【星空の守り人と少女】

夢月みつき

本文【星空の守り人と少女】

「星空の守り人と少女」登場人物紹介


 アリーシャ

 16歳のW主人公の少女、視えない者をみる特殊な眼を持っている。

 異端者と村の皆に忌み嫌われている。

 ある雨の日にソルディオと出会う。


 ソルディオ

 W主人公の青年、人ならざる者、星空の守り人で五百年も旅を続けている青年。

 ある雨の日にアリーシャと出会う。


【星空の守り人と少女】表紙

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093080251991490


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【挿絵】

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093080252150854



 自然豊かなテスラコッタと言う村に年齢は、十六位の少女が住んでいた。

 彼女の名前は、アリーシャ。



 綺麗な茶色の瞳をしており、亜麻あまいろの長い髪を二つに纏めて三つ編みにしていて白のキャミソールワンピースが良く似合っている。

 しかし、彼女には家族がいなかった。



 その上、一部の村人達に異端の者として忌み嫌われていた。

 その理由は、アリーシャが人には、視えない者をみることの出来る異質なを持つからだ。


 ある雨の日、彼女が馬小屋で馬の世話をしているとどこからか、綺麗な笛の音が聴こえてきた。



「あら? 笛の音が聴こえる。どこから聴こえるのかしら」



 アリーシャが音のする方へ目を向けると、いつの間にか、肩までの黒髪長髪で緑色の瞳をした乳白色の外套がいとうを羽織った青年が座りこみ、オカリナを吹いていた。


 彼女は、その青年の元へ歩いて行き、声を掛けて見た。


「ねえ、貴方だぁれ?」

 青年はアリーシャに気がついて微笑む。


「やぁ、君の馬小屋だったのか。雨宿りさせてもらっているよ」

 澄んだ瞳を細くして、軽くおじぎをする青年。



「そうなの。私は大丈夫だけど、貴方、人じゃないんでしょう?馬が何となく、落ち着かなくなっているわ」



「ふふ、僕の名はソルディオ。星空の守り人をしているんだ。君の名前は」

「私は、アリーシャ。ねぇ、さっきのオカリナ、音色がとても、素敵ね。良かったらもう一度、吹いて貰えるかな?」



「お安い御用さ、雨宿りの礼もしたかったしね」

 ソルディオはまた、オカリナを唇に当てて吹き始めた。

 アリーシャはその音色を聴いて、様々なことを思い出して、思わず涙を流す。



 そのオカリナの音色は、不思議と心に染み入り、傷ついた心を癒してくれているように感じた。



 その様子を、馬小屋の外で覗き見ている怪しげな男がいた。

 アリーシャに、密かに思いを寄せている村長の息子のランドと言う男だ。


「アリーシャの奴、また視えない奴と話していやがる……これは、親父に知らせなければ」

 ランドは馬小屋を離れ、村長の家に向かった。



 アリーシャは、ソルディオのオカリナに感動して、嬉しそうに拍手をした。

「ありがとう! ソルディオ。ねえ、馬小屋じゃ風邪を引くわよ?今夜は、私の家に泊まらない」



「えっ、いいの。僕は男だし」

「良いのよ、貴方は悪い人に見えないし。私も一人で寂しかったしね」

 ソルディオは、その夜、アリーシャの家に泊まることとなった。




 🌟




 彼女は、炊事場でシチューを作り、黒パンを焼いて食事の用意をした。

 食卓に黒パンと、野ウサギのシチューが盛られた皿と木製のスプーンが二人分並んだ。

 ソルディオが、シチューと黒パンを美味しそうに食べている。



「美味い! アリーシャは、料理が上手なんだな。久しぶりに温かい料理を食べたよ」

「そう? 嬉しいっ、私、そんなことを言われたのは、父さんと母さんが元気だった時、以来よ」



「ご両親亡くなったの?」

「うん、もう五年も前に」

「それと私、視えない者がみえるでしょ。だから、村の人から嫌われててね」



「そうか……辛いだろうな」

「――うん」

 その話をすると、アリーシャもソルディオもうつむいて黙ってしまった。



 その刹那、家の外が突然、明るくなった。

 アリーシャとソルディオが、窓から外を見て見ると。

 村長とランド、村の人々が松明たいまつを持って家の周りを取り囲んでいた。

 松明の火に照らされた村長達の顔は、まるで殺気立つ悪魔のようだった。



「村長さん、ランド!」

