episode.5日常との決別
アオイはタスクフォースに入隊し、基礎訓練を受けるために、タスクフォース本部が置かれている島にきていた。
到着早々に他の入隊者と話す間も無くグラウンドに整列させられる。
200名くらいいるだろうか、アオイと同じ年頃の少年少女が並んでいる。
前に偉そうな人がでてくる。
そしてそれに続いて、少し若い兵士が横一列に整列する。
教官「諸君らの入隊を歓迎する。これから諸君らは訓練を受け、最前線で敵に対して先陣を切って突撃する兵士となる。入隊理由は様々あるだろうが、諸君らの勇気に敬意を表する。敬礼!!!」
掛け声とともに、姿勢を正した兵士たちが一斉に敬礼をする。
アオイ「...」
教官「前にいるのは諸君らに訓練を施す助教たちだ、私が教官のアレス大尉だ、よろしく頼む」
一同「...」
助教「返事!!!」
一同「はい!!!よろしくお願いします!!!」
教官「まぁ初日だからな、それでいい。それではまず諸君らの覚悟を確かめたい。右隣の者と2人1組となれ」
一同「...」
助教「返事!!!2度同じことを言わせるな!」
一同「はい!!!」
教官「それでは5組ずつ前に出ろ」
助教「貴様から貴様までだ!前に出ろ!」
指名された者たち「...」
助教「おい」
指名された者たち「っはい!!!」
教官「よし、それじゃお前たち、これから殴り合え。私たちが止めるまで決してやめるなよ」
指名された者たち「え...」
助教「聞こえなかったか?」
指名された少女「でも...私女です...相手は男ですよ?」
教官「それがどうした?お前は前線で虫に向かって私は女だから手加減してと言うのか?これで適性がないと判断されたものはすぐに帰ってもらう!」
指名された女「それは...」
助教「グローブとヘッドギアは貸してやる。早くつけろ」
混乱しながらもグローブとヘッドギアをつける少年少女。
教官「始め!!!」
少女「そんな、私、格闘技なんて...」
少年「すまない、俺は帰る場所はないんだ...」
お互いに違う思いを抱く。
しかし、少年は覚悟を決めて、少女に殴りかかる。
少女はもちろん戦闘など経験がない、おもいっきり顔面にパンチをくらい吹き飛ぶ。
少女「グハッ!!!」
鍛えられた物ではないが、男女の筋力差は歴然だ。
少女は吹き飛ばされ、鼻から血を吹き出している。
少女「痛い...やめて!お願い、叩かないでください!」
少年「うっ...」
少年は監督についていた助教の顔を伺う。
無表情にそれを眺めている助教。
助教「まだ終わりとは言ってないぞ」
少年「でも...もうあの子は戦えません...」
助教「そらは私が決める、おい、お前も早く立て」
少女「ヒィィィ!もう無理です!私の負けです!!!」
助教「わかった、そこまで!」
それから少年少女たちは殴り合いを続けた。
男同士で激しい殴り合いをする者、女同士で髪の毛を引っ張り合い戦う者、男女で一方的に殴る者...
そしてアオイの番になる。
少年「僕はここで不合格にされるわけにはいかないんだ...すまない...」
アオイ「...(そんな...男の子になんて勝てるわけない...)」
教官「始め!!!」
少年「うぉぉぉぉぉ!!!」
アオイ「ヒィ!!!...ゴッ!!!」
拳を振り上げて向かって来た少年にアオイはとっさに頭を抱えて丸くなる。
そして少年のアッパーをもろに食らったのだ。
口が切れ、鼻血が吹き出す。
後ろに倒れたアオイの腹に追撃の蹴りが入る。
少年「クソッ!クソッ!!!」
アオイ「ガハッ!やめ...!ガッッ!」
勝負はまさにワンサイドゲーム。
アオイは地面に丸くなり、耐えることしかできなかった。
教官「おい、そこまでか?お前はなんでここにいるんだ?」
アオイ「...ッ!」
アオイは意を決する。
自身がここにきた理由、自分から家族、そして故郷を奪った虫。
そいつらを少しでも殺してやりたい...
