彼女の《本当》が知りたいけど

@toripuru310

それ以上でも無く、それ以下でも無い話

オレとアイツとの出会いは、なんてことの無い偶然の積み重ねだけだった。


陰キャだった俺、それが変化したのは、バイト仲間達との交流だったんだ。


コンビニでバイトを始めた俺に、色々な人達が絡んで来た話。

特に、女性が多く絡んでくれた。

ホントにありがたい話だ。


高校で始めた、コンビニのアルバイト、学校では陰キャの俺がここでは陽キャの仲間入り。


そんな中で、同い歳の美人さんとデートまですることが出来た。

でも、そんな自分を肯定出来る程自分に自信がある訳じゃない。


ある時、同じ学校で一緒にバイトをしていたヤツが、レジの金をチョロまかした。

そして、同じ学校の俺も共犯として解雇された。

仲の良かったオーナーの娘が庇ってくれたけれど、社員じゃない高校生のバイトに、真偽の別はさて置いて、雇用を継続すると言うリスクを考えれば、解雇と言うのは当たり前の話だった。


それでも、仲間同士の付き合いは続いていて、俺はデートに行ってくれた美人の彼女に告白をした。


「もう少し早く言ってくれたらOKしたのに、、、」

「今は、好きな人が居るから」


そいつは、俺が解雇された後にバイトに入った元中の同級生だった。


そして、その仲間の中で先輩でもある人が一流企業に就職することが出来たんだ。

俺も、ダチも先輩の仕事場まで、クソうぜぇ爆音のするバイクで遊びに行ったりしてた。


俺もダチも先輩と一緒に仕事をしたくて、先輩に入社経路を聞いたら、ある専門学校を卒業して入社したとのことだったから、翌年2人で受験したんだけど俺だけが受かった。


学校に通い始めるも、夜中にバイクで爆音を響かせて走っていたバカと、真面目に通う生徒では、その取り組みには明らかに違いがあったし、俺はダチが居ないこともあって、いい加減な学生生活を送っていたっけ。


専門学校と言っても、学校だから新卒の学生が多くて、俺みたいに社会に出た後だと同じ歳の人は少なくて、年齢は学卒を除くと少しバラケていた。


そんな中、髪を刈り上げてパーマを掛けた、少女漫画に出て来るようなオシャレさんが居た。

俺の第一印象は、《やリマン女》だったんだけど、そう言う俺は童貞だったんだよね。


学校には爆音バイクで通って居たんだけど、オシャレさんとも話すことがあって、「今度乗せてよ」なんて言われたけれど、俺もそんなに初心じゃ無いんで、社交辞令なこと位分かってたんだ。


そして、俺は免停になった。


累積3回目の免停、5点で取り消しなので、学校へは自転車で通っていたんだけど、学校の帰りにオシャレさんに声を掛けられた。


「あれ、今日はバイクじゃないんですか」


隣には歳下の男が居て、何故か俺に縋るような目をしているオシャレさん、、、


「あぁ、バイクは免停なんで乗れないんだ」


そう、返す俺。


「じゃあ、一緒に帰りませんか?」


と、誘ってくるオシャレさん。


なんで???隣に男居るでしょ???


そう思って、断るつもりで自転車を漕ぎ出そうとすると、縋る様な目で近寄る彼女。


仕方なく自転車を降りて、最寄り駅まで15分程を一緒に歩くと、オシャレさんは歳下男から映画に誘われていたんだと。


「一緒に行きませんか?」


何故かオシャレさんに誘われた。


映画、思い出す過去。

振られた彼女とのデートプランで、その帰りだったらOKしたのにと言われていたから、、、


「俺、罰金も払って金無いんだよね」


無難に返す俺。


取り付く島も無い俺に、オシャレさんが眉を八の字にして微笑む。


隣の歳下男よりも、俺との会話が多いってダメじゃん。

と思いつつも、オシャレさん美人なんだもん、ついつい一緒に歩いてしまって。


結局、3人で映画を観ることになって、新宿の映画館前で待ち合わせ。


3人でSF物の映画を観て、俺は早々に退散する予定が、美人のオシャレさんも用事があるとの事で解散に。


俺は地下鉄の葛西方面へ、彼女は中央線の荻窪方面へ、歳下の彼は知らん。


俺が、地下鉄へと階段を降りようとすると、

「一緒に帰りましょう」

と、オシャレさんが俺の後を付いて来た。


「アイツはどうしたの?」

と、聞く俺に、

「映画館の前で別れました」

と、、、


「用事は?」

と、聞いたら、

「用事なんて無いですよ」

だと???


