episode.3襲撃
特殊部隊に救出されたアオイはハワイのアメリカ軍統合本部に案内された。
そしてその日にアオイは夢を見た。
アオイは鳥になったような、地面を空中から見下ろしていた。
そして地面には無数の虫がいて、全員が同じ方向に進んでいる。
そしてしばらく進むと街に出た。
そしてアオイはひときわ高いビルの屋上に向かって飛んでいく。
そしてビルの屋上が近くなるとそこには1人の人間が立っているようだった...
そして地上からあがる悲鳴...
アオイ「ッ!!!!...夢...か...」
アオイは汗をかいていた。
エアコンの温度を下げてまた眠ることにした。
翌日以降からアオイに対する情報の確認が行われた。
それ以外の時間は軍関連施設ということと、唯一の生存者ということで、アオイの行動はある程度制限されたものの、比較的自由に過ごせた。
施設の人は皆優しく、日本語ができるスタッフをつけてもらい、必要なものがあれば揃えてもらえた。
ここでもアオイは巣の様子や、虫の繁殖方法について繰り返し確認された。
兵士「すまないね、辛い思い出だろうけど、人類のため何か少しでもヒントが欲しいんだ」
アオイ「大丈夫です...」
兵士「君が見たのは人間から産まれる蜘蛛だったんだね?そしてその大きさはバレーボールくらいと...」
アオイ「はい...」
兵士「あと他に見た卵はこのような形だったかい?」
アオイ「はい、そうです」
兵士「ありがとう、これは蟻の卵だ、他には幼虫とかはみなかった?」
アオイ「池に...池に入る虫はいろいろいました」
兵士「池...か...なにか池にはあったかい?」
アオイ「いえ...ですが周りに花が咲いていました」
兵士「地下に花...か...どんな花だった?」
アオイ「紫色で花びらがギザギザ?とがっているようや花だったと思います」
兵士「うんうん、あとは無数の死体があるへやがあったと...」
アオイ「はい...うっ!」
兵士「ごめんごめん、今日はもう大丈夫だよ、今度はその花について教えてね」
アオイ「ごめんなさい...」
兵士「いや、君みたいに辛い思いをした子に、それを掘り返すようなことをしている私達が間違っているんだよ...でも今は君しか頼ることができないんだ...本当に申し訳ない...」
* * *
あれ以来毎日見る夢、風景や街並みはいつもちがう。
しかしアオイが空を飛んでいることと、飛んでいく先に人間がいることは変わらない。
そしてその人間の顔は確認できない。
アオイは医師にも相談してみた。
医師「それはあれだけの体験をしたんだ、夢に出るのも不思議じゃないさ。安眠できなくて辛いかもしれないけど、時間が必要なんだよ」
とのことだった。
アオイ「はい...」
考えても仕方がない。
いつかこの夢を見なくなる日がくるだろうとアオイも深く考えないようにした。
そしてアオイの帰国が決まった。
家族を失ったアオイは政府関連の施設でしばらく過ごし、その後の身の振り方を決めることとなっていた。
* * *
アオイは輸送機で日本に帰国することとなっていた。
ハワイと日本の間は虫の侵攻を受けておらず、数少ない人間が支配している空域だった。
ここは蜂型の航続距離ギリギリであり、海を渡れない虫たちは途中に拠点がなく、片道燃料となることから、飛行機に対して攻撃をしてこなかったのだ。
隊長「アオイ、ありがとうな。元気で暮らせよ。必ずいつか辛い思い出を克服できるはずだ」
隊長はそう言うと制服に着いていた勲章?なのか綺麗な布をアオイに渡した。
アオイ「ありがとうございました、命を助けていただいたのにお礼らしいお礼もできなくて...隊長さんもお元気で。また...」
また会いましょうと言いかけたアオイは途中で止まった。
相手は兵士だ、明日の保証なんてない、そう考えると続きの言葉は出てこなかった。
アオイを乗せた飛行機が離陸する。
快適とは言えない軍用機だが、故郷に帰れる嬉しさがそれを気にさせなかった。
機長「お嬢様、目的地までは8時間の長旅です。むさ苦しい男しかありませんが、ぜひ快適ではない空の旅をお楽しみください」
機長がふざけてアナウンスをする。
そこにいた兵士たちからブーイングや笑い声が起こる。
アオイもつられて笑い、外を眺める。
この機の搭乗員たちも、優しく親切だった。
アオイは少し緊張していたのもほぐれ、リラックスしながら差し入れのお菓子やジュースをもらっていた。
* * *
快適ではなくとも、楽しい空の旅。
搭乗員たちに英語を教えてもらいながら談笑していた和やかな空気が突如張り詰める。
慌ただしく動く搭乗員。
何事かと聞くと、虫の大群がこちらに向かって飛行してきているというのだ。
急遽ハワイや、日本、海に展開していた空母打撃群から戦闘機がスクランブルする。
非武装の輸送機では蜂に襲われればひとたまりもない。
幸い虫より先に戦闘機が到着し、蜂と激しい空中戦を展開する。
次々に撃墜される蜂と戦闘機、その中を輸送機は全速力で潜り抜けていく。
イージス艦やドローンも到着し、戦況は人間側に有利となる。
輸送機も4発あるエンジンのうち1つを破壊されたが、問題なく飛行できるという。
搭乗員「なんでこんなところに蜂が...今まで飛んできたことなんてなかったのに...」
アオイ「まさか...私の...せい?」
搭乗員「いや、まぁ確かに君は重要な情報を持っているが、虫はそんなこと知らないはずだ...それにそこまでして狙う意味もわからない」
アオイ「はい...」
途中虫の襲撃もあったが、なんとか日本にたどり着いたアオイ。
しかしお出迎えはなく、そそくさと車に乗せられて、施設へと向かうこととなった。
そしてこの後アオイは社会に振り回され、自身の道を決めることとなる。
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