それを思い出したアオイは地面の砂を握る。
アオイ「うぁぁぁぁぁ!!!」
地面の砂を少年の顔に向けて投げる。
完全に勝利を確信していた少年はまさかの反撃になす術なく顔に砂を浴びた。
少年「ぐぁぁぁぁ!!!」
一時的に目を開けられなくなる少年。
その少年にアオイは襲い掛かり、押し倒す。
アオイ「うぁ!ああああああ!!!」
アオイは馬乗りになると細い腕で必死に少年の画面を殴る。
しかし、アオイの腕力では大したダメージを与えることはできず、逆に少年の膝蹴りをくらってしまう。
少年「降りろ!!!」
アオイ「グフッ!!!」
少年はなんとか立ち上がるが、まだ目を開けることはできないようだ。
少年「クソッ!ハァ、ハァ、ハァ...」
アオイ「ゴホッゴホッ...うぁぁぁぁ!!!」
少年「クソォォォォ!!!」
再び突撃するアオイ。
少年がでたらめに腕を振り回して迎撃する。
アオイは少年の腕が当たる直前で滑り込む。
そして金的攻撃をする。
少年「ぅぅぅぅうう!!!」
目が見えていなかった少年に回避する術はなく、もろにくらってしまう。
股間を抑えてうずくまる少年。
アオイ「ぁぁぁああああ!!!」
アオイは自身のパンチや蹴りではダメージを与えられないと、少年の髪をひっぱり、噛みついた。
少年「いだいぃぃぃぃぃ!!!やめてくれぇぇぇぇ!!!」
教官「そこまで!!!」
アオイ「はぁ、はぁ、はぁ......うぅ...」
アオイは教官の掛け声で攻撃をやめて立ち上がるとそのまま意識を失った。
しばらくの後、医務室で目を覚ましたアオイ。
アオイ「ここは...」
軍医「きがついたかい?うん、大丈夫そうだね、こらから全員を集めて教官から話があるそうだ、歩けるならグラウンドに戻りなさい」
アオイ「はい...」
アオイはグラウンドに戻った。
そこにはすでに少年少女たちが整列していた。
皆傷や痣だらけで、泣いている者もいる。
アオイ「すみませんでした...」
教官「戻ったのなら早く整列しろ」
アオイ「はい...」
教官「諸君ご苦労だった。これから呼ぶ者は前に出ろ。ドミニク、カレン、アルト、リョウスケ.........アオイ.........カルロス、以上だ!」
呼ばれた者「はいっ!!!」
教官「お前たちは先の戦いで優秀な闘志を示した。お前たちをリーダーとして任命する」
呼ばれた者「はい!」
教官「それから次に呼ばれた物は後ろに下がれ!ナタリー、ジョッシュ、アイシャ、............オズエル、以上だ。お前たちは不合格だ。今すぐにここから去れ!」
呼ばれた者「そんな...なんで!」
教官「お前たちは戦意を失ったり、情けをかけて攻撃をやめた者だ。これからこの部隊が目指すところにそのような軟弱な者は不要だ。だか、お前たちが志願した勇気には敬意を表する。しかし適性がなければこの先死ぬだけだ。諦めて帰るんだ。ご苦労だった」
呼ばれた者「...」
不合格とされた者たちは力なく帰っていく。
一同「...」
教官「今呼ばれなかった者たちは一応合格だ。残った中で今のうちに辞めたい者はいるか?もし辞めたい者がいたら俺でも助教でもいいからすぐに言え。わかったか!?」
一同「はい!」
アオイは最初の試練を合格した。
リーダーとして任命されたアオイは部下を4人つけられ、それぞれの班で競い合わせられることとなる。
200人いた候補生は現在176となり、同期として訓練を積んでいく。
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