第20話 婚約破棄は振り向かない

 突然ですが、この作品は昔放映されていたいわゆる大映テレビドラマをモチーフにしています。

 ありえないくらいに起こる事件、ツッコミどころ満載の展開、大袈裟な演出やセリフ、いじめ、不良……それでも、当時の視聴者達は私を含め、非常に楽しく視聴させて頂いていたのではないでしょうか?

 途中いくつか紹介しましたが、改めてざっくりと紹介します。

 「ヤヌスの鏡」

 多重人格がテーマのドラマ。

 主人公の杉浦幸さんが演じる、もう一人の主人公、夜になると現れる大沼ユミのセリフは別の声優による吹き替えだそうです。


 「スクール☆ウォーズ」

 校内暴力が蔓延する高校を舞台に、ラグビーで日本一になった高校の実話をベースにした物語。

 終盤、立て続けに登場人物が死去してしまう展開が印象的でした。


 「スチュワーデス物語」

 『教官!』『ドジでのろまな亀』のセリフも印象的でしたが、個人的には教官の元恋人の義手の女性が毎回手袋を口で引き上げ、見せるシーンに息を飲んだ記憶があります。


 「不良少女と呼ばれて」

 同時期に放映されていた他局のドラマ「積み木くずし」と双璧であろう、更生する姿を描いた作品でした。

 実話ベース(小説)ですが、かなりオリジナルストーリーや演出が加えられたと言います。


 「少女に何が起こったか?」

 この作品はシリーズの中でも個性的なキャラが登場する作品でもありました。もちろん、毎日12時に現れる刑事のセリフ「おい、うすぎたねぇシンデレラ」は深く心に残っています。


 「ポニーテールは振り向かない」

 バンドをテーマにした若者の友情や苦難を描いた作品。同じ頃ちょうどイカ天などバンドブームがありましたね。私もドラムをしていました。


 え? ありえなくない? あれはどうなったの? と今見たら思いますし、私の今回の作品もそんな気持ちを頂いたと思います。

 けれども、当時は大映ドラマシリーズに胸躍らせ、楽しく視聴し、最新話翌日は友人と色々話した記憶があります。


 余談ばかりでしたが、早速最終話始まります。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 「ミミンさま――」


 「駄目だよイソプ。様はいらないよ。あなたは使用人でもなんでもないんだから」


 「あ、そうか! わかった」


 「もうすぐ12時だから早く寝ないと駄目だよ? 明日から学校行くんでしょ」


 「はあい……」


 私に起きた衝撃的な約2週間の出来事。

 今はその一ヶ月後。

 何から話しましょうか?


 そうですね。まずはアンドレアス家に買い取られ働いていたイソプと言う少女は私が引き取り、一緒に暮らしています。


 あの事件の翌日、アンドレアス家は長年の人身売買が周知にさらされました。そして夫妻は逮捕され、更に私が巻き込まれた通り魔事件の首謀者としても関与している事が明かされました。


 私は翌日から実家に戻りました。

 もちろん皇太子様からの再度のプロポーズもありましたが、丁重にお断りしました。


 だってさ、あの事件の時に私の言う事を信じてくれなかったんだもん。

 今思うとあの時に、信頼関係と言う夫婦になる人間同士の大切な絆が無くなったのかも知れません。それは愛情があるないとかは関係ないと思いました。

 皇太子様は魅力的な方です。

 けれども、夫婦として長い時間を共にすると言う事は考えられなくなってしまったのです。私は間違っているでしょうか?


 それから……


 「え? ヤヌスさんのお墓ないの?」


 アンドレアス家夫婦が逮捕された事でヤヌス様の亡骸は誰も引き取る方がいなくなったそうです。


 私はお婆さんの遺骨とヤヌス様の遺骨を同じ墓に埋めて頂く様に、皇太子様に最後のお願いをしました。

 丘の上にある、広大な墓地内で二人は一緒に眠っています。


 ボーンボーンボーン


 私の小屋にあった時計は頂きました。


 コンコンコン……


 「どうぞ」

 

 「ミミン。遅くなってすまん」


 「いいよ別に。警備長官様は忙しいんでしょ?」


 「まあな」


 「そうだ。久しぶりにあれやってよ」


 「またか?」


 「うん。ハイ、入り直し」


 「……仕方ない」


 ガチャ


 「おい、欲望まみれのシンデレラ!」


 「……やっぱり、あの時とは迫力が違うね」


 「あれはあくまで仕事だからな」


 「私ね、今でもあなたのホントの姿がわからないよ。ほんとにあの時は酷かったよね?」


 「それを言うなよ。もう何度も謝ってるじゃないか……」


 「うそうそ。ごめんね」


 私はダイエイさんと婚約しました。


 信じられないかな?

 まあ、色々あったんだ。

 あ、でも大丈夫だよ。

 一回喧嘩したけど、もう髪は鷲掴みにされてないから。

 それに髪は二度と掴みませんって誓約書も書かせたしね。


 人間って何が起こるかわからないよね。

 でもさ、私は過去は振り向かない。

 婚約破棄された過去も振り向かないよ。


 「おい、ミミン! ここに置いておいたブローチがないぞ?」


 「知らないよ。無くしたなら、新しいの作ってあげるよ」


 「駄目だ。あれじゃないと……」


 今度は婚約破棄はされないよね?


 〈完〉


 あとがき

  最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 重厚な大映ドラマの様にもっと色々な描写をしたかったのですが、これが私には限界です。

 でも一つだけ自分を褒めたいのはミミンと言うネーミングです。覚えやすいし、印象的だと思いませんか?

 

 ありがとうございました。

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婚約破棄は振り向かない。 @pusuga

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