第9話

 ステラによって宇宙の律者ディアスティマが倒されたものの、西の王国の中心での戦闘により、辺り一帯が壊滅状態だった。

「死者は確認されていないそうだ」

 シャノンは魔法通信で西の王国騎士団長から報告を受け、ハーベスにも伝えるとハーベスは安心した表情を見せて言った。

「それならよかった。ステラのおかげだな」

「………………癪には触るがそうなるな」

 シャノンの中ではだいぶ葛藤があったようだが、ステラのおかげであるのは事実なので認めたようだ。

「だが、その左腕はどうする。レオナでも治せない」

 ハーベスの左腕は、ディアスティマの攻撃を止めていた反動で真っ黒になっていた。けろりとした顔をしているところを見るに、もう感覚もないらしい。

「これは、リューゲルさんを守った勲章だ。利き腕くらいなくなったって構わないさ」

 ハーベスが心の底からこの程度と思っているのが気に食わないシャノンは舌打ちをする。

「…………チッ」

「なんで!?」

 だが、ハーベスはそれを理解していないようだった。シャノンはさらにそれも気に食わず、再び舌打ちをする。しかも、今回は大きく。

「チッ」

「本当になんで!?」

「…………まあいい、後処理はオレがやる。オマエはレオナのところへ行ってさっさと治療を受けてこい」

「あぁ、すまない。あとは頼んだ、シャノン!」

 ハーベスはレオナがいる城へ向かおうとして、白い小動物――ノウンが二人の前に現れる。


 だが、前のノウンと雰囲気が違う。

「の、ノウン……?」

 ハーベスが警戒しながら声をかけると、ノウンはにこり笑い、その瞬間ノウンから膨大な魔力が溢れて街がみるみると修復されていった。

「う、嘘だろ……」

「……!? !?」

 元通りになった街を見て、ハーベスは呆然とし、シャノンは信じられないという顔をする。

 ちょうど到着した騎士団も想像していた無残な状況とは違い、何事もなかったのような建物を見て驚いているようだった。

「シャノン殿!! こ、これはどういう……!?」

 騎士団長が何百もの騎士を連れて来たが、聞いていた話と違う光景に驚いて声をあげる。


 と、ハーベスがノウンをガシッと両手で掴んだ。 

「の、ノウン! どんな魔法を使ったんだ……!?」

「物の時間を戻してるだけだよ」

「そんな魔法、神話級だぞ!? 俺でもわかる!! なあシャノン、さっきの魔法見たか!? 見ていたよな!? 」

「あぁ、見ていた見ていた」

 適当に返事をするシャノン。

「なんでお前は興味ないんだ!! 魔法オタクだろう!? 魔法オタクがそれでいいのか!?」

 ハーベスにそう言われてもツーンとした態度で無視をするシャノン。だが、ちらっとハーベスを見て。

「というか、まずは自分の腕を見てみろ」

「え? あれ、え、な、治ってる……!?」

 ハーベスは自分の左腕を見ると、ディアスティマによって完全に治っていた。

「それはオマケだよ。普段はそんなことしないんだけどね、ステラがどうしてもって言うからさ」

「そうだったのか! なぁ、ステラ! ……ってあれ、ステラ……?」

 ハーベスが声をかけた場所には、既にステラはいなかった。辺りを見渡しても、ステラはどこにいない。

「なぁ、ノウン。ステラはどこ、に……? あれ?」

 ハーベスが気付いた時には、ステラの後を追うようにノウンまでもが消えていたーー。

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