第19話
「そうだったな」
彼の笑顔に自然と笑みが零れる。
「朔矢、普通そこで誓いのキスだろう」
「和沙先生にキスしないのか?」
気付けばA組の生徒全員が集まっていた。
「な、何でお前ら知ってるんだ!」
狼狽え慌てまくった。汗が額から噴き出す。
「分かりやすいんだよ。普通誰だって気が付くよ」
「朔矢と目が合うだけで、耳まで真っ赤にして。見てるこっちが恥ずかしいよ」
「毎日愛妻弁当で、朔矢が羨ましい!」
「はぁ!? 何でそれまで知ってるんだ」
唖然となった。朔矢との事は内緒にしていたつもりだったのに。あっさりばれるとは。恐るべしA組。
「前いた担任をチクったのは、他校の生徒だよ。焼きもちを妬いてネットに晒したんだ。俺らは二人を何としてでも守ろうとしたけど無理だった」
一歩前に出たのは学級委員長の関口。
「学年主任や副担ははなから俺たちを疑って、話しも聞いてくれなかった。だから俺らボイコットしたんだ。朔矢の事だってそう見て見ぬ振りで。和沙先生は彼らと違ってちゃんと話しを聞いてくれたし、朔也を学校に来れるようにしてくれた。だからこそ、二人には誰よりも幸せになって欲しかった」
「お前ら……」
教え子たちの思いを初めて打ち明けられ、胸がじんと熱くなった。泣きそうになり手の甲で涙を拭うと、朔矢の顔がゆっくりと近付いて来て、柔らかな唇が静かに頬に触れてきた。
恋を運ぶ花に恋して 彩矢 @nanamori-aya
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