第七章 空戦

「やはり追ってきたな烏ども……真の力を引き出したこの私に敵うと思うなよ!」 

 オウマは追いかけてきた烏を尻目に更に高く飛び立ち、羽に霜がつきながらニ羽をどんどん引き離していく。


「そらっ」

 雲を抜け、満月が体よりも大きく見えるほど上昇した時、鋭い風切り音を立てて彗星の如く急降下を仕掛けた。

 「クッ」

 避けた烏ニ羽は左右に別れると周りを旋回し、挟み撃ちとなる形を取る。

 しかし、オウマはこの状況をものともせず

 「どうした!さぁ取り返しにかかってこい!」

 様子を見るニ羽へ挑発を続けた。挑発に乗ってがむしゃらに攻撃しに来れば戦いやすく、来なければあの影達の時間稼ぎになる。


 ニ羽はこのままではらちが明かないと判断し、まずアマトが突撃しに来た。

「来たな」

 待っていましたとオウマは突撃を軽々いなし、腹へ鋭い蹴り込みを入れた。

「グッ!」

 甲冑の様な羽を持ってしても強烈な一撃を食らったアマトは大きく体勢を崩し、隙ができる。

「もう一発!」

 回し蹴りで更に追撃をかけようとしたその瞬間、マソラが複数の羽を乗せて旋風を放った。


「チッ」

 オウマの足にかすり、風に乗っていた羽刃により鮮血が飛び散る。

(さすがは私のしもべ達を切り裂くだけはある。だがそう何回も使えるものではあるまい……)

 マソラの旋風はオウマを狙おうと激しく吹き荒れる。それを避けながら観察すると、羽と羽の間にわずかながら隙間ができていた。

(そこかっ)

 オウマは体が触れないギリギリの距離を保ち、旋風に沿ってマソラへ接近する。

「ガァッ!」

 まさか接近して来るとは予想しなかったマソラは距離を取ろうとするが羽を使い過ぎた代償か、スピードが出せずにいた。

「遅いぞ」

 一瞬で間合いを詰めたオウマは翼の僅かな隙間を爪で切り裂いた。


 「ギャア!」

 マソラは痛みに苦しみながら切り裂かれた太い血管から鮮血が勢いよく吹き出し、オウマの白い体を赤く染めていく。

(フフフ……!クフフ……!)

 この光景にオウマの心に興奮が湧きだつ。

 「さぁ今楽にしてやる!」

 墜落していくマソラにトドメとして、鋭い爪で烏のうなじへ蹴りを入れようとした。だが


「何だ?」

 何者かの手がオウマの足を掴んでいる。困惑を隠しきれずにいるとその手はギリギリとオウマの足をへし折ろうとし始めた。  

 「馬鹿な!」

 その手から繋がる腕、体へと視線を移したオウマが見たものは、まさに馬鹿なと言わざるを得ないものだった。


 何とアマトに腕が生え、骨格が変わろうとしていたのだ。腕が発達していくにつれて翼は背中に移動し、羽も甲冑の形を取ろうとしていく。そうしてアマトは甲冑をまとった鳥人の形態となった。

 アマトは両手でオウマの両足を掴むと体を回転して胸の装置へ蹴りを入れる体勢を取ろうとする。

 

「小賢しい真似を!」


 オウマは口から光弾を連射しアマトの顔に浴びせていく。光弾は大きく弾け、耳をつんざく爆音と爆風が起きる。やがて足の感触が無くなり光弾を止めるとアマトの姿が見当たらない。

 

(どこだ!)

 空を見渡すと、下方にマソラを腕に抱えているアマトがいた。

「逃がすか!」

 追撃をしようとするオウマだが一筋の光が顔へ射す。それは空の根本から顔を出している橙色の朝日だった。

 

 「夜明けが近いか……まぁ良い。近い内に決着はつけられる」

 ピィーーと呼びかけると影達が雲を抜けてオウマの周りに集まり始めた。

「行くぞお前達」

 影達を引き連れてオウマは水平線の彼方へ風を切り、アマトはマソラを抱え、地上に向けて降下するため雲の中に消えていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

甲神戦士 ヤタガラス ~孤独な巫女と霊瑠(レール)砲 ~ 古知 新作 @caps_lock

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画