第13話 ナイス!スライディング!

 兵士の背後から振り下ろされた俺の剣は、頭から背中までその肉体を両弾した。

「はぁ、はぁ…… っぶねぇ……間に合った…… 大丈夫かペルセウ──」

 俺が言い切る前に、ペルセウスは無言で俺に抱きついてきた。

「お、おいどうした……? 急にそんな……」

「……」

 俺はなんとなく様子を察して彼女を抱きしめる。

 その間もう彼女は黙ったままだった。

 

「ん? これは……」

 ふと、俺は彼女の後ろに、何か細長い白く発光するものに気がつく。

「なんだこれ…… 剣か?」

 〝それ〟はなんだかぼんやりとした形をしていて、まるで霧に包まれている様に見えたが、鍔と思われる部分の突起から、なんとなく俺には剣に見えた。

 そして俺はなんとなく察した。

「これはもしやペルセウスが例の力で作ったものか?」

 ペルセウスは無言のまま俯き、頷いた。

 この世界では、この《大罪人》の力というのが、なぜか嫌われているらしい。

 確かに人智を超えるような力だけど、それならスキルだってそうだ。

 きっとこの子はその力のせいで俺に嫌われてしまうとでも思ったのだろう。

「よくやった」

「えっ……」

 俺はペルセウスの頭を優しく撫でる。

「その力が使えたってことは、自分の意思を持てたってことじゃないか」

 こういう時、俺は慰めない。

 それだとただ彼女が抱いているネガティブな考えを小さくするだけ。

 だからこそだからこそ俺は褒める。

 それがいい事なんだと、正しいことなんだと、そう認識させるんだ。

 そしてその考えをポシティブな方向へとに持って行く。

「自分を誇れ。確かにその力は、まだ世間からは淘汰されているかもしれない。でもきっとその現状は変えられる。もちろん俺も手伝う。世界の常識くらいひっくり返そうぜ!」

 面倒くさそう? 

 いいじゃん。

 割と面白くなってきたじゃあありませんか!

 あの魔王スライム様みたいにうまくやれなくったっていい。

 折角の異世界転生だぜ?

 それくらいやってやんよ!

 

     *


 俺たちはそのあとすぐ、レインが交戦している場所に戻った。

 そしてその途中──

 遠くから爆発音が時折り響く。

「間違いなくあれができる人間はレインだろうな…… どうやらまだ戦っているのか。急ごうペルセウス!」

「はい……!」

 俺は彼女の手を引き、戦場へ向かった。

 

 それにしても──

 ペルセウスが手を繋いでいる右手とは逆の左手に持っている、あの宙に浮いていた白い剣。

 相変わらず白く発光していて、魔力も何かもの凄いものを感じる気がする……

「ペルセウス、その剣はお前の力を使って生み出したやつだよな……?」

「はい、おそらくその通りです」

「確かお前の能力は、《強く望んだものを創り出すことができる》だったよな? それならあの時、お前は何を望んだんだ?」

 そうだ、多分あのギリギリの状況で、ただ単に「剣が欲しい」なんて単純な考えは、今のペルセウスには浮かばないだろうし、そもそもそんな願いでこんな武器が出てこられたら困る。

「あの時、私はただ…… 「死にたくない」と…… 「主様のお側を離れたくない」と……」

 おいおいどうした、どうしちゃったよ……!

 急に頬を赤らめながら……!

 なんか急に可愛さがパワーアップしたなおい!

 「ま、まぁその剣のことは今はいいや……」

 本当に急にどうしたんだんだ……? 

 俺は自分のロリコン属性が開花する前に、戦場へと向かった。

 

     *


「ああっ……!!」

 森の奥で聞こえる、鉄と鉄がぶつかり合う激しい戦闘音。

 レインはその戦いの最中、凄まじい勢いで吹き飛ばされ、木にぶつかって止まる。

 その衝撃で頭部から流血し、目に流れた血で視界が赤く染まる。

「おいおいどうしたYO! さっさと立てYO!」

「っ……! 本当に何なのよ、その肉体カラダ……!!」

 激しい戦闘の戦闘の最中に起こった土煙から、例の筋肉が現れる。

 その体には一戦闘のはなく、余裕のある表情で重傷を負ったレインへと近寄ってゆく。

「さっきから確実に攻撃はあたっているはずなのに、どういうことよ……」

「それを教えるとでMO?」

「できれぼそうしてもらえると……ありがたいわっ!」

 レインはしゃべり終わると同時に、足元の土をつかみ取り、それをマスキュラーへとなげつける。

 広がった土埃は、マスキュラーの視界を一瞬塞ぐ。

 レインはその僅かにできた隙の間に、マスキュラーの後方へと回り込み、マスキュラーの背中をレインの剣が貫いた。

「視覚外からの攻撃、攻撃の貫通…… やった――けど。あんまりきいてはなさそうね……」

「みたいだNA」

 背中の中心から鳩尾にかけて、確実に剣が体を貫抜いているのにも関わらず、何のダメージもない様子で奴は佇んでいた。

 レインはその様子を確認して剣を引き抜き、間合いを取ろうとした、が。

「っ……! 抜けなっ……」

 手元に大きな影が現れる。

 その正体が何であるかはすぐに分かった。

 マスキュラーが右手一本で振りかざした大剣――

 それはすさまじい勢いでレインの頭部に向かって振り下ろされる。

 目の前に迫る大剣

 レインはその光景を見上げ、どうすることもできず、思わず目をつむってしまった。


 大剣が地面を叩き、辺りは土埃が舞う。

 しかしそれが晴れた後には、剣聖レイン姿は見当たらない。

「What's that?」

「ふぅ……何とか間に合ったみてぇだな」

 マスキュラーが右を見ると、レインはその奥でリュウセイに押し倒されるように倒れ込んで倒れこんでいた。

「遅いわよ? リュウセイ相棒

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101%の存在理由(レゾンデートル)-転生者とお尋ね者たちの異世界冒険記録- サカミナ525 @Sakamina525

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