第11話

ステラは、大きなベットに座っている、レオナによく似た赤髪の女性と目が合った。

「……」

「いらっしゃい。貴方がステラちゃんね。私は、リューゲル。西の王国第一王女であり、レオナのお姉ちゃんよ」

 リューゲルは、動かなくなってしまったステラににこやかに挨拶をした。



「姉様、体調はどう?」

「身体のあちこちが痛いわね」

「オマエがあんな馬鹿をやるからだろう。全く……出産予定日を過ぎて動く馬鹿がどこにいる……」

「でも、おかげで助かったでしょ?」

「でも、あぁいうことは心臓に悪いからやめてくれませんか、リューゲルさん……」

「ハーベス。貴方までそんなこと言うのね」

 レオナにシャノン、ハーベス。三人がリューゲルのいるベットへと駆け寄って声をかける様子から、皆から慕われているのがわかる。

 ステラは、そんな四人を黙って見ていた。

 と、レオナがきょろきょろと辺りを見渡す。

「ねぇ姉様、あの子は?」

「ゆりかごの中ですやすや寝ているわよ」

「わぁ、ほんとだ……可愛いわね……!」

「あまり触るなよ、レオナ」

「小さいな……! まだ赤ん坊だった頃の弟を思い出す。やっぱり赤ん坊はいつ見ても可愛いな……!」

「もう少し声を抑えろ、ハーベス」

 ゆりかごの中を覗く三人とそれを見守るリューゲル。どうやら、ゆりかごの中には赤ん坊がいるらしい。と、リューゲルは、まだ扉の前で固まっているステラに声をかけた。

「ほら、ステラちゃん。貴方も見るのよ」

「……」

 ステラは、ゆっくりとゆりかごに近付く。そして恐る恐るゆりかごの中を覗いて……。

 そこには、赤髪の女の子の赤ん坊が寝ていた。

「か、かわいいっ!」

 ステラは、思わずそんな大きな声を出してしまう。

「あらあら」

 その様子を見て、にこにこと笑うリューゲル。

「ねぇ、ステラちゃん。貴方のおかげで助かった命は沢山あるわ。命に格差なんてないけれど、それでも私達にとって宝物みたいな、一番大事な命が助かったの。それがこの子なのよ」

「ふふ、そっかぁ」

 きらきらと目を輝かせるステラにハーベスが聞く。

「な、可愛いだろう?」

「うん」

「そうだろうそうだろう」

「何でアンタが誇らしげなの。姉様とネオンの子でしょ!! ハーベスの子じゃないの!! 私の姪っ子なの!! だからハーベスは黙ってて!!」

 だが、それを見たレオナが怒ってしまった。

「いや、そ、それはそうなんだが、わ、悪かった。ちょ、落ち着けレオナ。赤ん坊が起きる……!!」

 騒がしいハーベスとレオナを他所にリューゲルは優しい目でステラに聞いた。

「ねぇ、ステラちゃん。この子、抱っこしてみる?」

「……!!」

 ステラはリューゲルの嬉しい提案に目をまん丸と輝かせ、頭のてっぺんにあるアホ毛をくるくると回す。

「こうやって抱っこするのよ。右手はこっち、ほら、ちゃんと支えて……はい! できたわよ!」

 リューゲルの支えもあり、生まれて間もない赤ん坊を抱っこしたステラ。キラキラと目を輝かせ、初めて近くで見る赤ん坊という生き物の顔をジッと見る。

 そして、自分の頬に赤ん坊の頬を当てた。

「あったかいねぇ……」

 頬に伝わる赤ん坊の体温がステラの口元を緩ませた。

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魔法少女が異世界にやって来たようだ! @06551302kukai

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