元の冒険者の格好に着替えた、と言っても所持している服をイメージすると自動で服装が替わっている。

 

堂々と王城の入口から入ろうとするが・・・俺一人だと怪しまれて入れない・・・


 

「貴様、何者だ!怪しいぞ・・・どうやって敷地内に侵入した!?」


 

何なんだよ・・・さっきから何者だ?って、普通の兄ちゃんだろ?そんなに俺って怪しいのか?


 

「3階に連れが居てさ、そこに行きたいんだけど」


「3階は王家の居住スペースだぞ?お前のようなヤツが入れるわけ無いだろ!」


「そう言われてもな~そこから出てきて散歩して戻ってきただけだって」


「出ていくお前を見ていないぞ!」


「だったら偉い人を呼んでくれ」


「そんな事で呼べるわけが無いだろ!そんな事で呼んだら俺が怒られるだろ!」


 

ヤバ・・・あのお偉いさんの名前も知らないわ・・・そりゃ呼べないよな。偉い人か・・・あ!ミーニャ!


 

「じゃあ・・・ミーニャを呼んでくれ」


「ミーニャって誰だ?」


「ミーニャを知らないのか?お前こそ大丈夫か?」


 

王女を知らないのか?再教育だなコイツ。


 

「まさか・・・王女様の事を言っているのか?」


「他に誰が居るんだよ」


「不敬だぞ!気軽にミーニャ王女の名を出すとは・・・」


 

王城の入口で騒いでいたら当然、兵士が集まってきた。


 

「おい・・・あの人って・・・さっき俺達を助けてくれた人じゃないか?」


「ああ・・・あの服装は見覚えがあるぞ!」


「おい!その人は大臣と一緒に居た人だぞ!」


 

お。俺を知っている人が居たか、助かったわ。警備兵が大臣と聞いて顔色が悪くなった。


 

「これは・・・失礼いたしました・・・」


「まあ、怪しいヤツがいたら阻止をするのが仕事だから気にするなよ」


「有難う御座います」


「それに、お前らにも助けられたよ。助かったわ」


 

警備兵に声を掛けてくれた兵士達にお礼を言うと、逆にお礼を言われた。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

給料の大半を課金に使い続けヒキニートの友人とパーティ組んでいたらゲームの世界に転生して最強になっていた。 みみっく @mimikku666

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