16.

こいつに「にーちゃん」呼ばわりなんてされたくないと思いつつも、「ほら、そんなにもくっついていたら、食えないだろう」と言った瞬間。


「……くく…っ」


体を震わせ始めるのを、祥也はもっと悪化したのかと思い、「おいっ!」と引き剥がした。──が。


「もう、もうだめだ…っ! 耐えられね……!」


震わせた声に腹を抱えて笑い出していた。

何故、奴は笑っているのか。いや、熱で頭がおかしくなったのか。

唖然とした。


「ひぃ…っ、笑った、笑ったわ」


これ以上大笑いをされると、隣人から文句を言われかねないと思い、黙らせようとした時、落ち着いてきたらしい、大粒の涙を拭っていた。


「やー、やっぱ兄貴は昔から変わらねー。優しいよな」

「……いきなりなんなんだ」

「だってさ、本当におれのことが嫌いなら、公園に放置しておけばいいし、なんなら、居候するって時に無理やり追い出せば良かったじゃん」

「……あれは、ジルヴァがお前の料理が美味いって言うから……」

「順序逆だろ。おれが勝手に居候した時に始めたことじゃん。もしかして、小さくて可愛いものに目がない兄貴は、おれにジルヴァを盗られて妬いてんの?」

「……今度こそ、追い出すぞ」

「いやいや、冗談だってっ!」

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