エピローグ 君だけの星になりたい眠れない夜を優しく照らせるような
あの夜、愛美は僕のことを強いと言ってくれた。
でも、僕は自分が強いとは思えない。
僕には前を向き続ける力があると言ってくれた。
しかし、僕がそんなに格好いい訳がない。
むしろ、強くて格好いいのは愛美の方だ。
あの後吹奏楽部に復帰し、八月末の定期演奏会では全楽器での曲以外にフルートアンサンブルにも出ていて、あの演奏は本当に良かった。
勉強にも精を出して、意外な大学を受験し、そして合格してしまった。
大学でも吹奏楽部に入り、楽しくて堪らないといった様子でフルートを吹いている。
学部は教育学部で、吹奏楽部の顧問になるのが夢らしい。
「早く立ち直らなきゃな」
明日は授業と部活で必ず顔を合わせることになる。
僕を強いと言ってくれた奴に、情けない姿を二度も見られる訳にはいかない。
通う大学も所属する部活も同じになってしまったあいつの、昔から変わらない、この先もずっと見ていたいと思える完璧な笑顔を思い浮かべる。
「あいつがなるべく、眠れない夜に苦しむことがありませんように」
故郷より遥か東のまちの星空に、そう願った。
眠れない夜に 西見伶 @reireinovellove
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