第三章 我こそは最弱、魅惑のソラオクの巻
第16話 ひとつ屋根の下……何も起きねーぞ!
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
慌ただしい日々が過ぎ去り、
昼休みの教室、隣同士の机をくっつけてのランチタイム。
「お前それ、全部食うつもりか?」
「おれちゃまは育ち盛りだからなァ」
本気か冗談か、
「またあのデカさに成長する気かよ」
「もぐもぐ……大丈夫だ。そのつどサイズに合った服を作ってくれると、メガネのおばさんが言ってたじぇ」
戦いの後、マキナはその場で
「あのコスプレ女、無駄に裁縫スキル高いからな」
「おう。自分では着れない服をたくさん作れると喜んでたじぇ」
マキナの趣味はともかく、
心なしか、マキナの振る舞い方が以前と変わってきた気がする。
(オレがレもんを助けたせいだったりしてな)
きっかけが何であれ、殺伐としているよりは余程いい。
「なぁ、
「悪いな。おれちゃまは
C組の女子生徒だ。不良に絡まれているのを、転校直後の
「そっか。お前もしっかり学校生活を楽しめよ」
「おう。
マヨネーズの付いた口角を緩ませ、
だが、程なくして箸が動きを止める。
「ん? どうした?」
「ぬぅ……お腹いっぱい、なのだ……じぇ」
「言わんこっちゃねぇ。ちょっと貸せ! 手伝ってやっからよ!」
*
学校帰りの夕方。
「唐揚げの材料も
「最高~! でも和風も捨て難いよね~」
二人で調味料の棚を見て回っていると、レもんがおぼつかない足取りでレジから戻って来た。
手ぶらで。
「何だ。お前、美容液買って帰んじゃねーのか?」
「……ない……」
「在庫切れか。しゃーねー――」
「お金が……口座に振り込まれてなぁい!!」
ベンチでうなだれるレもんに、
「まぁ、元気出せよ。とりあえずこれでも飲め」
「かたじけない……」
レもんは子犬のようにしょげ返っていた。理由は明白だ。
「レもんちゃんかわいそう。知らない間にバイト先クビになるなんて」
「このままじゃ家賃も払えない……来月からあーしはどこに住めばいいんだぁー!」
「ごめんね、レもんちゃん。うちのマンション、ペット禁止だから」
「ありがと、
(オレはツッコまねーぞ!)
それはそれとして、
「オレん
「えっ……! で、でも、敵の家に世話になるわけには……」
「うるせぇ! 負け犬の手下A
尻込みするレもんを、
*
物心ついた時分から母親と二人暮らし。だが、その母もここ数年は仕事で家を開ける日が多い。
「……ん? 鍵開いてんな。ただいまー」
玄関をくぐった瞬間から、食欲を誘うスパイスの香りが漂っていた。
レもんを連れてリビングに入ると、ソファには珍しく母が座っていた。
「おかえり――あら、お友だち?」
「
かしこまってお辞儀するレもんを
「そうなの。なら、お邪魔虫は退散しようかしら」
「お、おい! コイツはそういうんじゃねー! ただのダチだから!」
話を聞いた母は難色を示すでもなく、ただどこか淋しげにうなずくのだった。
「いいんじゃない。いつまでも部屋を空けとくのも、ね……」
「マジか! 助かるぜ」
「すみません! しばらくご厄介になります!」
レもんは膝と額が引っ付きそうなほど深々と頭を下げる。
「それじゃ、お母さんは会社に戻るわね。台所にカレー作っておいたから、よかったら二人で食べて」
母はすぐに家を出て行ってしまったが、
「いいお母様じゃないか。あんな落ち着いた女性から、
「誰がヤンキーだ! 叩き出すぞコラァ!」
「いいや、ここの家主はお母様だ。あーしはお母様の
すっかり元気を取り戻したレもんを前に、
「ったく、ふてぶてしい奴だな。さっさとカレー食おうぜ。福神漬けもあるぞ」
こうして自称・正義のヒーローと落ちこぼれ悪魔の共同生活が始まったのだった。
*
後日、
「なわけでよー、レもんのバイト先も『
「おう」
「アイツ母ちゃんに気に入られすぎだろ。オレなんかよー……」
「……おう」
「何か今日お前元気ねーな。そろそろ昼メシにすっか」
いつものように教室の机を向かい合わせ、
ところが、
「あ? 今日の分それっぽっちかよ」
「おれちゃまのお給金……止められたのだじぇー!」
「お前もかよ!」
居候がもう一人増えた。
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