17.

普段よりも一段低い声で脅してみせると、大慌てで「にーちゃんやだー!」なんて甘えてくる。鬱陶しい。

と、思っていたら、急に自分から離れていった。


「……そうだ。──ジルヴァー!やっぱり、兄貴は優しかったよな! ──って、あれ?」


ジルヴァに振り向きざまそう言う奴が、途端に素っ頓狂な声を上げるものだから、つられてジルヴァの方を見やる。


「いや、なんで、ジルヴァは狼の姿に…?」

「……俺が原因なんじゃないのか」

「いや、そんなわけ……──……っ」

「あ、おいっ」


困り顔でこちらを見つめていたジルヴァの元に行こうとしたのか、しかし、うつ伏せになって倒れ込んでしまった。

起き上がらせ、顔を見やると、さっきよりも顔を赤くしていたのだ。

やはり熱だったのか。それとも、熱中症か。この際どちらでもいい。どちらにせよ、問題が解決していない。


祥也は新たな問題に直面することとなってしまったのであった。

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弟の心、兄知らず 兎森うさ子 @usagimori_usako

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