第137話 『良い女』と言われるのは良いモノですね



 そう聞いて来るオリヴィアはやはりどこか不満げな表情をしつつも、マリエルやエリザベートとの関係を深く追求する事もせずに引いてくれるではないか。


 今まで散々俺によって嫌な思いをしてきたのだから、俺の事など気にせずに聞きたいことを聞いてくるかと身構えていたのだが、そんな事もなくホッとするのだが、しかしながらこれはこれで末恐ろしいと思ってしまう。


 以前までのオリヴィアであればいざ知らず、婚約破棄の件で話し合った時のオリヴィアであれば俺に臆して言いたいことも言えないという事はまずないだろう。


 そして、大抵こういう時は何かしら内に秘めて表に出さしていないだけなので、何も言われなかったから何も思っていないという考えは愚かであると言えよう。


「どうしましたか? 今更私の魅力に気付いて婚約破棄をしなくて良かったと思いましたか?」


 そんな事を思いながらオリヴィアの事を横目で眺めていると、俺の視線に気付いたのか話しかけてくるではないか。


 これ、絶対俺がオリヴィアとの婚約を破棄しようとしていた事を根に持っているよな……。


 どうしよう……女心マジで分からないんだが……。


 女心は秋の空模様のようだという表現が良くされるのだが、このオリヴィアに関しては正にそうだと言えよう。


「あぁ、そうだな。オリヴィアのように良い女を手放さなくて本当に良かったと思っているよ」

「ふふっ、それが例え嘘だとしても気になっている異性の方から『良い女』と言われるのは良いモノですね。それにしても、まさかこんな冗談を言い合える仲になるだなんて、少し前までは考えられなかったですね」

「…………そ、そうだな」


 そして俺がオリヴィアに『良い女』と表現した瞬間マリエルからメールが届いたので開いてみると『私は良い女ですか?』と書いてあったので『最高の女だ』と返しておくと、背中に感じていた鋭い視線が霧散したのを感じた。


 まさか女性の機嫌を取ることが、これほど緊張感があるものだとは……。


 今回はオリヴィアにもマリエルにも俺の返答が合っていたから良かったものの、間違ていたらと思うだけで胃が痛い。


 しかしながらカッコいい悪役とは女性に振り回されるなど論外。むしろ俺が女性を振り回すべきであるので、ここはそんな緊張感を感じていたなど表に出ないように細心の注意を払い無表情を貫く。


 そんな事を思っていると、いつの間にか周囲は俺へと視線を向け始めているではないか。


 一瞬何事かと思ったのだが、確かにエリザベートとの婚約者に指名されて何も反応しないのは違和感があるなと気付く。


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