ブラッティーシャングリラ~異世界転生したら殺し屋になりました

水無月のん

第1話 異世界にて

ただひとつ考えるのは、己がもう少しだけ、もう少しだけ強い人間であれば、「強い」というものは、肉体的でも、精神的でも、強さを神が与えてくれるなら、それはなんでもよかったのだ。

「死ねよwお前生きてる価値ねーから」

「同感wさっさと死ね」

授業中、昼休憩中、トイレに行っている最中だって、いじめられている。

先生すら俺のことを助けてくれない、両親だって何もしてくれない。

俺は、いつでも一人だ。


ある日、俺をこの日常に繋いでいた、細く細く赤い一本の糸がぷつり、と千切れた。


もう、終わりにしよう。


生きることに疲れてしまった俺は自らの命を絶った。


○ ● ◯ ●


「ああ、これでよかったんだ」


俺が次にいたのは、白いシーツが敷かれたベッドの上だった。

見ると右腕が欠損…している。


「起きたか」

「誰ですか」


少しばかり騒々しい、体を起こすと、女性が銃の整備をしていた。

人形のような白い肌と長い金髪に、女性でありながらのなかなか長身。

そしてその長身を覆い隠すような真っ黒なコート。


「名前は、また後で言う。それよりまずはここから逃げ出すぞ」

「逃げ出すって、どうしてですか」


すると彼女は腰から拳銃を取り出し、薬室を確認する。

ジャキっと、香ばしい音が聞こえる。


「何かあったときの護身用、言っておくが今は協力関係だ」


そういうと彼女はそれを俺に差し出す、当たり前だが銃の経験はない。


「あの!質問に答えてください!あなたは何者で!ここは…」

「黙れ、言っておく、お前の腕を切断したのは私。わかったら黙ってついてこい」


そうして俺は女性に言われるがまま、銃を左手で構え、病室を抜け出した。


「なんだこれ」


病室を出るとすぐに、血だらけな人間の屍がそこら中に散らばっていた。

白い壁や床に紅色の飛沫が飛んでいる。

不快なにおいを感じながらも、出口を求めひたすら彼女についていく。

第一にここがどこの国とか、どこの世界とか、なにも分からない。

でもひとつわかることは、以前の俺とはこの世界の俺は違うってこと。


「静かに」

「…?」


柱の陰に彼女は隠れる。

俺も彼女の後ろに隠れる。

柱の向こうには、ライフル銃を持った男が3人、そしてそこを通らないと、ここからは出られないらしい。


「いいか?3,2,1でフラッシュを焚く、タイミングを合わせて走り抜けるぞ」

「わかった」


そして彼女はポケットからフラッシュグレネードを取り出すと、安全ピンを抜いてやつらに向けて投げる。


「んあ?うわっ!」

「眩しっ!」

「くっ!」


そして彼女は手で先導する。

「今だ!」


俺は彼女についていく。

そしてそのまま階段を降り、外に出る。


「な…!?」

「そうだ、覚えてないだろうが」


外にはたくさんの屍と銃が転がり、まさしくそれはこの世のものとは思えないような荒廃した場所だった。

彼女は外にいた見張り二人をライフル銃で射殺する。冷酷に。


「ここは戦場、そしてさっきの男たちはお前にとって、敵兵。私は彼らのスパイ。お前は捕虜として捉えられ、私はその見張りを任されてた」


そう、ここは病院は病院でも野戦病院だったのだ。

そして俺はここに捕虜として捉えられ、彼女はスパイ。

もう、わからない。


「信用できるわけないですよ…俺をこれからどうするつもりなんですか…?」

「ボスのところに連れていく、わたしの本当の任務はこれ」


俺は、拳銃を自らの頭に構え、引き金に指をかけた。

一度死んでしまった身、もう死なんて怖くない。


「もう俺はいつでも死ぬ準備…できてますから」

「できっこない、だってお前は私に操られてる」

彼女が少し笑う。

「俺が死ねば、あなたは困りますよね!?」


できっこない?なんでそう言い切れるんだよ!

俺はもう一度死んでる、だからあと一回くらい死ぬことだって。


【銃を下せ】


彼女が一言放つ、そしてその一言によって俺の意思とは裏腹に、拳銃が手から落ちる。俺の体…だよな?


「お前の肉体は私に操られてる、だからどんなことをしても無駄。視覚も共有している。だから、黙ってついてこい」


俺の体は無理やり彼女に操作されているのだ。






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ブラッティーシャングリラ~異世界転生したら殺し屋になりました 水無月のん @nonkundes

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