第10話

 宿で寝泊まりをしたステラとノウン。

 冒険へ行こうと髪を結び、ダイヤの形をした髪留めをつける。ステラが立ち上がると、ドレッサーの前で眠っていたノウンが顔を上げた。ステラは寝起きのノウンに腕を伸ばし、ノウンはステラの腕を伝って肩から頭へと移動する。

 冒険の準備も終わり、宿の部屋を出ようと扉の前に立ったステラだったが、その前に三回ノックがされた。

「魔法少女ステラ様。第二王女がお呼びです」

 ステラは、頭の上に立ったノウンを見た。

「だいにおうじょ……?」

「ステラは西の王国を救った英雄だよ。王族に呼ばれてもなんも可笑しくないさ」

「ふーん……なら、行ってみようか」

 ステラが扉を開けると、そこには王家の紋章が描かれた鎧を着た三人の騎士が立っていた。



 騎士達に連れられ、城の中に入ったステラ。

 ステラが高価な壺や宝石、有名な画家が描いたであろう絵画を興味津々に見ていると、三人のメイドを連れた赤髪の女性と目が合った。

「ステラちゃん!」

 ステラの顔を見るなり走って抱きしめてきたのは、黄色のドレスを着てティアラを付けたレオナだった。

「れお、な……?」

「ステラちゃんってば、なんで疑問形なのよ」

 くすくすと笑うレオナ。あまりに綺麗なレオナにステラは少し見惚れてしまう。

「鎧を着てないオマエに混乱してるんだろ」

「しゃの、ん……?」

 金髪糸目の男なんて、シャノンくらいしかいないはずだろう。だが、あまりにも上品な姿をしており、これは本当にシャノンなのかと考えてしまうステラ。

「はは、シャノンにも混乱してるじゃないか」

 そう言ってやってきたのは、ハーベスだった。

「ハーベス!!」

 ステラはよく知る姿のハーベスの元に走っていく。

「ハーベスは認識するのね」

「コイツは城でも街でもどこでも同じ格好だからだろ」

「べ、別にいいだろ……僕は二人と違って王族でも貴族でもなければ平民以下のスラム街生まれなんだからな。そういう格好は落ち着かないんだ」

「金飾りや宝石はこれでもかと身につけるのにな」

「それは好きだからだよ……別にいいだろ……」

「よしよし、ハーベス」

 拗ねてしまったハーベスをよしよしするステラ。そこにノウンが現れて、レオナの肩に立つ。

「レオナは西の王国の第二王女。シャノンは、魔導士家系ロンドン公爵の息子。そして、ネオンは勇者家系ブレイヴ大公の息子か。スラム街生まれのハーベスは苦労するね、いろいろ」

「わかってくれるか、ノウン……! 本当にコイツらは上品なだけで常識が無いんだ……! 過去どれだけ苦労したことか……! 十年間一緒に旅をしていつも泣かされるのは僕だった……! う"っ」

 レオナの肩に立つノウンに縋り付こうとするハーベスだったが、シャノンによって首に手刀を入れられて倒れ込んでしまった。

 次にシャノンは、レオナの肩に立つノウンを見る。

「レオナから降りろ、魔獣」

 シャノンに睨まれたノウンは、大人しくレオナから降りてステラの頭の上に立った。

「あぁ、そういうことか。……大人になりなよ、シャノン君。いつまでもガキなのはいけないよ」

「……チッ」

「こら」

 舌打ちをしたシャノンを叩いたレオナ。

 シャノンが大人しくなり、レオナはステラに言う。

「ステラちゃんに見てほしいものがあるの。それは、私達全員の宝物なのよ。……来てくれるかしら?」

「うん、いいよ」

「ありがとう、ステラちゃん。……それじゃ、行きましょー! ほら、こっちよ!」

 ステラの手を取り、城の奥へと走るレオナ。

 ドレス姿でも落ち着きのないレオナとその後ろを呆れながらも楽しそうについていくハーベスとシャノンを見たメイド達は、安心したかのように笑った。



 レオナに連れられ、城の奥へと進んだステラ。

 沢山の扉を通り過ぎて、レオナは階段を上った先にある豪華な扉に手を伸ばすと、ノックもせずに大きく扉を開けた。

「姉様!!」

 扉の先は、豪華な部屋にメイドが五人。ゆりかごが一つ。そして、大きなベットには、レオナによく似た赤髪の女性が座っていた。


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