『24度では寒すぎる』

やましん(テンパー)

『24度では寒すぎる』

 『これは、ジョーク的フィクションです。』




 地球環境監理局は、地球すべての気象をコントロールしている。


 公平、公正、的確、迅速。


 それが、モットーである。


 しかし、各地の環境的使命、歴史、未来、経済、利害関係、人権……


 あらゆることがらを満足させることは、至難の技である。


 それを可能にしているのは、実行している責任者が、超スーパーコンピューター、AIアニーさんであるからだ。


 その決定には、誰も逆らえない。


 もし下手に逆らったりしたら、そく、死刑である。


 ま、とはいえ、世の中には、常に背景というものがある。


 アニーさんを管理しているのは、いったい、誰なのかは、公表されていない。


 しかし、管理者は毎月変わる。


 指名するのは、アニーさんである。


 指名されても、それを公表してはならない。


 逆らうと、死刑である。


 管理者に指名されたら、いったい何をするかというと、アニーさんからスマホに送られてくる質問に答えるだけである。


 『水は、足りているかい?』


 『暑いかい、寒いかい?』


 『食べ物はあるかい?』


 『うそついたこと、ある?』


 みたいな、感じである。


 それに、個人的な回答をすれば良いのである。


 管理者が、世界に何人いるのかも、人類は知らない。


 ちなみに、大臣とか、大統領とかはいない。


 まあ、地域の名残として、いろいろやっている場所はあるが、形だけで、ままごとみたいなものであり、実質的な権力はない。


 早い話し、もはや、人類にはなんの権限もないのである。


 アニーさんの上には、最高マザーAI さんがいる。


 地球の全支配者だ。


 おかげさまで、戦争はなくなったし、地域間格差もなくなってきた。


 AIさんによる支配には、結局のところ、悪いことが何もなかったのである。


 いまのところは。


 それは、翻って言えば、人類の勝利だったのだ😃


 人類は、ついに、完全平和を達成したのである。



 やましんは、なじみの蕎麦屋に入った。


 『にしんそば。よろしく。』


 『あいよ。なんか、いいことあったかい?』


 『なに。古いラジコンのバスを手に入れたんだ。』


 『ほう。そらすごい。もってきて、走らせてよ。』


 『わかった。じゃ、次回ね。』


 『地球は平和だな。しかし、アニーさんが登場して、なにが、一番変わったんだろうなあ。』


 やましんは、答えた。


 『なんにも。なんにも変わらない。お天気も、日常も生活もね。ぼくらは、ただ、はいはい、と言ってるだけだからさ。』


      🖥️


 その、やましんに、ついに、アニーさんから、管理者の指名が来た。


 やましんは、真っ青になった。


 しかし、誰にも知られてはならない。もし、誰かに知られたら、そく、死刑である。


 『24度では、寒いな。』


 やましんは、エアコンを25度にした。


 あせが、ぐっしょり出たのである。


 『25度では暑すぎる。』


 すぐに、アニーさんの、圧倒的なバーチャル映像が迫ってきた。   


 閻魔大王とその眷属たちの巨大な彫像が現れた、という感じである。


 『良いですな? やましんさん。うそついたら、すべて。この浄玻璃鏡に映し出されます。そのばで、首をはねます。いざ!』


       🗡️


 管理者の、トップは誰なのか?


 そのひとこそが、独裁者であろうが、まるで、わからない。


 やましんは、知ることがなかった。



      ⚔️🙇⚔️

 

  


 

 


 

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『24度では寒すぎる』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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