「ファミレスでも行きませんか?」

そう言って俺の脇に立つ彼女。


場馴れしてやがるな、俺だって振られた回数なら負けないぜ!!

なんてね。


ファミレスに2人で入って、席に着く早々に謝られた。


「ゴメンナサイ」

「私、歳下とか興味無いんだけど、彼に皆の前で誘われて、断るのも何だし2人で行くのは嫌だし、と、思ってたら貴方が居たので巻き込みました」


とのこと。


で、彼女から映画代の代わりにここは奢るから、好きな物を食べてくださいって言われたけどさ。

女に集る訳にもいかずドリンクバーだけを頼む俺。


映画館から、終始無口だった彼女は俺と2人になると饒舌だった。


「今度、バイクの後に乗せて下さい。」


「えー、それホントに、車の方が良いんじゃないの?」


「オートバイって乗ったことないから」


キャッキャウフフな彼女。

大丈夫、これも社交辞令だって知ってるし、、、



そして、翌日学校へ。


俺は自転車こぎこぎ、


途中、彼女と遭遇。


隣には歳下男が距離を置いて歩いている。


「あっ、まだ自転車なんですか?」


俺を見つけた彼女が掛け寄って来た。


俺が停まると、ぴったりと横に来る彼女、、、


歳下男よりも近い気がするが、、、


「いつ、オートバイに乗せてくれますか?」

屈託の無い顔で歩み寄る彼女に、憎々しげに俺を睨む歳下男。


はぁ、「免停が明けたらね」そう返す俺。

もちろん社交辞令ですよ、面倒はゴメンなので、、、


「免停って、いつ終わるんですか?」

食い下がる彼女。


マジか?


俺の周りには、濃い化粧で水商売見たいな女しかいなかった。

こんな、オシャレ雑誌の中にしか居ない様な人なんて、、、

免疫ねぇよ。


結局、免停明けに2人でツーリングに行った。

バリバリ五月蠅いバイクの後ろに彼女を乗せて、途中白バイに追いかけられて、「逃げるな、後の女の子落ちそうだったぞ」と怒られた。

ちなみに、白バイ隊員は彼女の「ゴメンナサイ」で赦してくれたからラッキー。


別れる前にファミレスに寄ると、凄い楽しかったとのこと、サイレンを鳴らした白バイに追われたのなんて初めてだと興奮してた。


俺も、白バイは初めてだけどパトカーなら何回もあるよ。

とは言えなかったけどさ。

まぁ、キップ切られてたら免取りだったから、彼女様々だったけどね。


その後、学校で彼女からのアプローチが多くなった。

鈍感な俺でも彼女の好意は何となく分かったけど、俺とは住む世界が違っていて現実味が無かったんだ。


そして、お昼休みは彼女が俺の隣へ、当たり前の様に来るようになった頃、


「私、あの歳下男君ともう1人別の歳下男君(ジャニーズ系イケメン)から、付き合ってって言われたんだけど、何て答えたら良いと思う?」


と、俺に聞く彼女。


なんて答えれば良いんだよ。

俺だって分かってるよ。

彼女が俺に、、、


「断われば良いじゃん、、、」


「、、、」


「そんでさ、俺とつき合うか?」


「うん!」

嬉しそうな顏して言うんだよ。


「、、、」


「それじゃあ、2人には断ってくるね」


そう言って、走り去る彼女。


彼女を見送る俺は、

「遊んでそうだし、コイツで童貞を卒業させて貰おっ」

なんて、思ってた。

超ゲスいけど、その頃の俺ってそんなもんだったんだよね。


で、


直ぐにやった。


彼女も初めてだった。


だった???


血は出たよ。


でもさ、女って毎月あるでしょ?


痛いって言ってたけど、彼女が初めてなんてやっぱりオカシイ。


学校でも、早々と男2人から告白される美人さん。


専門学校だから彼女は一度就職した後、失業保険を貰いながら通っていたので、俺のバイト代よりも稼ぎが良くて、俺はタバコを自分で買わなくなった。

その彼女は、短大の2年間と1年就職してこの学校に来る間、彼氏が居ないとか身体の関係が無いとか、この美人さんが到底ありえない。


因みに、俺は歳下だったみたい。

それを告げると、

「そんなのどうでも良いよ」

だと、歳下に興味無いんじゃないの?


そして、今、俺60歳。

     彼女61歳。


子供にも恵まれ、あの頃と変わらず甘やかされてます。


あの時、俺は確かに童貞でした。

しかし、彼女が本当に処女だったのかどうなのか、今更聞けないしね。

その答えを、きっと彼女は墓場まで持って行くんだろうな。








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