episode.6訓練開始
アオイたちは5人はこらから家となる大きな部屋に来ていた。
がらんとした部屋に簡易的なパイプベッドとロッカーだけがある部屋。
ベッドとベッドの間には仕切りなどは一切なく、プライバシーというものは微塵も考慮されていない。
それぞれが何となく自分のベッドを決めて座る。
そして誰からともなく自己紹介を始める。
ジョシュ「よろしくな、俺はジョシュ、ここには国がなくなって居場所が無くなってきたんだ...親もやられちまった...」
アン「私も...あ、私はアン、よろしく...」
ローガン「俺もだよ、ローガンだ」
マリン「私も...アオイは日本人よね?あなたの国はまだそこまで被害はでてないんじゃないの?」
アオイ「私は...旅行先で...帰ったら居場所もなくて...」
マリン「ご、ごめんなさい!私...」
アオイ「いいの、だから少しでも虫を道連れにしようと思ってここに来たの...」
ジョシュ「それでかwお前、一番気迫がすごかったもんなw」
アオイ「え?」
ローガン「確かに、お前の気迫が凄すぎて、教官だけじゃなくて助教まで注目してたもんなw」
マリン「おかげで私はやめがかがらずこのザマよ...」
アオイ「ご、ごめんなさい...私...」
マリン「冗談冗談、でも悔しいから私の相手の男のタマ一つ潰してやったわ」
ジョシュ「まじかよ...」
ローガン「何にせよ俺たちは班になったみたいだから、よろしくな!みんなで頑張ろう!」
「非常呼集、非常呼集、各班のリーダーは会議室に集合せよ、繰り返す。各班のリーダーは急ぎ会議室に集合せよ」
ジョシュ「呼んでるぜ、リーダー」
アオイ「私...そんな...でもいってくるね」
* * *
アオイ「失礼します、アオイです!」
「...」
アオイは会議室に入る。
そこにはまだ誰もおらず、一番乗りだった。
アオイは仕方ないので座って待つことにした。
教官「お前だけか?」
アオイ「ッ!はい!私だけです!」
教官「そうか」
しばらくして廊下から話し声と足音が聞こえてくる。
会議室のドアを開けて、教官と目が合うと皆いそいそと座り出す。
そして、その後もパラパラとリーダーたちが集まってくる。
教官「お前たち、放送を聞いてなかったのか?放送は何と言っていた?アオイ!」
アオイ「は、はい!非常呼集、各リーダーは急ぎ...会議室に集合せよ...です...」
教官「そうだ。で、それがお前たちの急ぎか?」
リーダーたち「...」
教官「俺より先に来ていたのはアオイだけだ。お前たち、何をしていた?」
リーダーたち「...」
教官「ペナルティーだ、全員腕立ての姿勢をとれ!...早く!」
リーダーたち「は、はい!!!」
教官「アオイ、お前はいい、お前が回数とカウントをやれ」
アオイ「え...はい...」
教官「で、何回だ?」
アオイ「10...回...では...」
教官「舐めてるのか?100回だ、始めろ!」
アオイ「す、すみません!いち!にー!さん!...ひゃく!」
リーダーたち「はぁ、はぁ、はぁ...」
教官「ついてこれなかったやつは、この後続きを終わらせろ。アオイ、だきなかったやあらのカウントをして終わったら報告にこい」
アオイ「はい...」
教官「全員座れ、今回呼び出したのはお前たちの役割についてだ。お前たちにはこれから班の監督をしてもらう。部屋の掃除から集合場所や訓練内容まで全てをお前たちに伝える。もし不備があれば、班員が腕立てをして、お前たちがカウントをする。訓練中に起きたミスは全員で腕立てだ。それとお前たちは優秀だからリーダーになったわけじゃない、たまたまやる気がありそうだから選んだにすぎない。やる気がないやつはリーダーを交代する。それとリーダーは1番優れた成績を納めないと下から舐められる。成績が悪いやつも交代だ。いいな!」
リーダーたち「はい!!!」
教官「明日からは基礎体力作りだ、0700グラウンドに集合だ」
リーダーたち「はい!!!」
教官「それでは先ほど腕立てが終わらなかった者以外は解散!」
* * *
ジョシュ「まじかよ...いきなり厳しすぎないか?」
アン「さすがは軍隊...ね...」
マリン「全身痛くて寝られるかな...」
アオイ「とにかく夕飯を食べて寝ましょう...明日は7:00にグラウンドってことは朝ごはんは5時くらいは食べないと走れないよね...」
ローガン「たしかに...」
その夜アオイ班の面々は絶望感と体の痛みで元気なく食事をして眠りについた。
* * *
教官「各リーダー報告!教えた通りにやれ!」
リーダー「ロナウド班総員異常なし!カイル班総員異常なし!......アオイ班総員異常なし!......」
