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ラッキー平山

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若いころは

全てを人の言うとおりにし

自分の意志を持たず

やりたいことも我慢して

ストレスが溜まったら

酒とオナニーと娯楽でごまかし

済ませてきた


だが歳を取ると

体にガタがきて

もうごまかしが効かない


だからヘルプ

こんなジジイ

助けても意味ないからヘルプ

ジョンのようにヘルプ

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なんだこれ

嫌味か皮肉か

なんにしても

かかわらんほうがいいぞキメエ

行こう行こう


今頃になって

生まれたときから

嘘しかついてこなかったと

なんにも成し遂げていないと

全くなにもいい奴じゃないクソで

友達も伴侶もいないうえに

死ぬまでこのままで終わると

気づいた


だからヘルプ

カウンセリングを

受ける金がないからヘルプ

子供のようにヘルプ

きたねえジジイがヘルプ

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向かいの鬱病患者が電話に怒鳴る

「たすけたいだと?!

俺を、た、す、け、た、い、だと?!

俺を助けたかったらなあ、

今すぐ俺を殺せ!

殺して俺を楽にしろ!

できんなら、やってみろやああ!」


俺より全然若いから

あっちのほうが

全然マシに見える

あと五十年以上あのままで

死ぬと分かっても


俺を知ったら

きっと妬むにちがいない

すぐ終わりそうだから


実はそうでもない

しょうもない病気で

ちまちま苦しむだけで

なかなか終わらない


楽しい幸福な人生は

あっという間に終わり

不幸でくだらない人生ほど

その何倍も長いそうだ


不幸長寿

長生きほど意味がない

だが人生すべてただの運だ

悪かったら仕方がない


人間は車か電車

自由にどこへでも行けるか

大人しくレールの上だけ走るか

俺はあとのほう


敷かれた道を行く

ガッタガタでもクソでも

生きなくてはならない

ついに脱線して終わるまで


ぜんぶ無駄だった人生

六十年間すべてが

ただのゴミ クズ カス


だからヘルプ

こんなジジイ

助けても意味ないからヘルプ

ジョンのようにヘルプ

ジョンみたいな魅力なくても

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