弟が亡くなり未亡人になった義妹に俺が出来ること
春風秋雄
まだ28歳の弟が亡くなった
まさか、こんな年で弟の知也の葬儀に出ることになるとは思いもしなかった。知也はまだ28歳だったというのに。知也の奥さんの史佳(ふみか)さんは、目を真っ赤にして弔問客に挨拶をしている。知也の子供を宿したお腹が膨らんでいるのを見ると、余計に不憫でならなかった。俺に出来ることがあれば、何かしてあげたいと思うが、果たして俺にできることなどあるのだろうか。
俺の名前は神谷知和(かみや ともかず)。知也とは3歳違いの31歳だ。俺の家は親父が不動産屋を経営しており、俺は家業を継ぐために宅地建物取引士と土地家屋調査士の資格をとり、今は家業を手伝っている。俺は女性に縁がなく、いまだに独身だ。弟の知也は高校を卒業すると何を思ったか、和菓子職人になると言って、製菓の専門学校へ進んで、製菓衛生師の資格をとり、隣町の老舗製菓店『芳味堂(ほうみどう)』に就職した。知也の菓子作りの腕は良かったようで、店主に気に入られ、2年前に知也より一つ年上の一人娘の史佳さんの婿養子となり、跡継ぎとして期待されていた。半年ほど前に実家に遊びにきて、やっと子供ができたと喜んでいたのに、配達の帰りに交差点で右折する知也の車に直進のトラックがぶつかってきて、知也はあっけなく帰らぬ人となった。
うちの両親も相当ショックを受けていたが、それ以上に芳味堂の大将は跡取りがいなくなったショックが大きく、しばらく寝込んでいたそうだ。やっと仕事に復帰しても、以前のような覇気はなく、菓子作りは従業員に任せっきりで、ほとんど仕事にならなかったそうだ。
相談があると言って史佳さんが、うちに来たのは、長男の知芳(ともよし)くんが産まれて半年くらい経った頃だ。知也がいなくなって1年になる。俺と親父はてっきり一周忌の相談だと思っていた。初孫の知芳くんを抱いた親父が「知也の一周忌のことか?」と聞くと、史佳さんは言いにくそうにしている。
「どうしたんだ?遠慮なく言ってくれればいいよ」
俺が促すと、やっと史佳さんは口を開いた。
「200万円ばかり、お金を貸してもらえないでしょうか」
200万円?いったいどうしたのだ?俺と親父がそう思っていると、史佳さんが事情を話しだした。
「知也さんがいなくなってから、父は仕事に身が入らなくなって、従業員に仕事を任せっぱなしにしていたら、お客さんはどんどん離れてしまって、売り上げがあがらないので仕入れ代と従業員への給与が払えず、何回か銀行から借り入れもしたのですが、さすがにもう銀行からは借りることができなくて、それで今月も従業員の給与の手当てができないんです」
なんということだ。老舗の和菓子屋が倒産の危機になっているなんて。
「それで、今回200万円お貸しして、今月は何とかなるかもしれませんが、今後はどうなさるつもりなのですか?」
俺が聞くと、史佳さんは少し困った顔をした。
「そりゃあ、大将に頑張ってもらうしかないだろ」
親父が横からそう言った。
「そうなんですけどね」
「一度、俺から言ってみようか?」
親父がそう言った。
「私が言っても何も変わらないので、お義父さんから言ってもらえると助かります」
「わかった。今度そっちに行って大将と話してみるよ。知和、金庫から200万円出してあげなさい」
史佳さんが深く頭をさげた。
親父と二人で大将に発破をかけに芳味堂へ行った。大将は知也のためにも、知芳が大きくなって職人になるまで頑張ると言ってくれた。知芳くんが20歳になるころは、大将は80歳だ。本当にそれぐらいまで頑張ってほしい。
