夜の女帝貴族になる

 夜の女帝、増田は仕事終わりにはねられて死んだはずだった。しかしよくわからない面接に受かり、異世界の貴族に転生した。

 エリザベス・ロッセリーネ、という名前の貴族だ、略してエロという名前だ。

「あー暇だわ」

 エリザベスは首都にある館の自室でつぶやいた。

「エリザベス様、魔法論理教会の会合がありますよ」

 やんちゃなエリザベスのシートベルト役のメイドが言った。

 日本に姫巫女(卑弥呼)がいたように世界中で豊穣だとか、祈りに近いものには女性が多い。

「めんどーねぇ、なんでおばさんは話が長いのかしら」

「おばさんの生態でしょう」

「あんた結構言うわね」

 エリザベスは薄く笑った。

「ちょっと、紅茶とってきてくれないかしら」

「はいエリザベス様」

 メイドが部屋を出た瞬間、エリザベスは窓辺に走り、魔法で杖を出した。

 部屋は三階だったが外に飛んだ。地面スレスレで急に減速し着地した。魔法の力だ。

 自由奔放なエリザベスは外に飛び出した。馬車は取らない、首都はいつもどこかで渋滞が起こっている、エリザベスは待つのが嫌いだ。

 適当に街を駆ける、一人でこの方角に来るのは初めてだった。

 しばらく離れたら、楽しくキョロキョロ街を散策した。ふと日本語で吉田トレボンという店を見つけた。吉田は日本語だった。エスニック料理屋らしい、和食なのではないか。

 ひどく興味を惹かれ、店に入った。しかし日本人ですかとは聞かなかったが、店主の顔は日本人のようだった。

 エリザベスが店に入って数分後、よくわからない男が店に勢いよく入ってきた。男は、西洋風の顔立ちだ。

「あ、あの」男はまだ息が上がっているが何とか言葉を紡ぐ「日本人ですか?」

「え!?」

 自分の声か店主の声か分からなかった。しかし男はバックヤードに連れて行かれた、つまり店主と男は日本人の可能性が高い。

 自分以外も日本人がいる気がして、なんか嬉しいくなった夜の女帝、増田もといエリザベス・ロッセリーネだった。

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異世界転生係 澁澤弓治 @SHIBUsawa512

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