第46話 自分らしくワガママに

 ……はぁ、どうしてこうなったのやら。


 持ち上げられるのが慣れてないので、どうして良いのかわからない。


 館を出れば住民達に感謝されるし、叔父上が連れてきた兵士達は謝ってくるし。


 仕方ないので、ひと気のない丘へとやってきて寝転がる。


「別に俺は好き勝手にやってただけだし。それを感謝されたり、勘違いされるのはむず痒いよね」


「ここにいましたか」


 振り返ると、そこには苦笑しているクレハがいた。

 やっぱり、さっきのは演技だったのか。


「……クレハまで酷くない?」


「いえ、先ほどのは本心でしたよ。となりに座ってもよろしいですか?」


「うん、もちろん」


 そして、クレハが同じように寝転がる。

 結構近くて、なんだか良い香りがします。


「話の続きですが、ああした方が良かったのかなと」


「どういうこと?」


「エルク様が国を救ったことは事実なのです。エルク様が辺境に来なければ、辺境は改革を前にしてスタンピートによって滅ぼされたでしょう。そして下手をすると国そのものが」


「いやいや、別に結果的に叔父上が来たから問題なかったでしょ。最後には叔父上がいなかったらやばかったし」


「お忘れですか? シグルド様はエルク様を追ってきたのですよ? 置いていった護衛達を連れて」


「あっ……そっか」


 俺は護衛も置いていったし、叔父上にも黙って出て行った。

 叔父上は本来なら、国境から動くことはほとんどない。

 俺を可愛がってくれた叔父上だから、こうして来てくれた。


「住民達が協力してくれたり、避難を受け入れてくれたり、それらもエルク様が氷魔法を使って住民達の心を掴んだからです。それがなかったら、スタンピートを防ぐどころではなかったでしょう」


「別に狙ってやったわけじゃないしさぁ……」


「良いじゃないですか、それで。モーリスさんも然り、ギレンやオルガも然り、エルク様に救われたのですから」


「うーん……なんだかなぁ」


 俺が納得しないでいると、クレハが手を握る。

 振り向くと、見とれるほど綺麗に微笑んでいた。


「そもそも、私だってエルク様のワガママで救われたのですから」


「……まあ、無理は言ったけどさ」


「それによって、私は幸せに生活を送っています。きっと、皆もそれで良いのかと。エルク様は好き勝手にやって良いのですよ。私も含め、そんなエルク様が好きですから」


「……そっか、ありがと。んじゃ——好き勝手にやるとしますか!」


「ええ、お供いたします」


 自分が過ごしやすいように辺境開拓したり、暑いからアイスとかかき氷とか作りたい。


 ハチミツや美味しいものがある、南にあるドワーフとエルフの国にも行ってみたい。


 まだまだやりたいことは沢山ある。


 とりあえず、これからもワガママに生きていきますか。






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グータラ王子の勘違い救国記~辺境で好き勝手にしていたら世界を救っていたそうです~ おとら @MINOKUN

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