その日を機会に、俺と親父は休みの日になると、ちょくちょく芳味堂へ行くようになった。親父は孫を抱きたいというのが本音で、行くたびに何かおもちゃを買っていった。大将はあれ以来、吹っ切れたようで、菓子作りにも精をだしているようだ。これで芳味堂も大丈夫だろうと思っていたが、史佳さんの話では離れたお客さんはなかなか戻ってこないようで、客足はあまり良くないということだった。200万円の返済はないまま、その後も50万円、30万円と、3~4か月に1回くらいの割合で、史佳さんが大将には内緒でうちにお金を借りにきた。史佳さんはお金を借りにくるときは、必ず知芳くんを連れてくるので、親父も孫の顔を見ると嫌とは言えなかった。
ある日、親父が俺に聞いてきた。
「知和、お前不動産屋をやめて、いまから和菓子職人になる気はないか?」
「いきなり何を言い出すんだよ」
「いや、お前が和菓子職人になれば芳味堂が何とかなるんじゃないかと思ってね。せめて知芳が成長して職人になるまで芳味堂をもたせてやりたいじゃないか。それに史佳さんは綺麗な人だし、お前もまんざらではないかと思ってね」
「何言ってるんだよ。史佳さんは知也の奥さんだよ。そんなこと言ったら、天国で知也が怒るよ」
「そうかなぁ」
「それに俺は知也と違って手先は不器用だから、和菓子職人は無理だよ」
「そうか。まあ、それなら仕方ないか」
親父はあっさりと引き下がった。
「あ、それから、お前そろそろ会社の取引とは別に、自分で物件を扱ってみろ」
「自分で物件を?」
「そうだ。とりあえずお前に会社から2000万円貸し付ける。それで土地なりマンションなり、自分がこれだと思う物件を買い付けて転売してみろ。損したらその分は給与から少しずつ会社に返済しろ。儲かったら自分のお金にすればいい。将来この会社を経営するときの勉強になるから」
親父の会社が扱う物件は数千万から億単位まである。将来俺がこの会社を継ぐようになれば、そういった取引を自分の才覚でやらなければならない。だから2000万円くらいの物件から勉強して、将来は大きな仕事が出来るように物件を見る目を養えと言っているのだ。初めての単独の仕事に俺は武者震いする思いだった。
知芳くんは健やかに育っていた。歩くようになると、親父もお袋も可愛くてしょうがないといった感じで、史佳さんが知芳くんを連れてくると、大歓迎だった。史佳さんは借りたお金を少しずつ返そうと、5万円とか3万円とか、その都度気持ちだけ持って来る。しかし、数か月すると、また50万円貸して欲しいと頼んでくるので、結局借金は増える一方だった。
知芳くんは3歳になる頃には、うちに来ると「ジージ、バーバ」と懐いてくるので、親父もお袋もメロメロだった。ある日、親父とお袋が知芳くんを連れて買い物に出かけたので、家には俺と史佳さんの二人きりになった。
「知芳君、大きくなったね」
「ええ。でもまだ3歳ですから、これからが長いです」
「再婚とかは考えないの?」
史佳さんはジッと俺の顔を見て黙り込んだ。
「知也のことは気にする必要はないですよ。あいつだって、知芳君のことを考えればそうするべきだと言うと思いますから」
「再婚するとすれば、相手は和菓子が作れる職人さんということになるのですが、うちの職人さんは既婚者ばかりですし、これから若い人を雇っても、私がもう33歳ですから、釣り合わないです。そうすると、どこからか独身でそれなりに釣り合う年齢の職人さんを婿養子に迎えるしかないのですが、なかなかそんな人はいないですよ」
そうか、確かに史佳さんの年齢に合った独身の職人さんを探すのは容易ではないかもしれない。
「知和さんはどうなのですか?ご結婚はされないのですか?」
「まったく女性に縁がないので、このまま生涯独身かもしれませんね」
俺が笑いながらそう言うと、史佳さんは意外そうな顔をした。
「知和さんは女性から見ても素敵な男性ですし、仕事も順調ですし、女性が放っておかないと思いますけど」
「そうですか?そんなこと言ってくれるのは史佳さんだけですよ。だったら、今から和菓子作りの修行をして、史佳さんの婿養子に立候補しようかな」
