第19話 長い夜
「刺されたのは予想外だった……ヤヌス嬢が自ら命を絶ったのも」
結果的にダイエイさんは刺されましたが、深手は追っていませんでした。
衣服の下に皮の胴当てを装着していたからです。
そして、お医者様と数人の衛兵が医務室に入って来て、黙ってガタガタと震えているアリエスさんを捕まえ連行して行きました。
これも、運ばれた直後お医者様とうち合わせしたとの事。
え? ちょっと待って?
て、事は寝たふりしてた?
あわわわわ……
私、ずっと手を握っていたんだけど?
私は自分の顔が赤く、心臓も赤く激しく動いている事を感じました。
「イタタタ……傷は浅かったが刺されたのは事実だ」
最低……なのかわからないけど、なんなの?
「全部はよくわからないけど、とにかく無事なんだね?」
「ミミン。お婆さんの日記には事実のみが淡々と綴られていたと言ったよな?」
「あ、はい……」
ほんとに話しを聞かない男だよ。
「そこにも人身売買の事が書いてあった。まあ、それは後で話す」
「うん。わかった。とりあえず、この後どうなるの?」
「ヤヌス嬢が俺を刺した事で、すでに警備隊がアンドレアス家に向かっているはずだ。予定は早まったが間もなく逮捕だろう」
「…………」
「ヤヌス嬢が亡くなったのは残念だが、皇太子のお妃になると言う教育と洗脳をされ、幼い頃からストレスを抱えていた……それがもう一人のヤヌス嬢を生み出した。ここからは俺の推測だが、結婚式で皇太子がミミンに告白した事で罵倒や叱責を浴びたのだろうな。出来損ない……家には必要ない……等のな」
「…………」
「そして、ここにやって来てミミンを刺そうとした。こんな感じだと思う。まあ、これから調べて色々謎も明かされていくだろう」
ほんとに色々な事があり過ぎだよ。
まだ理解出来ない事はたくさんありますが、その中でも――
「あのさ……」
「なんだ?」
「じゃあ、もう12時には……」
「ああ。ちょっと寂しいが、ミミン……お前への尋問はこれで最後だ。欲望にまみれたシンデレラ……いや……とっても髪がサラサラなシンデレラ」
「…………」
正直、気持ち悪い。
「あと、ちなみに……ダイエイさんがすぐ髪を掴むのは……」
「まあ、なんと言うか、生半可な演技ではヤヌス嬢に怪しまれてしまう」
「でも、髪を掴む必要なくない?」
「それはお前が予想以上に痛いところを突いて来たからな」
確かに、警備長官の肩書はダテではないけれど、演技や仕事と言う理由で毎晩あそこまで嫌がらせ出来る事が疑問だよ。
「わ、わかりました。私はこれからどうしたら……」
「……皇太子と結婚したらいいじゃないか?」
「……出来ません。私がすると思いますか?」
「まあ、しないだろうな。お前は髪のみはサラサラだが、金蹴りする様な女は逆にお断――ウグッ!」
私は、再びの金蹴りで今までの理不尽さの憂さ晴らし。
「馬鹿っ!」
「ミミ……ン……お……ま……」
「もう、夜遅いからここに泊まっていくから。話し相手になってよ。いいでしょ?」
「わ……わかった」
さあ、何から話そうか。
夜は長いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます