第10話 裸の付き合い

(お風呂場のドアを開ける)


「ご主人様、入りますね」


(動揺して座っていた風呂椅子から落ちる)


「——許可を取るなら開ける前にしてほしい?

 そんなこと言って、ご主人様が私のお願いを断ったことなんて一度もないじゃないですか」


「大丈夫ですよ、私もう一個新しい椅子を買ったので。

 これでちゃんとお背中流せます」


(そういう問題じゃ……)

(椅子をご主人様の後ろにおいて座る)


「それではシャンプー、やっていきますね」


(シャンプーをボトルから出して、手に伸ばす音)


「ご主人様、少し髪が伸びているんじゃないですか?

 もうかれこれ半年以上髪を切っていないですよね」


(髪をシャンプーでごしごし洗う音)


「……ご主人様とお風呂場にいると、最初にお家に来た時を思い出しますね」


「ご主人様にあわあわのヌルヌルをぶっかけられたことも」


「――そんなことはしていない? そうでしたっけ?

 私のみだらな姿に終始興奮していたことしか記憶が……」


(空いてる右手で彼女のお腹をつまむ)


「ひゃいっ!? ……ご主人様、ごめんなさい。

 ……えっち」


「――でも気持ちよかったことには変わりありませんので、今日は私がご主人様の頭をあわあわにしますね」


(小刻みに指を動かす音)


「かゆいところはございませんか? 痛かったら言ってくださいね。

 我慢はほんとーに良くないので」


「……」


(笑いをこらえきれずに吹き出す)


「へへへ、今日の晩御飯はにわとりですよね? ……僭越ながら、私ご主人様の頭をかっこよくしてみました!」


(よく見ると、髪でとさかのようなものがつくられている)


「ご主人様を、食べちゃうぞ~。がおー。

 ……ってやめてください!

 頭をそんなに振ったら泡が飛び散るじゃないですか!」


(浴室と彼女が泡だらけに……)


「――もう、私の傑作が……仕方がないので泡を流しますね」


(シャワーで髪を洗い流す)


「それでは次にお身体を……」


「——そこまでしなくていい? いえいえご主人様の奴隷として、全身をすみずみまで洗わせてください! 私の甲斐甲斐しい奴隷根性を見せる時なので!」


(肩を落として、ため息をつく)


「ど、どうしましたかご主人様!? 何か至らぬ点がございましたか?

 やはり、先ほどのシャンプーが気に食わなかったのでしょうか!」


(立ち上がって、彼女の後ろへと回る)


「えっ? これは……」


「私は何も分かっていない? いえ、私はご主人様のことならすべて……」


「——自分のことが全く分かっていない?」


「私とご主人様がどんな関係なのか、今から分からせる?

 それは、どういう意味でしょうか?」


(シャンプーをボトルから出して、手に伸ばす音)


「ご主人様、そのわなわなした手で何をするおつもりで……?」


「わ、分からされちゃうぅぅ!」


(こつんと頭にチョップする)


「——はい、静かにします……」


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現世でペットを飼えなかった俺、異世界では可愛いボロボロ獣人奴隷を癒しまくる 智代固令糖 @midori3101

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