3.小説を知る

取り組む態度が定まったところで何をすべきか考えてみよう。最も簡単な答えはひたすら書くことで間違いはない。「友達になろう」という想いでひたすら書けば大きく失敗はしないと思う。それくらいこの一つ前の話は私の考え方の核なのだ。


ここからはより効率的に進めるためのヒントを書いていく。ヒントではあるのだがこれを知るか知らないかでは辿り着く地点はまったく違うものになるだろう。


さてさて小説を知ると聞いて何を考えただろうか?


「こいつきっとたくさん読めと言い出すぞ」クセの強い人間がそんなありきたりなことを記しはしない。念のため肯定しておくと読むことは大事。ただそれはもう前提として小説について知っていこう。


あなたは小説の優れているところを説明できるだろうか?具体的に頭の中でこの点が優れているとあげてみてほしい。どうだろう?難しくないだろうか?


漫画の神様と呼ばれる手塚治虫はこう言っている。

「君たち、漫画から漫画の勉強するのはやめなさい。一流の映画をみろ、一流の音楽を聞け、一流の芝居を見ろ、一流の本を読め。そして、それから自分の世界を作れ。」


この言葉は小説にも言える。小説を知りたいのなら小説を読み続けるだけでは少し足りない。いろいろなものを見て「比較」することが大切だ。何かを知るには近いものと比べてみるとよい。今回は例として小説と映画を比較してみよう。


映画は人気のある芸術ジャンルだ。小説よりも人気があると思う。だけどあなたは最後に映画館に行ったのはいつだろうか?また自宅でではなく時間を作って真剣に映画を見たのはいつだろうか?


映画はすごく時間をとられる。確実に見る気持ちを持たないと辿り着きさえしない。さらにもし内容が酷かったら?映画は行動を強制して一定の時間を見る人から奪ってしまう。


「すっごいおもしろい話があるから2時間ください。2000円です。」

まずこの段階で映画って嫌な奴ではないか?さらに実際聞いたらおもしろくないことがある。映画は最初に無理なお願いをする。だから映画は必ず見た人が満足するものを目指さなければならない。


さらに最近の映画は不利なところがある。原作ありきな点だ。何が不利かと言うと最近世間を騒がせる改変問題とも繋がるところはあるのだが核は違う。


映画の公開時点でもう古い作品だということ。その原作漫画が描かれたのは何年前だろうか?その原作小説が書かれたのは何年前だろうか?原作者は当時の世の中の流行りや問題を見つけてそこから着想を得て、当時の最新のスキルを使って面白い作品を作った。そこから長い年月が経って映像化する。一言でいえば「もうみんな知っている、その問題はすでに解決している」のだ。原作の先生の最新作を読んだ方が絶対良い。少なくとも原作を当時のものだと理解した上で読んだ方が絶対楽しい。


もっと分かり易くしよう。

あなたは5年前のスマホを新作と同じ値段で買うだろうか?


はっきり言えば原作映画はスタートから価値を失っているのである。だから世界中で大人気のハリウッド映画に目を向けるとその分お金をかける。製作費に100憶円かけることもある。見たことない美男美女、どれだけ拡大しても綺麗な映像、CGをふんだんに使った派手なアクション、そして原作を書くレベルの脚本家がつく。5年前のスマホを最新モデルよりもっとすごいものに改造して販売する。(それでもおもしろくないこともあるのだが)だから人気がある。


とこれ以上映画を悪く言うのはいけない気がする。私は映画をやりたくて大学にいったくらい映画好きであることを念のため書いておく。愛ゆえである。


ここで小説と映画を比べてみよう。


まず小説は新しい。5年前の原作はつかない。今あなたが感じたことをその気になれば今日中には一つの作品に仕上げることができる。今を生きる人の生の感性をそのまま芸術として完成させることができる。うまくいけば時代をリードすることもできる。ちなみに現代最強でライバルでもある漫画よりこの早さにおいては優れている。


小説の製作費はいくらだろうか?多分私達が書くのなら長編でもその間の生活費を別にしたら1万円かかってないだろう。小説の強みは製作費が安い。映画は作るのにお金がかかる。映画監督の夢が叶う前に資金がなくなる人が多い。だけどその心配は一切ない。夢が叶うまで書き続ければいいし数で打ち勝つことができる。


また小説は映画のように2時間続けて読み続ける必要はない。また作者はテーマにあわせて短編、長編選択することもできる。つまり読者から頂く時間を調整することができる。


ここまでをまとめると小説は…

1.今の感性をすぐ届けることができる

2.お金がかからず書き続けることができる

3.読者から頂く時間を調整できる

ということが見えてきた。


比較は自分の使う武器の特徴を知ること。どういう状況に強いのか?知らずに戦場にいくのは危ない。ライフル持って接近戦を挑んだり、ナイフで銃を持つ複数人に挑んだりしてしまう。小説はどういう強みがあって、どこが弱点なのかを理解して正しく使うと結果は全く違ってくる。


さらに付け加えると今回はに3つを比較した。


映像はキャラクターの心情を描くことが難しい。だけど小説ならキャラクターの心の中を文字で読者に伝えることができる。小説はファッションと相性が悪い。映像は被写体の服装や髪型でキャラクターの印象を伝えることがきる。でもそれに合わせた女優やモデルを探さないといけない…まだまだ無数に気付きはある。


さらにさらに。

軽く触れたが今の日本のアートの最先端は間違いなく漫画である。他にも芸術はたくさんある。舞台、絵画、彫刻、建築…芸術は人の心を大きく動かすという共通の目的を持っている。同じ目的を持ったライバルを知ることであなたの創作活動は必ず充実する。


ただ「そのために時間を割くべき」というつもりもない。他のジャンルに触れて理解することは大切だけど無理に取り組むべきじゃない。そうでなくて自分が関心のあるものに触れた時には「これ、小説だったらどうだろう?」と思案してみる。それが小説を知る近道だ。


ぜひ漫画を読むとき、アニメを見るとき、映画をみるとき、小説と比べてみてほしい。その際のひらめきがあなたの代表作を形作っていくかもしれない。


続く


次回

「読者を知る」

「自分を知る」

更新7月初旬予定

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創作における複数の地道なやりかた ぽんぽん丸 @mukuponpon

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