9.
「こらこら、ジルヴァ君。玖須君が苦しがってますよ」
「心配するのは分かりますが、このままだと息が出来なくなりますからね。ここで見守っていてください」
「でも·····しんぱい·····です」
「そうですよね。玖須君をどうにか引っ張って行こうとしたぐらいですからね」
えらいですね、とオーナーに撫でられたジルヴァはくすぐったそうに笑っていた。
あの後、気を失った自分を連れて帰ろうとしたのか。
あんな小さな身体で、しかも、あんな酷いことを言ったのに。
「·····ジルヴァ·····、お前は、オーナーと、いろ·····」
言いたいことはそれじゃないのに、途切れ途切れながら言ったことにハッと噤んだが、もう遅い。
「·····なんで·····っ」
「オーナー·····の前でも·····人の姿を、してる·····」
優しくしてくれた人間の前では、人の姿となれると言っていた。
憎たらしい先輩ですら穏やかにさせる、そんな心の持ち主のオーナーといれば、怒られることもないだろう。
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