俺が笑いながら冗談を言うと、史佳さんは真顔で俺を見た。
「そうなれば、一番良いのですけどね」
史佳さんがつぶやくようにそう言ったので、俺はドキッとした。
史佳さんが知芳君を連れて来るのは、うちの会社が休みの日なので、親父とお袋は知芳くんを外に連れ出そうとする。ショッピングモールに買い物に出かけることもあるし、5人で遊園地へ行くこともある。外で一緒にランチを食べたり、夕食まで食べることもある。しかし、食事をする場合は知芳君の食べられるものが優先されるので、どうしてもお子様ランチなどがある店になってしまう。
「知和、たまには史佳さんと二人で寿司でも食べに行ってこい。知芳くんは俺たちがめんどうみておくから」
親父がそう言うと史佳さんが慌てて言った。
「そんな、私もみなさんと一緒でいいですよ」
「史佳さんは家のことや育児のことで精一杯で、自分のことは後回しになっているだろ?こんな時くらい羽根を伸ばしなさい」
親父に押し切られる形で、俺たちは寿司屋へ行った。二人きりで食事をするのは初めてのことだった。
「回ってないお寿司を食べるのって、何年ぶりだろう」
「言ってくれれば、いつでも連れてきますよ」
「知和さんはいつも女性を連れて来ているんじゃないですか?」
「女性と二人きりで来るのは初めてですね。いつも取引先や社員とです」
「初めて連れて来る女性が私で良かったのかしら?」
「史佳さんであれば、申し分ないですよ」
「それは、亡くなった弟の妻だからですか?」
俺は思わず史佳さんを見た。史佳さんは意味ありげに俺を見ていた。
「知也の代わりに史佳さんに何かしてあげようという気持ちはないですよ。純粋に一人の女性としてみて、史佳さんと一緒に食事をするのは楽しいです」
「うれしいこと言ってくれますね。私もまだ捨てたもんじゃないのかな」
「史佳さんは綺麗ですし、まだ若いのだから、知芳君のお母さんや芳味堂の女将さんに収まるのではなく、まだまだ一人の女性として自分の幸せも考えれば良いと思いますよ」
「ありがとう」
知芳君は俺の家で待っているので、寿司屋を出たあと俺たちはタクシーに乗った。史佳さんは少しのお酒に酔ったのか、ずっと俺の肩に頭を預けていた。俺は知也に申し訳ないと思いながらも、胸がドキドキしていた。しかし、俺が芳味堂に婿養子に行けるわけではないので、変な気は起こさないよう、自分を戒めた。
史佳さんが知芳くんを連れて帰ったあと、親父が俺に言った。
「これからも、ちょくちょく史佳さんを連れて食事にいくなりして、気晴らしをさせてあげなさい」
親父は史佳さんのことを思って言っているのだろうが、これ以上二人で過ごす時間を増やすと、俺の気持ちが大変だと思った。
俺と史佳さんは、月に1度は二人きりで食事に行ったり、映画を観たりするようになった。最初の目的は親父が言うように、史佳さんの気晴らしだった。しかし、何度か二人きりで出かけるようになると、前日からソワソワしている自分がいた。いつの間にか俺自身が史佳さんとの時間を楽しみにしていた。史佳さんも一時でも店のことや知芳君のことから解放されて、楽しそうだった。
そんなことが1年近く続いたある日、史佳さんは最初から浮かない顔でうちにやってきた。何かあったのかなと思いつつ食事に行った。
「こんど、うちに職人さんがくることになったの」
「そりゃあ良かった。これで大将も一安心だろ」
「42歳で独身の人なの」
その言葉に俺は一瞬息が詰まった。
「ということは、婿養子候補ということかな?」
「ちょっと年が離れているけど、贅沢はいってられないからね。どんな人かは来てみないとわからないけど」
史佳さんは現在34歳だ。相手が42歳ということは8歳年が離れていることになる。年の差というより、まだ34歳の史佳さんが42歳のオジサンと結婚するかもしれないということに、俺は言い表せないほどの苛立ちを覚えた。
