8.

家の中にいても分かるぐらいに、激しい雨が降っている。

その音を熱で浮かされた祥也は、暇つぶしにと耳を澄ませる。


ザー·····。


いつまで降り続けるのだろう雨音を聞いているうちに、世界にたった1人取り残された気分になった祥也は涙ぐんでいた。


拭っても、拭っても流れ出すその涙は、今の雨のように溢れていった。



額に冷たいものを感じ、重たい瞼を開ける。

ぼんやりとした視界の中に、こちらを覗く者を捉えた。


「しょーやさまっ! おきられましたか!」


徐々に晴れていく視界でも分かる、泣いている小さな子どものような声。

身体にのしかかってくる体温に、少なからずホッと安堵していた。

返事代わりに撫でようと、思うように動かない腕を上げた時、襖が開く音が聞こえた。


「おぉ、玖須君。起きられたのですね」


驚きと嬉しさが混じった、少々嗄れた声の人物に、無理やり身体を起こそうとした。


「玖須君っ! そのような身体なのですから、まだ寝ていていいのですよ」

「ですが·····、オーナーの手を·····煩わせてしまった·····」

「しょーやさま! そんなことをいわないでください!」


俯きがちになっていた顔を反射で上げた時、首辺りに抱きついてくるジルヴァに激しい頬ずりをされる。苦しい。死ぬ。


「もともと、ぼくがいけないのです! せめるならぼくを!」

「う·····っ」


分かったから、離してくれ。

そう言いたいのに、首を絞められているせいで上手く言葉にならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る