5.目的を知る
あなたが創作する目的はなんだろうか?
カクヨムで小説を書いて公開する。多くの作品が殆ど読まれない。それでも私達は時間をかけて作品を書いて公開する。
読者がそうであるように私達も作品を書く時間があるのなら意中の人に連絡してデートにでも行けばいい。今意中の人がいないのならファッション誌を読んでみてはどうだろうか。金銭が目的であるのなら仕事に役立つ資格の勉強をしたり、今日の学校や仕事の出来事を手帳に書き起こして今後どうするべきか書き出してみればいい。でも私達は創作をしている。
なぜだろうか?
答えは人それぞれ違う。大切なことは落ち着いて一度考えてみることだ。いくつかの目的に沿って実際に考えてみよう。
まず金銭が目的であるのなら小説を書くという行為はものすごく遠回りだ。さきほど挙げたように社会に役立つ実践的なスキルを身に着けたほうがよい。現役で「小説家で暮らしていると胸を張れる人」はきっと日本に500人くらいしかいないのではないのだろうか。なぜなら我々が年間に書店やAmazonで目にする書籍の数は500ないからだ。目に触れないものは売れない。つまりその消費者の目に触れる少ない席を奪い合うことになる。お金を貰うためには必ず人より優れていないといけない。つまり小説でお金を稼ぐことは日本の小説を書く人の中で500位以内を目指すことになるいばらの道だ。
また収入においても小説家は決して多くない。トップクラスの方であれば数億円の年収があると言われるが、おそらくそんな人は10人いないのではないだろうか。
そもそもこのカクヨムのトップページを開いてみれば可愛い絵柄のキャラクターが書かれた作品の広告が出てくる。小説の何割かはイラストの力を借りている。金銭が目的なら初めから漫画家を目指せばよい。
だがいいところもある。初期投資が少ない。今の時代に漫画になるにはまず液タブが必須だ。液晶がタッチパネルになっていて画面に書くことができるあれだ。液タブは便利なモニターなので接続するPCが必要になる。もちろん作画用のソフトが必要になる。漫画家は流行り廃りに敏感でないといけない。漫画は取り組む人が多いから、自分のアイデアをすでに誰かが描いているかもしれない。だから常にアンテナを張って読み続けなければいけない。ここにもお金がかかる。さらには競争率が非常に高い。時代を代表するようなセンスの塊でなくてはならない。週間連載、月間連載に耐える強靭な肉体と精神を備えて、そんな忙しさの中で編集者やアシスタントとコミュニケーションをとる。
前提条件を考えると自信を持って漫画家の適正があると言える人は殆どいないだろう。
小説は金銭に繋がる可能性は漫画より低いかもしれないが初期投資が殆どかからず、流行の推移が穏やかである。漫画は遅くとも20代後半には結果を残さなければ難しい世界だし、さらには働きながら夢への金銭的、時間的な投資は重い。また読み切り一本を仕上げるまでに3か月かかる。小説は例えば仕事を中心にしながらでも十分取り組める。もちろん若くして才能を発揮することが理想だがそうでなくても続けることができる。
コストパフォーマンスを込みで考えた時、金銭的な目的で小説家を目指すことは一概に間違った選択ではないのかもしれない。
次に趣味として取り組むのならどうだろう。
何かおもしろいアイデアが浮かんだとする。おもしろいストーリー、心を撃つ景色、魅力的な人物像。さきほど説明した漫画を筆頭に映像、写真、絵画、どれもお金がかかる。だけど小説ならスマホ一つあればいい。
アートは世の中を驚かせるような新しさを届けることが目的ではあるが、同時に自分のこころを豊かにする。仕事や家庭のストレスを発散させながら、それらに付随して浮かび上がったこころを綺麗にするために文字に起こす。素晴らしいことだ。
さらにはその先に良いものが出来れば読者や創作仲間が出来てより豊かな暮らしができるだろう。
影響力を高めるために書くのならどうだろう。
小さなもので言えば学校で知的でおもしろい人に見られたいから書く。職場で企画書を書くことが多いから滑らかな文章を書きたい。ゆくゆくは政治家を目指していて作家から政治家というよく考えるとなぜだかわからないけどそこそこ見かけるあの感じになりたい。そういう人もいるかもしれない。
SNSは文字の積み重ねから生まれる。You Tubeの動画だってそうだ。最初は誰かの頭の中にあったアイデアを言葉に置き換えながら撮影が始める。大企業の新商品も政治家の演説も言語化し文章にすることから始まる。実際に文字にせず頭の中だけで進むことも少なくないが少なくとも頭の中で言葉にして整理する。このプロセスは重要だ。
さてこの章で伝えたかったことを話そう。告白するとこれを最後まで読んでもあなたの目的をはっきりさせることはできない。だけど目的をしっかりと考えることに意味がある。
ここまでいくつかのぼんやりした目的に理論立てて肉付けしてみた。どうだろうか?どの目的に関してもしっかり考えてみれば破綻はないのではないだろうか。
創作を続けていると色々な話を聞くだろう。時には意見の違う人の大きな声が届く。無意味に文学に熱い奴が「この作品は〇〇の焼き増しでしかない」とコメントしてくるかもしれない。あなたは趣味で書いているのにプロを目指す人が「そんなペースで書いていて意味あるの?」と言ってくるかもしれない。ものを作ったことのない人が「素人の書いた小説なんて無価値だ」と言ってくるかもしれない。たくさんの人に向けて作品を公開し続けるということはそういうことである。
そんな時にあなたは傷つかなくていい。あなたにはあなたの目的がある。あなたの作品にはあなたの価値がある。
もちろん世間的な評価、読者の中での価値は求めていくべきだ。だけどまずはあなたの方が大切なのである。普段から意識してきちんと自分の目的を確認することは創作する自分を強くする。そしてどんな目的であっても必ず丁寧に言葉にして順序立てれば必ず成り立つ。
そうすれば同時にあなたは他の創作する人の目的に寄り添うことが出来る。
おおよそ理解していただけたかと思うがどんな目的でも真剣に取り組めば結局は成立するのだ。目的の違ったさまざまな人がものを書くという一つのジャンルに集まっている。そのどれもが素晴らしくて決して否定できるものではない。
自分の目的をしっかりと考えることであなたは自信に満ちて、そして同じように創作する人に囲まれながら快適に過ごすことができるようになる。なぜ取り組むのかを日々真剣に言葉にしながら、そこで感じた澄んだ気持ちを他の創作する人にも見つけてほしい。そうすることであなたは長く心地よく創作を楽しむことができる。
はっきり言葉にできなくても良い。自分の中でまだ不確かでもいい。あなたが書く目的について日ごろからぜひ考えてみてほしい。
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