episode.4帰国
途中虫の襲撃もあったが、アオイは無事に帰国できた。
しかし、アオイを待っていたのは歓迎の式典ではなく、一台の車だけだった。
事務的に身柄の受け取りが行われると、そさくさと車に乗り込み、移動する。
役人「アオイさんですね、こちらへどうぞ」
アオイ「はい...」
車に乗り込むアオイと役人
役人「すみません、本当ならもっと明るい雰囲気でお迎えできたらよかったんですが...」
そういって車のテレビをつける役人
そこにはアオイを特集する番組が映っていた。
幸せな家族旅行で悲劇に見舞われた少女。
奇跡の生還を果たす。
見出しはこのように飾られていた。
幸せな一家を襲った凶事。
そしてその悪夢から唯一生還した少女。
そんな悲劇のヒロインをマスコミが放っておくはずもなく、情報はどこからか漏れ、空港にはマスコミが押しかけていた。
さらにアオイが通っていた学校や生徒に対しても執拗に取材がされていた。
自宅の近所にもマスコミが張り付いており、ご近所さんに取材が行われていた。
その様子を車の中で見ていたアオイは、何も言わずに画面をみつめていた。
アオイ「...」
役人「申し訳ない...マスコミに嗅ぎつけられてしまって...」
アオイ「いえ、しかたないです...」
アオイを乗せた車は政府の施設に到着した。
そこで簡単な持ち物検査を行い、個室に案内された。
そこはビジネスホテルくらいの部屋で快適とは言えない部屋だったが、アオイは日本に帰ってこれて久しぶりに心から安心した。
その夜またアオイは例の夢をみた...
* * *
翌日からアオイに対して聞き取りが行われた。
アメリカでも何度も行われた質問を改めて聞かれる。
大方質問が終わると、今後について役人から質問された。
役人「今日はありがとうございました。で、これからのこと...なんですが...」
アオイ「家には戻りません。学校にも...」
電話で行われた校長との面談。
そこで学校側はアオイの復学について、遠回しにではあるが、拒絶した。
今回の件で学校側も仕事にならない状態となっており、さらにネットではアオイが虫のスパイなんじゃないかと陰謀論まで出始めていた。
そんな厄介者を学校側も受け入れたくはなく、あくまでアオイの身を気遣う体で学校に戻らない方がいいのでは...というのだ。
アオイは内心ショックを受けながらも、加熱する報道を見て諦めるしかなかった。
役人「こちらとしては、ここにいてもらっても一向に構わないし、できる支援は全てやらせてもらう。でも一生ここにいるわけにも...」
アオイ「はい、わかってます...」
役人「せっかく帰って来れたのに...本当に申し訳ない...」
アオイ「いえ、帰って来させてもらえただけでありがとうございます...」
この状況に泣きもせず、不満を言わず、受け入れようとしている少女をみて、役人も泣きそうになる。
アオイ「私...タスクフォースに入ろうと思ってるんです...」
役人「え!?」
タスクフォース...
それは虫に対して反抗作戦を行うために組織された軍隊。
まだ準備中ではあるが、人間が失った陸地奪還のため、国連手動で組織された。
任務内容は敵地への上陸と橋頭堡の確保。
常に最前線で戦い、最終的には敵の巣の攻略を目指すという物だった。
危険極まりない任務で、名称もまだ決まっていない部隊。
当然そのような任務に自ら進んで就く者も少なく、人員確保も難航していた。
役人「タスク...わかってるのか?あれは...」
アオイ「わかってます...でも、もうそこくらいしか私の居場所は...」
確かにタスクフォースなら国籍人種がごちゃ混ぜの環境で、アオイに対する誹謗中傷もないだろう。
アオイは日本にいれば、マスコミのおもちゃにされるはずだ...
しかしタスクフォースは最前線の最も危険な部隊、屈強な兵士ですら志願しないものに若い女の子が行くと言うのだ。、
役人「その話は今は私の中にしまっておくよ...もう少し落ち着いてから決めるといいよ」
アオイ「はい...」
役人は即答できなかった。
この可哀想な子を過酷な環境に送る...
とても今決められる話ではなかった。
しかし1ヶ月経ってもアオイの決心は変わらなかった。
そして正式に手続きがとられ、アオイの入隊が決まった。
軍隊経験のないアオイは基礎訓練から始めることとなり、同世代の若い志願者たちと一緒に訓練を受けるため、タスクフォース本部に移動することとなった。
ここで半年の基礎訓練の後、適正ありと判定されればアオイは晴れてタスクフォースの一員となり、専門訓練を受ける。
故郷に居場所を無くしたアオイは、同じく故郷を理不尽に奪われ、家族を奪われ、虫に対する復讐心に燃える若者たちとの共同生活が始まった。
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