アダムとイブと小林

悪本不真面目(アクモトフマジメ)

第1話

 イブのぷくっと膨らんだ胸を小林は見ていた。そのことにイブが気づき小林の手を握った。小林は驚いたが、その後イブはその小林の手を胸へと当てようとする。

「やめろよ」

「どうして?」

イブは小首をかしげ真ん丸な目で小林を見つめる。小林はそんな純粋なイブに困るしかなかった。

「僕とはダメなんだよ」

「どうして?」

「アダムならいい」

「どうして?」

「それが運命だからだ」

「ツマラナイね」

イブは右足で小林の膝をこちょこちょした。小林は笑うのを我慢しているが、それを面白がって更にイブはこちょこちょした。

「おい、だからやめろよ!」

小林は顔が赤くなった。

「おいしそうな色」

イブはその色を気に入った。下をペロっと舐め小林の耳元で囁いた。

「齧っても良い?」

小林は口をイの形にしたが、断った。

「ダメだ。齧るならヘビにそそのかされた果実を齧るんだ」

「随分具体的ね」

「それが運命だ」

「ねぇ小林。私の唇とあなたの唇を合わせてみない?」

イブは突然こんなことを思いついた。

「な、なんで急にそんなことを!」

「さ、でも確かめるのにはいいと思うの」

「キスをするということか?」

「キス・・・・・・いいねキス」

イブは唇をウの形にした。

「してもきっとぎこちないぞ」

「どうして?」

「映画で観たんだ。タイムスリップする映画」

「エイガ・・・・・・?おもしろいの?」

「面白い、バック・トゥー———ん!」

小林がトゥの形をした時にイブは唇を合わせてきた。

「あれ?」

「な」

「・・・・・・もう一回」

「・・・・・・もう分かっただろ」

「じゃあ私の胸を」

「———いい加減にしろ!無理なんだ僕たちでは釣り合わないんだ」

イブの目から水が流れた。それはきっとこの地球にはこれから必要になるのだろう。そんな清らかな水だった。

「小林を見ると辛い」

「僕もだよ」

「私も連れてってアナタのところへ」

「おーい、イブ、小林そんなところにいたのかー」

アダムが二人に声をかける。イブと小林は何もなかったようにアダムの方へと走っていった。


 その後小林は何事もないようにいなくなっていた。次第にアダムやイブの記憶からも薄れていった。ただイブが流した水は湖となっていた。その湖を見るとイブは唇がふるえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アダムとイブと小林 悪本不真面目(アクモトフマジメ) @saikindou0615

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