(番外編)第3話 みんなで(?)デート

 次の日曜日になった。場所は遊園地。現地集合で私たち3人が集合場所のゲート前に到着したときには、すでにユズル君はそこにいた。

 私たちは集合時間の10分前に着いたから、それよりも前に来ていたらしい、あいかわらず几帳面な子だ。


 ユズル君はルアン、レイナだけでなく、一緒にやって来た私を見てちょっと驚いたみたい。

「あれ?ニイハオ鍼灸院のお姉さん。どうして……」

「こんにちは、ユズル君。山下歩海です」

「私たちの保護者代理ね」

「ふーん?ああ、だから僕のことが二人にばれたんだ!」

 几帳面なだけでなく、なかなか頭の回転も速い。


 奮発して1日の乗り物乗り放題のフリーチケットを購入してある。

「今日は私がスポンサーだから、みんな目いっぱい遊ぼうね!」

「やったー!じゃあ片っ端から制覇して行こうぜっ!」

 手を突き上げて宣言する二人。

 私はきっとおじゃま虫かなと思っていたけど、ユズル君は意外と私にも懐いてくれた。


 まずは定番のジェットコースター。私は無理。パスします。

 次、空中ブランコ。これも無理。パス。

 次、バイキング。はい無理です、パス。


「次は歩海さんも乗れるものにしようよ」

 見かねたユズル君が提案する。やさしい子だ。

「歩海は何がいい?」

「うーん、じゃあ、お化け屋敷」

「え……」

 私は知っている。ルアン、レイナがお化け苦手なこと。ユズル君がやさしいからちょっとお返してあげようかと考えた。


 ウォークスルー型のお化け屋敷に二人ずつペアで入ることにする。ユズル君とルアン。私とレイナがペアになった。

 入る前からレイナは私の腕にしがみついている。

「歩海、私、無理かも……」

 入口前でレイナが呟く。かなり本気で怖がっている模様。

「私がついてるよ。大丈夫」

「うん……」

 真剣に顔が強張っている。かわいい……

 ルアンは普通にユズル君と何か話をしてる。たぶん大丈夫なんだろう。

 

 遊園地なんて何十年ぶりだろう。お化け屋敷もずいぶん進化してハイテク化していた。

 音響や映像などを活用して、ぐっとリアル感が上がっている。

 私はそんなことを思いながら興味深く進んでいく隣でレイナが時々悲鳴を上げている。そのたびに私に抱きついてくるから歩きずらい。でもそんなレイナが堪らなく、かわいい……

 私はレイナを抱き締めながらゆっくりと進んで行く。いいなあ、ありがとう、お化け屋敷。私はお化け屋敷を満喫していた。

 後方からはルアンのものと思われる悲鳴が聞こえる。それを凌駕するような悲鳴は……ユズル君?

 

 出口まで辿り着いてみると、わきの椅子にレイナとユズル君が呆然とした様子で座っていた。どうやら途中でリタイアしたらしい。

 二人とも顔が強張っているが、辛うじてレイナがユズル君の背中をさすっている。あんまりお返しにはならなかったらしい。

 

 今度はペアを変えてコーヒーカップに乗った。

 ルアンが思いっきりカップを回してくる。

「わー、目が回る!」

「さっきのお返しね!」

 むきになってコーヒーカップを回し過ぎて、私だけじゃなくルアンも気持ち悪くなってダウン。

「あほか……」

 レイナがあきれ顔でつぶやく。今度はユズル君がルアンの背中をさすっている。

 

 遊園地の中のフードコートでお昼ごはん。

 それからみんなでゴーカートで競争し、最後はやっぱり観覧車。

 向かい合った2人掛けの椅子に、私とユズル君、ルアンとレイナのペアで着席する。

 ユズル君は「ルアン」「レイナ」「歩海さん」と私たちを下の名前で呼びかけるほどに打ち解けていた。なんか家族みたい。

 周りの人から見たら、お姉さんと弟、妹たちという風に見えているんだろうな。


 帰り、ユズル君とは家のある最寄りの駅前で別れた。

「歩海さん、今日はありがとうございました。楽しかったです!」

 別れ際、そう言って礼儀正しくお辞儀をするユズル君。いい子だ。

「また明日、学校でね」

「うん、じゃ、ばいばい」


 楽しかったけど、ユズル君的にはデートってこれでよかったのかな。

「ユズル君、たぶん歩海のことお母さんのイメージなんだと思う」

「うん、私たちのときとおんなじね」

 やっぱりほっとけないよねって3人で話し合った。



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