第6話マツルと言う男

王の左横が、側近、マツルの定位置。


何故なら王は右利きで剣の腕も国内三本指に入る腕利き故に、積極的に賊を討ち取るなど、自らの手も汚す事を厭わないが動けば身体に隙が出来る。


兄弟のように育った中だからこそ、王もまた、マツルに背中を預ける。マツルも乳兄弟時からの気安さでいざと言う時は王に預ける。それは共に師に剣技を習いはじめた5歳からずっと絆が有る二人だから出来る戦い方。そして腕も競い合い磨いて腕は互角。


お互い考え方や剣術の癖を知り尽くしお互いの背を預け合える仲だからこそ、隣に並んで立てるほど側に控えられるのだが。


緊急だと、陰から出ず守るものが、こちらから呼ばずとも知らせを持ち、王やマツル以外の人が居る場で文を渡す事なんて初めての事。曲者などが来ないか、剣塚に指を添え警戒の視線で王を見つめる。



眼を左右に動かして勢いよく読み始める王。

その眼が内容を読み進める毎に見開かれ、これ以上開けられまいと言うところでノックの音。


呼ばれてまいりました、国王様

入って宜しいでしょうか。

入れと言う声に入り口の護衛が扉を開けて

男達を室内へ。


また入れ替わりに出る、室内の護衛当番だった男に王は直接何かを話し、男は敬礼を返し退出。


その他不審な出入り、人影、氣配のない事、を確認、また扉外護衛の二人も、中に彼らの上官が居る事、話を聴く人を減らす為休憩に行かせる指示を王自ら出す。

来た近衛隊長たちは、たちまち背筋を伸ばし腕と胴体がくっついて固まってしまったかのようなお辞儀をした。


そう、大抵は、

王の意志を事前に聴いたのをマツル彼らにつたえるのだが、緊急でマツル自身も内容はまだ。どうするかと言う顔のマツルに表情とひと頷きで返した。それだけで充分。人の耳目を避ける人払い後、そして何人もに話すなら同時に、と言うのが王の今の考えだと。

ならば、マツルは待つ。


話が語られるのを。


全て人払いされたところで。

先程の紙束がマツルに手渡された。

「順番に、呼んだら隣に渡して皆それをまずは読むように。話はその後だ」



一様に、隣や王、集まっているもの同士が顔を伺うもこの場にこの事について知るものはなく、王の前にて、近しいもの同士で囁きを交わすことも出来ぬ。


「全員、読んだな。つまり、国の危機が迫っているのだ」


「恐れながら王様、娘が夢を見たとか、巫女が見たとか言って、到底信じられませぬ」

口火は、近衛の第三隊長アズマ。

齢25にして、一軍隊を任されている腕は高いがまだ若くこの場でいちばんの若輩者。

他隊長らが咎める視線を送り、第一隊長のシラベはと拳を固めるが王の前にて振り下ろさず、不敬だぞと言うに止め、また王に頭を下げて詫びる。


「部下が申し訳ございません。王様」


「よい、素直に知らないとわかればもう少し説明を加えよう、マツル、姫様について説明を」


王に一礼すると。

マツルは国の地図と、絵本を一冊書棚からそして、姫様の役割の一つ、能力で国内外の危機を知り国を守る事について話をする。


「この国の表の武力が近衛の皆様、表の交渉者が私達政(まつりごと)にかかわるものならば、

陰から守る、者達がいる事はご存知ですかな?アズマ殿、また、他の皆様も。

そう、それが、赤子時に力を顕現し現れた子

ら、その子らが集められその中で見えない場所を見る事が出来る、見えないものから場所を守る力があるものを一人姫様として役目を与え、それにより、この国は小さく周りが大国に囲まれ、侵略にあった歴史もありますがと、難事を乗り越える事が出来ている、と言います。そう、初代の姫様とは——」


そこで絵本をアズマに見せる。

「みんなが子供の時読んだでしょう?シラハ姫物語」


「いやいや、だってその姫様天から降りて来て、王子と出会いと言う始まりでしょ確か、到底実話には思えませんが」


「初代が何処の人かはわかりません。ただし、その頃から続く、伝統かつ確かな国の守りとして、代々の姫様と王家は手を取り守る関係なのです、これを。」


「アランシワの乱ってこれ、俺のばあちゃんが5歳の時に遭ったっていうこの国に内乱?」


「そうです。学校の授業で皆習う、もうだいぶ昔のはなしになりつつある話ではありますが、その時の姫様から届いた書簡がこちら。

全てはお見せ出来ませんが、ほら。


時系列の確認をしたければこちら、私の私物だすが、この国の歴史書を。」


日時、押された印。


「確かばあちゃん、起きてすぐ騒ぎは鎮まったんだけど、主犯がなかなか見つからず、でその後はわからないままって言っていたけどちゃんと捕らえられていたのか」


事件前、事件中、事件後の三書簡。

王とのやりとり警戒計画、など。

最後の捕縛は姫様の目や、力を持つ者達が高位の立場の人間故に秘密裏かつ力で捕まえた、その自白計画から見て、姫様の書簡は明らかに日が計画より早い事。


機密文章なのでこれ以上は見せられないが、ただの手紙では無いと、扱うものだと分かって頂けたかな、アヅマ殿そして皆様も。

さて、王様、説明は以上です。」


そう話をマツルが閉じる。

皆が王を見る中。

一人、内心文書をアヅマのために見せたが故に自らが見る機会を逃したために歯軋りを抑えた男がいたのだが。誰も氣付かず。


話は不穏分子を含んだまま。


王が再び指示を出すために口を開いた。




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少女は機運を読解く(ニチカはきうんをよみほどく) STORY TELLER 月巳(〜202 @Tsukimi8taiyou

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