家に帰って、親父とお袋に芳味堂に新しい職人さんが来ることになって、ひょっとしたら婿養子になるかもしれないと告げると、親父が俺に聞いてきた。
「お前はそれでいいのか?」
「いいも悪いも、俺が口出し出来ることじゃないから」
俺がそう答えると、お袋は再婚したら知芳君をうちに連れて来なくなるんじゃないかと、そっちの方を心配していた。
新しい職人さんが来て、半年ほど経ったとき、史佳さんが飲みに連れて行ってと俺に連絡してきた。
その日は知芳君は連れて来ないというので、直接バーで待ち合わせた。
「珍しいね。飲みに行きたいなんて」
「お父さんがね、今度入った職人さんに婿養子の件を話していいかって聞いてきたの」
俺は急に息苦しくなった。
「良い人だとは思うのよ。職人としての腕も確かだし。でもね・・・」
「でも?」
「結婚したいと思う相手ではないの。生理的に無理とまでは言わないけど、あの人に抱かれたくはない」
史佳さんから際どいワードが出てきたので、俺は頭の中がカッと熱くなった。
「わかってはいるの。知芳が芳味堂で働くようになるまで、最低でもあと15年くらいはかかる。それまでお父さんが元気でいてくれればいいけど、年齢的に厳しいかもしれない。その間、店を仕切ってくれる人が必要だということは重々承知している。そのためには私が今の職人さんと結婚して、婿として店を仕切ってくれれば一番良いこともわかっている」
史佳さんはそれ以上何も言わず、ひたすらカクテルを飲み続けていた。
そんなやつとは結婚するな、俺と結婚しようと言いたい。しかし、俺と結婚しても何も問題の解決にならない。悔しいけど俺は黙っているしかなかった。
史佳さんがかなり酔ってきたようなので、そろそろ帰ろうと、店を出た。史佳さんは俺に支えられながらふらふらと歩いている。
「ねえ知和さん、あそこに入ろう!」
史佳さんが指さした先にはラブホテルがあった。
「俺は芳味堂に婿養子にはいけないよ」
「そんなのわかっているわよ。いいのそんなことは。私は知和さんと、今あそこに入りたいの」
史佳さんはそう言って俺の腕を掴んでホテルに向って歩き出した。
ホテルに入ると、史佳さんが先にシャワーを浴び、入れ替わりに俺もシャワーを浴びた。バスルームを出ると、部屋の明かりは暗くしてあり、史佳さんはベッドに入っていた。布団から出た裸の肩が艶めかしい。俺が布団の中に入ると、史佳さんがおもむろに話し出した。
「知和さんは以前私に、一人の女性として自分の幸せも考えれば良いって言ったでしょ?今日が私にとって一人の女性として自分の幸せを考える最後の日にする。だから、今日だけは知和さんも私のことを弟の嫁とは思わずに、私に女としての最後の思い出をちょうだい」
「俺はこの一年、史佳さんを知也の嫁だと思ったことはないですよ。いつも一人の女性として見てきました」
俺がそう言うと、史佳さんは俺の首に抱きつき、唇を合わせてきた。
翌日の夕食時に親父とお袋に、史佳さんの結婚が決まりそうだと言うと、親父が怖い顔をして俺に言った。
「それでお前は、黙って結婚させるつもりなのか?」
「いや、だから芳味堂にとっては、知芳君が店を切り盛り出来るようになるまでの、繋ぎの人が必要なんだよ」
「そんなことは言われなくてもわかっているよ。その繋ぎの人というのは、婿養子でなければいけないのかい?史佳さんと結婚している人でなければいけないのかい?単なる番頭のような従業員ではダメなのかい?」
「まあ、理屈的にはそうだけど、その番頭さんとしては苦労だけあって、メリットがないじゃないか」