教官「よし、全員いるな。今日からお前たちは基礎的な身体能力を向上させる。まずは体力だ。俺が止めるまで全員ランニングだ!右向け右!駆け足用意!駆け足始め!」
そこから3時間休むことなくランニングが続けられた。
グラウンドを永遠と周回するだけ。
しかもいち!に!と大きく声を出しながらだ。
次々に脱落者がでる。
班ごと全員脱落した班もあった。
アオイの班はなんとか全員完走した。
アオイ「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ...」
ジョシュ「ゴホッゴホッ...」
ローガン「...」
アン「ぜぇ、ぜぇ...」
マリン「オェ、オェェェェ」
教官「全員整列!各リーダー報告せよ!」
リーダー「ロナウド班完走2名脱落3名...カイル班全員脱落...、...アオイ班全員完走...」
教官「30班もあって全員完走したのは5班だけか...全員完走した班は1300まで休憩!脱落者が1人でも出た班は追加でランニングだ!このランニングは毎日同じ時間に行う!雨が降ろうが、台風が来ようがやる!いいな!」
一同「は、はい!!!」
* * *
ジョシュ「みんな...ありがとう...」
アン「えぇ...もし1人でも脱落してたら...」
アオイ「もうムリ...」
ローガン「改めてがんばろう...」
マリン「えぇ...」
アオイたちはグラウンドから聞こえてくる掛け声を聴きながら顔を青ざめさせた。
そしてそこから来る日も来る日もひたすらに走り続けた。
朝に走って、午後からはアスレチックの様な物を昇り降りしたり、ウェイトトレーニングをした。
食事も訓練開始から量が劇的に増加して、下手をすればアオイが一日で食べていた量を1食で食べた。
食べきれない者は班の全員が食べ終わるまで残され、入浴や睡眠の時間が削られた。
全員が必死に詰め込み、なんとか完食した。
* * *
それから数週間がたった。
「非常呼集、非常呼集。総員グラウンドに集合せよ。繰り返す、グラウンドに集合せよ」
部屋のスピーカーから音がする。
それぞれが重い思いに自由時間を探していたアオイたちは、放送と同時に凄まじい勢いで走り出す。
この数週間で非常呼集に対して完全に訓練され、聞こえると同時に走り出すようになった。
スピーカーから機動前のノイズが聞こえると全員息すら止め、聞き逃さないように身じろぎひとつせず、放送を聞く。
そして放送が終わると瞬時に動き出す。
集合場所までも鍛えられた若き兵士たちは全力疾走で向かい、全員息を整える間もなく整列して教官を待つ。
しかし、この日は少し違った。
呼び出された訓練兵たちは、グラウンドに既にいる教官たちと、前に立たされている班の面々を見て不思議そうにしながらも訓練された通りに動く。
教官「今日はお前たちに報告がある、おい、リーダー、お前から話せ」
リーダー「はい...この度は私の班の者が倉庫のトイレでセックスをしているところを発見されました...それも補習の最中に...」
教官「それでどうなんだ?」
リーダー「はい...これは事前の規約違反であり、罰せられるべき事案です...」
並んでいる5人の中で2人俯いている。
おそらく今回の犯人だろう。
教官「お前たちはここに恋愛をしにきたのか?基礎訓練では男女の交際は禁止されているはずだ...よってリーダーは解任、犯人の2人は別の班に移動。そして連帯責任として朝まで駆け足だ」
一同「...」
助教「聞こえなかったのか!?駆け足用意!始め!」
一同「はい!!!」
教官「それくらい体力が有り余っていたんだな!これからより厳しくしていくから覚悟しろ!」
そして一同は朝日が登るまでランニングを続け、ほんの僅かな休憩の後に通常の訓練を開始した。
この日は全員もれなく倒れ、訓練を完遂できたものはいなかった。
そして補習の最中に規則違反をしていた2人はやめていくこととなった。
途中このように脱落者を出しながら3ヶ月間の基礎訓練を終えた。
ここからは格闘、射撃の基礎訓練を行い、最終的には野戦の訓練までを行う。
その後残った者はタスクフォースとしてより専門的な教育を受けるために、また6ヶ月の訓練を行うこととなっている。
3ヶ月前に入隊した少年少女は間違えるほどにたくましくなっており、顔つきも兵士らしくなっていた。
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虫が支配する世界 @namahu_melon
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