 アリーシャとソルディオは、驚いて急いで外に走り出た。


「アリーシャ、また視えない奴と話してたろ? 今日と言う今日は、お前の化けの皮を剥がしてやる」

 ランドがアリーシャを見て、にやにやと笑っている。



「何だ?こいつら……アリーシャが言っていた村の奴らか。 嫌な予感がする、僕と逃げよう」

「うんっ!」



 ソルディオはアリーシャの手を引き、二人は家から逃げ出した。

「アリーシャが逃げたぞ!皆、追え。異端者いたんしゃを逃がすな」

 二人の後をランドと村長、村人達は嬉々ききとして追いかけて行った。




 🌟





 アリーシャ達と村人達の攻防こうぼうが続く。

 ソルディオが、オカリナの不思議な音色で、幻覚を見せて村人達を足止めする。

 


 その隙にアリーシャとソルディオは、距離を取り逃げたが、

 幻覚に、掛かっていない村人やランドが再び、執拗しつように追ってくる。

 そのうち、アリーシャとソルディオは、り立った崖へと追い詰められた。




「魔女め! とうとう、追い詰めたぞ。怪しげな術を使いやがって! 俺と一緒になれば、親父に話して許してやるが、そうでなければ、火あぶりだ」

 ランドは、ジリジリと近づいて来る。



「大丈夫、君には僕がいる!」

 ソルディオが力強くうなずく。

「うん!」



「私は、貴方と一緒になんてならないッ! 貴方のような、人の妻になるくらいなら、人としてここから飛び降りるわ!」


「なにをッ!この女」

 ランドは、顔を醜く歪ませて掴みかかって来た。

 

 ソルディオは、アリーシャを抱き寄せて夜空に浮かび上がり、オカリナを再び吹き鳴らした。



 その旋律せんりつは、今までのソルディオの穏やかな音色と違って、怪しくも妖艶ようえんな音色だった。

 ランドや村長達はその音色で、心をやられて全員、崖から次々と飛び降りて行った。


「いやっ! そっ、ソルディオ……皆、飛び降りちゃった。私、怖い」

 ブルブルと青ざめて、震えるアリーシャに、ソルディオは切なげにまつ毛をふせる。


「……ごめん、アリーシャ。君を救う為には、こうするしかなくて。僕が怖い?」


「ううん、貴方のことは怖くない。でもとても、悲しいわ……」

 アリーシャは、真珠のような綺麗な涙を流し、両手を胸の前で組んで祈りをささげた。



「陽の光のように温かい心を持つアリーシャ、僕は君のようなひとをずっと、待っていたんだ」


 

 ソルディオは、アリーシャの小さな唇に優しく口づけをした。



 長かった冬の雪どけ……

 星空の守り人と少女の出逢い。

 光が地上に降り注ぐ



「ソルディオ、大好き。私はここにいるよ」

「アリーシャ、愛している。やっと君に巡り逢えた」

 

 守りたいたいもの 守って来た意味が

 ようやく解った。


「これからふたりで守ってゆこう」



 アリーシャは、ソルディオと契りを結んでソルディオは、自身と同じく彼女を「星空の守り人」にした。

 しばらくして、ふたりの間に男女の可愛らしい双子が生まれた。



 アリーシャと、ソルディオのふたりの星空の守り人は、悲しみに暮れる人や笑顔を忘れた人の心に寄り添って、星空を守りながらオカリナを吹き今でも、子供達と共に長い旅を続けていると言う。



【星空の守り人と少女】挿絵

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093080252249158



「星空の守り人と少女」

 星空の守り人は

 乳白色のマント着て

 五百年のむかしから

 旅をしているという

 かなしみにくれる人には

 もう一度わらえるよに


 涙にほほぬらす人には

 気持ちよく泣けるよに

 こころよせて ほほよせて


 星空の守り人は

 ひとのこころによりそって

 オカリナをやさしく吹くという


 見えないものを見る

 わたしはあなたのゆるがない

 瞳にひかれていった


 ながかった冬の雪どけ……

 守り人と少女の出会い

 ひかりが地上にふりそそぐ

 私はここにいるよ


 やっと君にめぐりあえた

 まもりたいもの まもってきた意味が

 ようやくわかった

 これからふたりで守ってゆこう


 -end-



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 最後までお読みいただきありがとうございました。

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