第9話 魔王には勝てませんでした……

 パチンッ!! という小気味の良い音が響く。

 それと同時に、シャーロットの顔に激痛が走った。


 アイナにビンタされたのは、マルクではなくシャーロットだった。


「このお馬鹿がぁあああっ!!!!」


 アイナは続けて左手でシャーロットの頬を思い切り引っ叩いた。


「いだだだだだだ!!??」

「なぁにが『私におまかせください』よ! 私より先に彼の童貞を奪うってどういうつもりなのよ! どうせシャロのことだから、私に無断で魅了でも使ったんでしょぉおお!!」

「ごっ、ごめんなさいぃいい!!!」


 シャーロットは涙を浮かべながら謝った。


「まったくもぉ!! 油断も何もあったもんじゃないわ……ほら、早く立って」


 アイナが手を差し出すと、シャーロットは恐る恐るその手を掴んで立ち上がった。


「うぅ……ごめんなしゃい、お姉様……」

「まったくもう……。どうしてウチは、こうも欲望に忠実な子ばっかりなのかしらね」


 アイナは大きくため息をついた。


「まあいいわ。とにかく、あなたは私の妹である前に、部下でもあるんだからね? これじゃあ、他の子たちに示しがつかないじゃない」

「も、申し訳ありません……」

「最初は私。次はシャロ。その次が他の子たちよ。……分かったわね?」

「は、はい。かしこまりました。」


 シャーロットはアイナに叱られたことでしょんぼりとしていた。


「な、なぁアイナ……。俺がこの城のサキュバスたちにシェアされるのは確定なのか?」

「ダーリンに発言の許可はまだ出してないわよ」

「…………すんませんでした」


 ――どうやらマルクの第二の人生も波乱万丈になりそうだ。



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敗北勇者の生存戦略。サキュバスの魔王に「ここで死ぬか私と結婚しろ」と究極の二択を迫られました。世界を救うために今日から魔王の夫になります。 ぽんぽこ@書籍発売中!! @tanuki_no_hara

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