第15話 消えた「しまうま」

 『ミカン・ラン』は貸切パーティの当日、お店では30人分の料理の仕込み、テーブルのセッティング、店内のインテリアの飾りつけで大忙しだった。

 料理の材料一覧を見たポピィが首をひねった。

「ミモリシェフ。今日のメイン料理って、しまうまの肉の唐揚げですよね?」

「そうだけど?」

「なぜ、しまうま…」

「おいしいからよ」

「そうではなく、しまうまって、どこにあります?」

「そこら辺に、ない?」

「ありません」

「マルアちゃーん、しまうま、そこにあるー?」

少し離れたところにるマルアにミモリが声をかける。

「いいえー、ないですよー、ミモリシェフー」

「あら、どこにいったのかしら、しまうま」

「ないですよね?」

「なら仕方ない、ポピィくん、しまうま買ってきて」

「はい?」

「今から買ってくれば、間に合うと思うの」

「ぼくがですか? ミモリシェフが行った方がいいのでは…」

「私は手が離せないのよ。じゃ、お願いね」

 ミモリは料理の仕込みをするために、厨房の奥に行ってしまった。

 ポピィはため息をついて、仕方なく、しまうまを買いに近くにある大きな市場に向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る