「メリットなら違う形で提供すればいいじゃないか。お前、何年不動産屋でビジネスを学んできたんだ?それと、芳味堂の資金繰りは大丈夫なのかい?その俺たちの知らないやつが婿養子になって、その人は、うちが今まで貸した700万円をちゃんと返してくれるのかい?ましてや、また資金繰りが足らないので、とうちにやってきても、そんな知らないやつのために出すお金はもうないぞ」
親父の言うことは、いちいちもっともだ。それにしてもうちが貸したお金は、もう700万円になっていたのか。
「父さん、ひとつ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「俺は父さんの会社を継がなくていいか?」
「端からお前に継いでもらおうとは思ってないよ。それにお前はすでに自分の会社を持っているじゃないか」
確かにそうだ。俺は親父に言われて自分の才覚で2000万円を元手に物件を扱って、それが利益を生み、次の物件をとどんどん展開していった。そして、かなり利益が出てきたので、親父の勧めで個人事業主だったのを会社組織にしたのだ。
「父さん、俺今から芳味堂へ行ってくる」
俺はそう言って飛び出した。
芳味堂に着き訪いを入れると、史佳さんが出てきた。俺は史佳さんの顔を見るなり言った。
「史佳さん、俺と結婚してくれますか」
史佳さんはいきなりの俺の言葉に驚いたが、俺の真剣な顔を見て何かを察したのだろう。「はい」と力強く返事をしてくれた。
「じゃあ、大将とお母さんに話があるので、呼んでもらえますか」
史佳さんが慌てて二人を呼びに行った。
二人が揃ったところで、俺は二人に頭を下げた。
「史佳さんと結婚させてください」
当然二人は驚いた。
「芳味堂の行く末については、私に考えがあるので、聞いて下さい」
俺は順序立てて説明した。
まず、俺と史佳さんが結婚した後は、俺は婿養子となり、芳味堂を俺の会社が買収する。つまり芳味堂は俺の会社の事業のひとつということになる。そうすれば資金繰りは会社からまかなうことができる。親父の会社から借りている負債も俺の会社が引き継ぐことになるので、俺の会社から親父の会社へすべて返済することになる。次に、知芳君が芳味堂に入るまでの間は、新しく入った職人さんを番頭にして、店を仕切ってもらう。そして知芳君が一人前になったときには、芳味堂の2号店を作り、番頭さんにはそこの店長になってもらい、経営をすべて任せるというものだった。
「もし2号店の店長というポストでは物足りないというのであれば、暖簾分けでもいいですし、自分で独自に店を構えるのであれば資金援助をすると言って説得してください」
「本当にそこまでしてもらえるの?」
ご両親の気持ちを代弁するように史佳さんが聞いてきた。
「自分でもびっくりしているのですが、私の会社は結構儲かっているのです。ですから、婿養子になったあとも、私は自分の会社に専念します」
ご両親は大変喜んでくれた。そしてお祝いだと言って、酒盛りが始まった。
しこたま飲まされて、俺は泊まることになった。客間に布団を敷いてもらい横になった。知也が暮らしたこの家で、俺も暮らすことになるなんて、考えもしなかった。知也も驚いているだろう。
うとうとしかけたところで、襖が開く音がして、史佳さんが入って来た。そして俺の布団にそっと入ってくる。
「俺たちが結婚すること、知也はどう思うかな」
「多分、あんなオジサンと結婚して抱かれるくらいなら、まだ兄貴の方がいいって思っているわよ」
俺は思わず笑った。
「これだけは史佳さんに言っておくよ。俺は史佳さんを知也の奥さんだった人とは絶対に思わないけど、史佳さんは知也の妻だったことは絶対に忘れないでやってくれ。それは知也のためでもあるし、知芳君のためでもあるから」
「わかった。でも、こうやっている時だけは、知也さんのことは忘れさせて」
史佳さんはそう言って俺に抱きついてきた。
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