壊れること
瑠衣君
第1話働き方
私は趣味に耽る。
好きな事だから、楽しいから自分がこの世界で生きている証明になるから。
楽しいことはあっという間に時間が過ぎるとはよく言ったものだと思う。
仕事の時間は無駄に長く感じるのに自分がやりたいことをやる時は一瞬だ。
もっと楽しんでいたいのに時はすぐに過ぎてしまう。
それでも私は趣味を楽しみたい。
大切な時間だから守りたい。
でも、必ずと言って守ることが出来ない現実がある。
最近、仕事量が多く仕事に追われる日々が続く。
やっと一つの作業が終わっても十になって仕事が帰ってくる。
きっとこれは私が仕事ができるから上司が任せてくれているのだ。期待してくれているのだ。と私に言い聞かせる。
日に日にどんどん増えていく。繁忙期だから仕方ない。繁忙期だから。
あと三ヶ月もすればきっと終わる。今耐えなければ。今を耐えなければ。
そう言い聞かせる。
自分を騙すように言い聞かせる。
きっと上司も忙しいから、みんな絶対忙しいから。私も頑張らなければ、そう頑張らなければ。
いつの間にかこう言われるようになっていた。
『〇〇(まるまる)さん最近顔色悪いよ?大丈夫?』
『〇〇さん頑張りすぎじゃない?』
『〇〇さん仕事し過ぎだよ。』
どうして、みんなは忙しくないの?
だって、これから始まる新企画に広報、先方との打ち合わせにすり合わせ。議事録の作成に経営戦略、それによる利益予測など他にもいっぱいやることがある。
普段の仕事量に残業しても足りない。全く時間が足りないのに。
なんでみんなよゆうそうなの。ねぇなんで。
私の仕事の仕方がいけないの、頑張り過ぎっていけないことなの。
今まで私がやってきた頑張りはいけない事だったの。
無駄だったの?
なんで否定されなきゃいけないの?
ねぇ、なんでなんで、なんでなの?
わかんない。わかんない。わかんない。
もう、わかんないんだよ。
と心が叫ぶ。
私は椅子からたった途端前が見えなくなり倒れていた。
その後のことはあまり覚えていない。
気がつくと私は入院していた。
病院で点滴をし、医者に働き過ぎと言われた。
過労だった。
二週間の入院を医者に伝えられた。
何も出来ない日々が続いていく。
仕事をしなきゃいけない焦りが私を襲う。
でも、何も出来ない。
医者からは仕事のことを考えるのをやめなさいと言われる。
でもそんなことはできる訳がない。
この時間だけでもやらなきゃいけないことが溜まっていくのに。
そのうちカウンセラーをつけられた。
話していくうちにだんだん心が落ち着いてきた。
疲れがなくなっていくような心の荷が降りていくような気がしていた。
でも、やらなきゃいけない仕事を考えると前みたいにまだ、苦しくなる。
ある日、同僚がお見舞いに来た。
私が倒れたことが社内で大事になっているらしいと教えてくれた。
そして、仕事量も人の三倍与えられていたことを知った。
上司が自分の仕事も私にたくさん振っていたらしい。
そりゃやることが多かった訳だと納得がいった。
言われてみれば、上司は基本定時上がりで残業している姿なんて見たことなかった。
度々上司はマネージャーから私の事で注意を受けていたらしい。
それでも上司は無視し続けた。その結果上司は今の職から下される事になったらしい。
私の溜めていた仕事も他の社員に仕事を分配して順調に進んでいると教えてくれた。
それと同僚は私に一言注意して帰って行った。
『仕事を頑張るのも大事だけど会社にいる以上、私の事も頼ってくれなきゃ。1人でやろうなんて思わないこと。頑張り過ぎは厳禁だよ。私は〇〇さんの仲間なんだから』
なぜだろうか、涙が溢れてくる。
そんな温かい言葉をもらったのはいつぶりだろうか。
同僚が帰った後私は静かに泣き続けた。
こんな情けない姿は誰にも見せたくなかったから。
心に刺さっていた大きな棘がやっと取れたような気がした。
一ヶ月後私はようやく仕事に復帰した。
オフィスを見ると、上司はそこにはいなかった。
ほっとしたのからか久しぶりにあった同僚たちと少し談笑した。
仕事量も1日で終わるくらい。あの時期と比べたら楽に感じられる。
残業時間も減り自分の趣味も楽しめるほどにワークライフバランスも調整できるようになっていた。
もう倒れないために決めたことが何個かある。
一つ、仕事量が多かったら相談する。
一つ、働き過ぎないようにする。
一つ、息抜きの時間を必ず作る。
一つ、自分を騙さない嘘つかない。
それを私は守るようにしようと思った。
過労で倒れるのはもう懲り懲りだ。
今日は休み。
久しぶりに趣味に没頭すると決めた日。
疲れを取るように私は温泉を巡る。
長湯だけは注意しなければ。
のぼせちゃうからね。
壊れること 瑠衣君 @ruirui-9
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