第2話

 ――それから約一時間ほどだろうか。

 アルノは二人に愛撫を続けられ、すっかり呼吸が乱れてしまった。

 このまま続けられたら、それこそおかしくなってしまうだろう。

 そんなアルノに対して、再び問いかけがくる。


「アルノさんは、私とセシア――どっちが好きですか?」

「……っ」


 答えないといけない質問なのだが、アルノは答えられなかった。

 だって、二人とも好きだから――この時間で、その気持ちに気付かされてしまったのかもしれない。


「もう、アルノって優柔不断なところあるよねぇ」

「仕方ないです。もうあと一時間ほど――」

「い、一時間は無里だって……っ」

「なら、どっちが好きか答えてください」

「りょ、両方! 二人とも好きだって!」

「それじゃあ困るんだよねぇ」

「何が困るの!?」


 思わず、アルノは声を荒げてしまう。

 だって――二人ともアルノのことが好きだと言うのなら、それにただ答えているだけなのに。


「んー? アルノが選んでくれた方が、ずっと一緒にいるって決めたの」

「……? それって、わたしが選ばなかった方は、どうなるの?」

「すぐにギルドを抜けようって話ではありませんよ。ただ――別の誰かを見つけないといけないかもしれませんが」


 別の誰か――つまりは、アルノが選んでしまったら、選ばれなかった方は違い相手を見つけるということ。

 当たり前と言えば当たり前なのだが、何故だかアルノの心にもやもやしたものがあった。

 二人とも、アルノのことが好きだというのに――アルノが選んでしまったら、どちらかは諦めるというのだから。

 そして、知らない誰かとくっつくと言う。

 ――それは、アルノにとっても認められないことで。


「……そういう話なら、わたしはやっぱり選べないよ」

「じゃあ、続けるしかないね?」

「そうですね」

「えっ!? 二人ともわたしが好きなら、わたしも二人とも好きでいいでしょ!?」

「そうはいかないんだよね。これは――あたしとお姉ちゃんの勝負でもあるから」

「しょ、勝負……?」

「はい、どちらが先にアルノさんを攻略できるか――これは私とセシア、どちらの愛が深いか、という勝負でもあるんです」


 ――それはもはや、彼女達の勝手な意地であった。

 つまりは、別に両方が好きでも問題ないのに、どちらかを選んでほしいという気持ちがある。

 その勝負に、アルノが巻き込まれた形なのだ。


「そういうわけで……夜はまだまだ長いし、頑張っていこうね!」

「はい。まだ始まったばかりですから……」


 二人は悪戯っぽい笑みを浮かべ、アルノに迫る。

 ――彼女達の長い夜は、始まったばかりだ。

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双子幼馴染に「どっちの方が好き?」と攻略されそうになっている話 笹塔五郎 @sasacibe

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